中学の最終授業終了の鐘が鳴る。
中学になって眼鏡からコンタクトにした敬一は教室の後ろの方の席の帰り支度をしながら思った。
中学の最終授業終了の鐘が鳴る。
中学になって眼鏡からコンタクトにした敬一は教室の後ろの方の席の帰り支度をしながら思った。
……つまらないな
そんな自分に驚く。
何に期待してるんだ俺は。学校なんて元々そういうもので、義務だから……皆がやっているから通うだけのものだ
そんなように思い、つまらないと思う原因を探す。
……何にしてもレベルが低過ぎる。こんな所で楽しもうと思う方が無理だ
敬一からすると中学の授業は簡単過ぎて何も歯応えが無い。
幼い頃からの英才教育と必死の努力が全ての物事に対して色味を消しているような、そんな気がした。
必死の努力をしてきたから何をやっても難なく出来てしまう。
それはとてもつまらなかった。
更に同級生達の敬遠も敬一の中学校生活をつまらなくさせた。
流石に中学生にもなると自分の言動に気を使うようになる。
そのため敬一も表面上は上手く取り繕い、同級生と関係を築けるようにはなっていた。
しかし最初の頃は敬一を部活に誘ってくれたりもした同級生男子達もレベルが違い過ぎる敬一について来れなくなり、恐れをなして声を掛けなくなった。
整った容姿に加え何でも完璧にこなす敬一は女子達からするとまさに高嶺の花。そのせいで声を掛けようとする女子も逆に居なくなっていた。
俺が転校するって知って別れを惜しんでくれた彼等が懐かしいな……。
でも彼等の方が逆に普通じゃない
楽しかったと思い出すのは小学校4年から6年で転校するまでの1年半の出来事ばかりだ。
まぁ考えてても仕方ない。家庭教師の先生方も来るだろうし……さっさと帰ってある程度宿題を進めるか
結局一端考えるのは辞め、敬一は荷物を持って靴箱へ向かった。
この後つまらない生活を変えようとするかのように起こる出来事は想像する事もせずに。
靴箱に着いた敬一は早々に靴を履き替えて帰路に就くつもりであった。
しかし靴箱を開けた瞬間に何かが落ちて来てそういう訳にもいかなくなる。
ん?
思わず声を漏らし、落ちたものに視線をやると……
何だ……メモ……?
不思議に思って紙を拾い上げ、開いてみると……
神谷君へ
もしお時間があれば屋上に来てください。
17時半に待っています
女子が書いたらしい丸文字で敬一宛の文が書いてあった。
しかし差出人の名前は無い。
それだからか敬一は逆に興味が湧いた。
そのまま腕時計で時間を確認する。
17時10分。今から向かえば半頃には屋上に着くな。
中学になってから家庭教師の時間は遅くなったしちょっと話を聞く程度なら間に合うだろう……行ってみるか
そうして敬一はそのまま校舎5階の屋上へと向かった。