その後敬一は来るもの拒まずで何人もの女子に告白され、付き合う。
 逆に芹菜と付き合った事によって告白されるようになっていたのである。

 しかし1回目の過ちが浮かび、自分から好きになるという事がどうしても出来なかった。
 好きになろうと必死になるが、結局敵わず同じような終わりばかりを迎える。

 何度も何度も繰り返す失敗に敬一は遂に耐えられなくなった。
 何度かわからない呼び出しを受け屋上に行きはしても告白される前に断る、そんな日々が続く。

女子生徒

神谷君、あのね私・・・・・・

敬一

……ごめん。本気の告白なら断るからしないで

女子生徒

え、まだ私何にも・・・・・・

敬一

俺わかるんだよ。表情から何考えてるのか。
だから君がこれからどうしたいかも容易に想像つくんだ……。
だからごめん。
俺……誰が相手でももう本気になれないから本気の告白は受けない

女子生徒

じゃあ遊びなら良いって言うの!?

敬一

うん、そうだよ

女子生徒

何それ最低! 信じられない!
神谷君がそんな人だなんて思わなかった!!

 曇天の屋上に呼び出し相手のそんな声が響き、彼女はそのまま走って行ってしまった。

敬一

……一体何人目かな、そんなように言われるの……。
終業式だから今日告白特に多いし女の子って本当に面倒臭い……。
褒めてあげれば喜ぶ癖に遊びじゃ嫌だ、なんて重たい。
次学期から転校する先でもどうせそう言われるんならもっと俺自身が軽い感じにすればこんな風に告白されたりもしなくなるのかなぁ。そうして適当に皆褒めてればそれこそ本気になる子も居なくなる?

 もう敬一は異性の何もかもが面倒に見えていた。
 次学期から行く中学は校則も緩い記憶があり、好都合だとも思った。

敬一

大きく見掛け変えて実の息子だってのに昔っから俺の事なんて何とも思ってないあの人達に衝撃を与えられれば尚良いし、髪でも染めようかな

 もう敬一は自棄気味になっていた。
 その位疲れていた。
 良く成績を落とさなかったと後になって思う程に。

 長期休暇を終え、新たな学校へ敬一がやって来たのは中学3年の2学期であった。

 髪を染めた生徒で一杯の学校で、茶髪にした敬一も特に悪目立ちする事は無い。
 又個人個人に重点を置く中学校の為、集団で行動しないと目立つという事も無かった。
 敬一が面倒になっていた女生徒からの告白もこの学校では全く受ける事が無い。

敬一

……この学校は楽だな。無理して周囲と関わる必要が無くて。
結局あの人達は俺が髪を染めた事にさえ気付かないレベルで『黒髪だったんだっけ?』なんて言われたのは肩透かしを食らった気分だったけどまぁ良い

 廊下を歩きながら1人でゆっくり考え事が出来るのもこの学校ならではだった。

敬一

この後の転校は無いから助かったな

 そんな事を考えるながら廊下を歩く敬一の目的はただ1つであった。
 職員室のプレートの掛かる位置で止まり数秒視線を彷徨わせ、それからやっと目的のものを見付ける。

敬一

あった、これだ

 敬一の視線の先には『進路希望表提出箱』と示された箱がある。

 敬一が学校に慣れた頃はもう進路選択の時期だったのである。

 投函前に見直した進路希望表には『星華男子高等学校』を初めとした男子高の名前が並んでいた。

敬一

……これで良いんだ、迷いは無い。
もう俺は……変われないから

 諦め切った気持ちで静かに投函したその手は微かに震えていた。

 まるで諦めたくない、と言っているように。

過去最終話 中学校の話3~未来への選択~

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