さて、困ったことになりました。
先駆者のおかげで何とか答えまではたどり着いた彼ら。
だがそこからが問題だった。
前提として、まず英単語と数字で何を示すか、作らないといけない。
その時点でアウトだった。
何が何処にあるか、表がないと分からない生徒が多い。
次に、何がそれで構成しているかを知らない。
知らないからもって来れないという事態に陥った。
絶対的な知識の差で、詰んだ生徒が出始めている。
さて、困ったことになりました。
先駆者のおかげで何とか答えまではたどり着いた彼ら。
だがそこからが問題だった。
前提として、まず英単語と数字で何を示すか、作らないといけない。
その時点でアウトだった。
何が何処にあるか、表がないと分からない生徒が多い。
次に、何がそれで構成しているかを知らない。
知らないからもって来れないという事態に陥った。
絶対的な知識の差で、詰んだ生徒が出始めている。
持ってくものはいくらでもあるのに!
何で構成されてるんだよコンチキショー!
よく考えてみれば百円玉って何で出来てるのです……?
頭があまり宜しくない横山ペアも詰んだ。
文系の横山と体育会系の小泉は理系に弱かった。
だぁあああああーーー!
根本的バカの赤坂は錯乱していた。
何も思いつかない。全部分からん。
有栖川はそのことを見落としていた。
おっしゃぁ!
俺は解けたぜ!
一人ドマゾは何時の間にか解答を作り出す。
ちゃっかりしている男である。
作ったのは42、MO。
『モリブデン』という原子。
何かの工具を持ってきて、提出した。
使われていたようで、通過。
西村ァッ!
うおっ!?
一人だけ抜け駆けしやがって、と多数の参加者の逆鱗に触れた。
横山の蹴りがヒットする。
このドマゾ許さねえ引導を渡してやる、と皆さん移動する前に西村袋叩きコースが開始。
汚い悲鳴を上げて西村私刑にまっしぐら。
本当にドマゾの天命を全うしている。
クソ、時間ないじゃん!
こんな変態蹴飛ばしてる場合じゃねえのに!
脱落覚悟で心中を図る生徒まで出てきた。
赤坂はそんなのはゴメンである。
さっさと進む。
ウギャァーーッ!
クリアしても次のゾーンに時間内に移動しないと失格。
西村何気にピンチだった。理不尽な暴力はまだまだ続く。
横山と小泉は、急いで適当な教室へと駆け込んだ。
落ち着け、クールになれ私……
何かあるはずだ、何かが……!
片っ端からあさっていく。
たとえそれでもっていけても解答ができなければ意味がない。
理科室に行ければ良いのだが、生憎と1階にあるため移動不可。
出た時点で負け決定。なのでヒントを探す。
これって!?
思わず声が出た。
何と横山、残り時間僅かで最高の引きを見せた。
あさっていた机の中から、元素記号をテーマにしたBL漫画を発見したのだ。
尚、ここは彼女と同じ学年の生徒の教室。
置き忘れていった黒歴史の漫画である。
中身を拝見して、該当する項目を発見。
小泉!
これ、使おう!
うぇぇ!?
び、びーえる……!?
意気揚々と取り出して、それを見た持ち主が破滅の絶叫を上げるのもお構いなしに、後輩に見せる。
無論一般的なオタクである小泉は嫌がり泣きそうだった。
横山は腐れ女子なので大丈夫。寧ろ足りない。
落ち着きな
大丈夫、読めって言ってんじゃないよ
私が言うもの、取ってきて
先輩らしく頼もしい指示を飛ばして、持ってこさせる。
第一ゲームは助けられた。今度は横山が助ける。
彼女が指示したのは番号52、Te『テルル』。
ガラスの着色などにも使われている。
小泉はダッシュで取りに行き、色のついたガラスを持ってくる。
ありましたっ!
小泉は先輩も早くと急かす。
だが、残り時間はワンメーター切っているのだ。
今から探していては彼女が間に合わないかもしれない。
それは、避けたかった。
それ持って先に行って!!
で、でも……!
躊躇う小泉。
置いて行きたくないというのが顔に出ている。
動かない彼女に、横山は叫んだ。
往け小泉ッ!!
……!
私に構うな!
いいから行けェ!
