8月31日の夜――

いよいよ明日は始業式だ。
夏休みもあっという間に終わっちゃったなぁ。



宿題もなんとか全部終わったし、
あとやることといえば
持ち物をカバンに入れていくことくらい。


――そうだ、
あとはコンテストに出す写真のデータを
USBメモリに入れなきゃ。
 
  

鷲羽 早希

何度見てもいい写真だなぁ。

 
 
私はパソコンを操作して
写真のデータをUSBメモリに保存した。


ちなみにパソコンの壁紙は
あの時にみんなで撮った記念写真。

また機会を作って一緒に行きたいな……。



そんなことを思いつつ、
USBメモリをカバンの中へ仕舞ってから
ベッドに入って眠りについたのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
翌日の朝、登校した私は教室へ入る。


日焼けして真っ黒な人が結構いるし、
お土産の交換なんかもしてる。
それからノートを借りて
必死に宿題を写してる男子も。

夏休み明けならではの光景だなぁ。



私はニヤニヤしながらそれを眺めつつ
自分の席に着いた。
そして前の席の山本さんに挨拶する。
 
 

鷲羽 早希

おはようっ!

山本さん

あ、おはようっ!
ねぇ、鷲羽さん。
大河内さんの転校って
いつごろから決まってたの?

鷲羽 早希

えっ?

鷲羽 早希

綾音が……転……校?

山本さん

うん、そういう噂だよ。
確認したわけじゃないけど……。

 
 
 
 
 

 
 
心臓が激しく揺れた。


どんどん鼓動が加速していく。


息苦しい。



視界が狭まり、全体の景色が暗くなる。
周りの音が聞こえない。
自分の呼吸音だけが大きく聞こえる。


綾音が転校って何?
 
 

鷲羽 早希

う……そ……。

山本さん

鷲羽さんっ!

鷲羽 早希

え……? あ……。

山本さん

大丈夫? 顔が真っ青だよ?
汗もびっしょりだし。

鷲羽 早希

あ、うん……大丈夫だよ。

 
 
私は笑って誤魔化し、
そのあと山本さんとの話を早々に切り上げた。




綾音が転校したなんて……。




でもそう言われてみると、
思い当たることはたくさんある。

大河内先輩の不自然な態度とか、
綾音もちょっと変だった。



――あ、いや、いつも綾音は変だけど、
変じゃないのが変だというか。

とにかくいつもと様子が違ってたもん。
 
 

白井 菜由

おはよう。

鷲羽 早希

っ!? 菜由っ!

 
 
その時、ちょうど登校してきた菜由が
私の席のところへやってきた。

――そうだ、菜由なら綾音のことを
知っているに違いない!
 
 

鷲羽 早希

菜由っ! 綾音が……綾音がっ!

白井 菜由

あぁ、引っ越しのこと?
まぁ、始業式の日になれば
人づてに伝わるとは思ってたけど。

白井 菜由

うん、綾音は引っ越した。

鷲羽 早希

あ……ぁ……。

白井 菜由

綾音は早希に変な気遣いを
させたくなかったみたい。
だから言わなかったんだと思う。

鷲羽 早希

そんな……いやだよ……
こんな別れ方……。
お別れも言えないなんて……

鷲羽 早希

綾音……あやねぇ……。

 
 
綾音との思い出が走馬燈のように
私の頭の中を巡る。



いつまでもずっと一緒だと思ってた。
それが突然、
こんな形で終わるなんて信じたくない!


バカなことを言い合って、
すごく楽しくて、いいライバルだった。
唯一無二の親友だった。

勝ち逃げなんて許さないんだから……。



ううん、勝負なんてどうでもいい!
私の負けでもいいっ!!


だから綾音……
私の前に現れて『おはよう!』って
笑顔で挨拶してよぉっ!!!!!
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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