食べられない何か。
それを探して一階を彷徨く生徒達。
早い者勝ちともなれば、必然的に焦り出す。
そんな中、横山ペアは。

横山

小泉、他に好きなものなんだっけ?

小泉

カレーなのですっ!

横山

カレーか……
カレーはカレーでしかないよなぁ……

おたがいの好物を出し合いながら使えそうなものを使っている。
答えが出た連中と失敗した連中の結果が校内放送で流れている。
初っ端やらかしたバカの黒歴史が嬉々として語られる。
クラスと名前を明かされた。
これで来週から学校に来れない。何これ超怖い。
一人目は妹にリアル手を出そうとしていたとか。
ギリギリ妹さんの貞操は護られている様子。
二人目はエロDVDを学校で盗み見ていた前科。
どっちも最低である。

横山

最低な男もいたもんだね
これだから野郎ってのは……

小泉

そんな節操なしは去勢されればいいのです

当然女性陣の印象は最悪である。
こいつの青春終了のお知らせでした。

続いて、クリアした連中の情報。
むしろこっちの方も大切だった。

クリアしたペアは、何と食べられない『鯛』に因んで、『タイヤ』を持ち込んだらしい。
わざわざ、一番校舎の後ろにある倉庫から持ってきたのだそうで。

横山

始まってまだ10分で往復したってことか……
これで「タイヤ」は使えなくなった、と……

異様な速さだ。最初から狙っていたと見ていい。
幸いお題の「鯛」は使えそうだけど。
すると小泉、思いついたように聞いた。

小泉

そういえば「体育館」とかダメなのですか?

横山

ダメでしょ
だって体育館、持って来れないじゃん
これ借り物競走だよ基本的には

小泉

そうなのですか……

そう。
これの基本は借り物競走。
持ってこれるサイズのものを持ってこないといけない。
体育館は答えになってるがそこがNG。

横山

持ってこれるものに限るとなると余計に狭い
取り敢えずヒントを探そう、小泉
図書室いくよ

小泉

はいなのですっ!

着々と進める横山ペア。
図書室で情報集め。
だがそこには……横山の天敵中の天敵が潜んでいた。

西村

ん……?

横山

あっ

図書室には先客がいた。
男女のペアだった。
横山たちに気がついて振り返る。
その顔に……横山は見覚えがあった。
同時に突然駆け出す。

横山

西村ァッ!!

西村

ボアッツッ!?

突然豪快な走り飛び蹴りを受ける男子生徒。
名を西村という。
彼は顔面に上履きの底がヒットして、仰向けに吹っ飛んだ。

横山

西村ェ……貴様……

突発的バイオレンス。
憤る横山は、目が点になる連れ二人を放置して、倒れていた西村の胸ぐらを掴んで持ち上げる。

横山

西村……テメェ……
私の貸したゲームどこにやった?

西村

よ、横山……
いや……あの……あのゲームはですね……

横山の迫力は正に夜叉。
目元が見えないのが余計に怖い。
西村は蹴られたことの理由を思い出す。
やばい、返すの忘れていた。
っていうか、今返せない。

小泉

あれ、誰かと思ったら……
『レジェンダリーロリコンオブマゾ』の西村センパイじゃないですか
センパイも参加していたんですね

西村

誰だその二つ名教えた奴は!?

西村は叫んだ。
出たよ、謂れのない不名誉な通り名。
事実無根で……いや全力で事実でした。

この男、西村について少し説明しておこう。
文芸部所属、二年生のリア充。性格はツッコミ型。
但しヘタレでエロスでロリコンでマゾ。

西村

言いたい放題いってんじゃねえ!

普通にメタツッコミも可能。
横山たちパソ部とは割りと仲の良い文化部同士。
パソ部の連中に貸してもらったエロゲプレイ中に彼女にその存在をバレて一度殺された。
こいつはそれを喜んでいた。
横山が私のゲームで誤魔化しているのはパソ部のオタク共が西村に渡したエロゲーのことだった。

粟飯原

あー……もしかして、あのゲームのこと?
ごめん、それわたしが叩き割っちゃった

横山

なん……だと……ッ!?

で、その伝説のロリコンドマゾの彼女の粟飯原さん。
ちっちゃくて可愛らしい女の子で、西村の公式嫁。
見た目は完全に中学生だが。
彼女さんにバレて壊されていた。

粟飯原

横山さんのだったの?
普通にエロいゲームだったんだけど……

横山

うん、私の
こいつがどうしても貸せって言うから貸したの

女子がエロゲーやるのか、的な目で見ている粟飯原。
彼女も文芸部所属だが、一応オタクには理解ある方。
彼女もライトオタクであるが。
彼氏が「違う、それは横山が押し付けてきたんだ」と言うが粟飯原さんは無視する。男にこの場合発言権はない。

粟飯原

うわ……やっちゃった……
ごめん、それ西村君のかと思っててっきり……
後で弁償するよ、多分万単位だと思うけど

破壊してしまった本人は丁寧に頭を下げて謝った。
いや、まあ……弁償してくれるならそれはそれでいいんだけど。
丁度新作出るし、そっちを上手く騙して買わせてやる。
そんな酷いことを考えていた横山。

粟飯原

西村君が

西村

俺かよッ!?