怒鳴られて、止まっていた足が動く。
小泉は踵を返して、走り出した。
とても悔しそうな、そんな表情で。
私はもう……間に合わないんだよ……
これを見つけるのが遅すぎた。
もう、2分もないのだ。
ここにあるのを探したところで、移動して作って提出してをしているだけでオーバーしてしまう。
遅かったのだ、この時には既に。
せめて後輩だけでも、という横山の優しさ。
いいんだ。
腐れ女子だってことが周囲にバレてドン引きされても。
最悪残りの学校生活滅ぶけど。
でも、小泉まで共倒れに巻き込むぐらいなら。
横山は、ここで犠牲になる。
終わった……私の戦いは……
真剣に絶望している横山。
忘れちゃいけないが、これは単なる借り物競走。
負ければ破滅するけど。
こんなんでも一応お祭りである。
さらばだ……私の学校生活……
諦めるときはすぐ諦める。
それが横山という女だった。
最後の最後まで頑張れない。
それが性根だった。
その絶望を、彼女が塗り替えた。
バカ一号の、赤坂という猪が。
廊下の方で、雄叫びが聞こえる。
そしてその雄叫びは徐々に近づいてきて……。
!?
教室の扉を蹴破って中に入ってきた。
驚く横山。
髪の長い少女は、荒い息をしている。
よこ……やま……!
お前、漫画……貸せッ!
赤坂さん!?
乱入してくる赤坂。
彼女は息絶え絶えで、後輩に泣きつかれて助けに来たという。小泉が赤坂に救援要請していたようだ。
当然、メリットはある。
彼女は片っ端から何か持ってきていた。
抱えていると言っても過言じゃない。
漫画貸せェッ!
それで適当にやるぞオラァ!
諦めてねえでこい!
怒鳴る赤坂。
持ってくものは手元にある、後は問題さえ解けばそれで通過できるんだから諦めるなと言いたいらしい。
残り時間は一分。まだ、出来るというのか。
……助かるよッ!
横山はすぐに立ち上がった。
まだチャンスはある。
持ってくモノがあるんだ。
あとは問題さえ解けばいいだけ。
そんなん10秒さえあれば終わる。
答えはBLの中にあるのだから!
任せて、何でもいいんだよね!?
おうっ!
解答を知らされていくが、この第二ゲームでかなり脱落者が出ているようだ。
ギリギリの時間なのだが、そのわりに少ない比率だ。
二人は走り出した。
何あるの!?
バッテリーとか鏡とかシャーペンとか……
あと人間!
抱えている赤坂は、使えないものをパージして加速。
人間まで抱えていたのだからたいしたもんだ。
NO!
股間クラッシュNO!!
死んじゃうらめぇ!!
ロリコンドマゾだった。
まだ生きていたらしい。
いっそのこと赤坂さんは人間連れてって!
あれなら色々混ざってるから!
オッケー!
こいつ提出すればいいんだね!?
俺提出ッ!?
西村提出決定。
こいつは今、敗北が確定した。
私は……バッテリー借りてくね!
おう、もってけ!!
二人は走る。もう一分もない。急がなければ。
西村は決死の抵抗する。死んでたまるかと。
抵抗するなハゲ!
アーッ!?
暴れる西村の股間に拳を叩き込む赤坂。
甲高い裏声を出して西村はまた死んだ。
ひぃっ!?
しまった反射的に!
っつか何か潰れた感触したぁ……キモぉ……
うん、潰れたらしい。合掌。
そんなこんなで残り20秒で到着。
んしょ……と!
西村の亡骸を放り込む。
頭から入れたせいか何かやばい音するがどうでもいい。
横山もバッテリーを放り込む。亡骸の上に。
まだこの二つは大丈夫だった。
成程、Taな!?
こっちはSbでいくよ!
赤坂は73のTa『タンタル』というマイナー原子を。
横山はバッテリーに使われている51のSb『アンチモン』という原子を選んだ。
残り10秒。それを解答に押し付けてダッシュ。
階段をのぼらないと負ける。
久しぶりに全力疾走。
彼女達は助け合いながら、階段を駆け上がる。
残り2秒のところで。
あっ……
あっぶなぁ……
ま、間に合ったか……
赤坂と横山は何とかクリアをしたのだった。
三階廊下に到着と同時に終了のブザーが鳴る。
二人は、何とか、勝ち抜いた。
第二ゲーム終了。
西村は尊い犠牲になったのだった……。