約束の日、
私は待ち合わせをした駅前にやってきた。


幸いにも今日は快晴!

きっと空の色はきれいに出るだろうな。
でも写す位置には気をつけないといけないけど。
 
 

大河内 綾音

おーいっ! 早希ぃ~!

 
 
駅前にある、よく分からない銅像の前で
綾音が大きく手を振っている。

その横には菜由と誉田くんの姿も。
2人は苦笑しながら綾音を横目で見てる。



……確かに一緒にいる身になってみると
少し恥ずかしいかも。

私は早足で3人のところへ歩み寄る。
 
 

鷲羽 早希

みんな早いね。
まだ集合時間の10分前なのに
全員揃ってるなんて。

大河内 綾音

当然でござる。
興奮して昨夜は眠れなかった!

鷲羽 早希

遠足じゃないんだから。

鷲羽 早希

誉田くん、今日はよろしくね。

誉田 一政

任せておけ!
約1名、厄介なのがいるが
鷲羽と白井がいれば
暴走も食い止められるだろ。

大河内 綾音

こらぁ~っ!
うるさいぞ、そこ~っ!

 
 
綾音は誉田くんに対してビシッと指差し。

なんかいつも以上にテンション高いなぁ。
興奮して眠れなかったというのは
案外本当なのかも。


もしかして誉田くんのことが好きなのかな?
 
 

鷲羽 早希

……それはないか。

白井 菜由

うるさいのは綾音でしょ。

鷲羽 早希

ゴメンね、誉田くん。
騒がしくって。

誉田 一政

ははは、大河内が来るって
分かった時点で、
ある程度の諦めはついてたよ。

大河内 綾音

諦めるなぁっ!
つーか、内心は嬉しいんだろっ?

大河内 綾音

ハーレム状態で
むひょむひょ最高だぜグヘヘ
どーてー捨てられるかもとか
思ってるんだろっ!

誉田 一政

はいはい、その通り。
――じゃ、鷲羽、白井。
出発しようか。

鷲羽 早希

うん。

白井 菜由

そうだね。

大河内 綾音

こらぁ~っ!
3人ともサラッと流すなぁ~っ!

 
 
綾音は怒ってるけど、
私は一緒にいるのが恥ずかしいんだよぉ。


だって、その……童……とかっ、
そういうセリフを絶叫するんだもん……。

周りの目が気にならないのかなぁ……。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
駅前を離れた私たちは、
誉田くんの案内で町の散策を始めた。

小さな神社とか路地裏の景色とか
住宅街に佇む廃墟とか。


どれも知らなかった場所ばかりで
私の目には新鮮に映る。
シャッターを押す指は止まらない。

誉田くんに案内を頼んで本当に良かった。



ただ、気がかりなこともある。
綾音は相変わらずテンションが高めだけど、
あまり写真を撮っていないみたい。

綾音の感性を刺激する場所が
たくさんあったはずなのに……。



私は隣を歩く綾音にさりげなく聞いてみる。
 
 

鷲羽 早希

綾音、あまり写真を撮ってないね?

大河内 綾音

っ!?
そ、そんなことないよ?
いっぱい撮ってるよぉ。

鷲羽 早希

でもそれって
私たちの写真ばっかりでしょ?
景色の写真は?

大河内 綾音

わ、私は人物写真で
勝負するのだよ。
気にしないでくれたまえ。

鷲羽 早希

もしかして私たちの写真を
コンテストに出すつもり?
それはやめてよ?

 
 
私が眉をひそめると、
すかさず綾音は私にレンズを向けて
パシャリと1枚。

そしてドヤ顔になる。
 
 

大河内 綾音

はい、早希の膨れっ面の写真、
いただきましたっ♪

白井 菜由

綾音ったら、もう……。

誉田 一政

ホント、大河内は四六時中
騒がしいやつだな。
中学の時から変わらないな……。

 
 
すると綾音は歩きながら振り返り、
後ろを歩いていた菜由と誉田くんをパシャリ。
 
 

大河内 綾音

はい、菜由の苦笑いと
誉田の呆れ顔も
セットでいただきました。

大河内 綾音

“熱愛発覚!”って
キャプション(説明文)を付けて
中学時代の友達みんなに
メールで配信しておくねっ♪

白井 菜由

っ!

白井 菜由

綾音っ! カメラを渡しなさい!
絶対にデータ消すからねっ!

大河内 綾音

冗談だって♪
そんなことしないから安心して。

白井 菜由

綾音ならやりかねないもんっ!
早く渡しなさいっ!

大河内 綾音

はうぅ、早希。助けてぇ……。

 
 
綾音は私の後ろに姿を隠した。
その身のこなしも素速い。

やれやれ、頭が痛くなるよ、もう……。
 
 

鷲羽 早希

こういうところで
普段の態度が試されるんだよ?
もちろん、
綾音は信頼度ゼロだから。

大河内 綾音

早希、それは言い過ぎだっ!

誉田 一政

つーか、大河内って
よくそのテンションが
いつまでも続くよな。
感心するよ。

大河内 綾音

これがデフォだから♪

誉田 一政

白井、お前すごいな。
“こんなの”と幼馴染なんだろ?

白井 菜由

もう慣れたよ。

大河内 綾音

こらぁ、そこの2人ッ!!!
悪口だぞ、それはっ!
特に誉田はぶっ殺す!

誉田 一政

そんなに突っかかるなよ。
もしかして僕に気があるのか?
そうか、気付かなかったぜ。

 
 
ニヤニヤしながらからかう誉田くん。

すると綾音は急に道路の側溝のところへ
走っていってしゃがんでしまう。


どうしたんだろう?
私たちは顔を見合わせ、一様に首を傾げる。
 
 

大河内 綾音

おぇ~っ! 気持ち悪ぅ~!
冗談でも、それはないわ~。
誉田に想像されたって考えるだけで
悪寒がして――っぷ、おぇ~っ!

誉田 一政

マジで嘔吐くなっ!
地味にショックだよっ!

 
 
あはは、意外に誉田くんと綾音って
お似合いかも。


もし2人が結婚して、
私は大河内先輩と結婚したら
義理の弟と妹になるのかぁ。



でも本当に……もしも本当にそんな日が来たら、
きっと一生、
楽しい毎日になるだろうな……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第13枚 止まらないハイテンション!

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