高校生に万単位の出費をしろと!?
彼女が壊したのに……。嘆く西村。

粟飯原

うるさい、浮気男
私はあんな邪なもの許しません
二次元のエロに目覚めるな
現実を見なさい、現実を

西村

ガッデム……

西村、踏んだり蹴ったり。
でもえへえへ笑っている。キモい。
エロゲー無理やり押し付けられて、仕方なくプレイしていたら彼女にバレて破壊され、その弁償金まで押し付けられた。でもハァハァなので良し。
原因は彼の意思の弱さゆえ同情の余地はない。
それもこれも興奮するので全部良い。
うん、彼はドマゾだ。

こいつの通り名である伝説のロリコンドマゾは彼女に常に尻に敷かれて喜び、しかもその彼女と一緒にいると職質されるレベル。
それが伝説になってロリコンマゾと言われているわけだ。

粟飯原

ほーら
やることやるよ西村君
ドマゾ丸出しで喜んでるんじゃないの
気持ち悪いなぁもう

西村

はい、なんなりとお申し付けください!

もうだめだった。

粟飯原

……
横山さん、時々私思うんだけど
何でこの人、ドマゾなんだと思う?

横山

性癖と性格でしょ

西村は常識人ではない。
パソ部のオタクと同じただの変態だ。

粟飯原

はぁ……
ほら子豚、働いて

西村

はいっ!!
働きますっ!!

呆れた粟飯原さんに罵られながら命令されると、書籍を集めに本棚の列に消えていく。
この男は本物だった。

横山

真性のドマゾだねありゃ

粟飯原

やっぱそう見えちゃう?
マゾ彼氏にすると大変だから
横山さんも彼氏選ぶときは慎重にね

横山

三次元に興味ないんで

粟飯原

こっちも末期か……

横山も呆れられながら、粟飯原さんと一緒に情報を探す。
お互い、敵同士という程険悪でもないし、住み分けが出来ると認識した上での共同作業。
むしり群れていれば発想の数は増える。
ドマゾを引き連れて、頑張ることにした。

小泉

先輩!
私やったのですッ!

横山

見つけた?

西村

粟飯原さん
俺も見つけたよこれ
どうかな?

粟飯原

報告いいから中身を見せて

小泉と西村がドタドタ戻ってくる。
それぞれ、小泉は本で、西村は……埃塗れになりながら何やら大きな模型を持ってきていた。

小泉

俳句の書き方を纏めた本なのですっ!
タイトルは『一期一会』!

ドヤ顔の妹分が持ってきた分厚い本を見る。
俳句の書き方を丁寧に書き下ろした本である。
タイトルは四字熟語だった。横山は悟る。

横山

一期一会……イチゴ……
そうか、出来したよ小泉!!

持ってくる物品の形状は問わない。
つまりは、本のタイトルに名前が入っていてもいいのだ。
単語ばかりに気を取られていた横山には正に寝耳に水。
柔軟な発想だった。

横山

よしっ、これなら多分いけるよ!

小泉

ですよねっ!?
急ぎましょう、横山先輩!

放送ではまだイチゴは出ていない。
なら、これなら通る可能性はある。
準備を終えて、走り出す。
一方のドマゾペアは。

粟飯原

……
これ、誰が持ってくの?

西村

俺が持ってくよ!

嵩張る模型を持ってきていたドマゾ。
もってきたのは『クリスマスツリー』の模型。
単語に『栗』が入っている。問題はない。
図書室の倉庫から持ってきたのだそうだ。

粟飯原

ん……
西村君なら問題ないね、ドマゾだし

西村

聞こえなかったことにして、任せてくれよ!
なんとかするからさ!

頼もしいのか何なのか。
取り敢えず命令する。

粟飯原

早く体育館に行くの、子豚!

西村

はいっ!!
行ってきますッ!

命令されると子豚は嬉しそうに担いで突撃していった。
これで間に合うとは思う。
粟飯原さんは子豚の後を少し駆け足で追いかけた。
のち、受理されてゲームをクリアしたペア達。
これで彼らは第一ゲームを勝ち抜いたのだった。

食べられない「いちご」と「くり」

facebook twitter
pagetop