数日後の夜、
私は自分の部屋で写真を眺めていた。

それは全てコンテスト用として、
この夏に撮影したもの。
もちろん、気に入った写真もあるんだけど……。
 
 

鷲羽 早希

どれもパッとしないなぁ。
インパクトがほしい感じ。
どこかにいい景色の場所とか
ないかなぁ……。

 
 
天王寺部長に言わせれば、
どの写真もきっと『面白味がない』の
範疇だと思う。

そして町の記録写真として使うなら
ベストの条件で撮影され――
 
 

鷲羽 早希

町の記録写真っ!?
――そうだ!
誉田くんならいい撮影場所を
知っているかもっ!?

 
 
普段から町歩きをしている誉田くんなら
私やみんながあまり気付いていない
素敵な景色が見られる場所を
知っているかもしれない。


私はスマホを手に取り、
住所録の中から
誉田くんのデータを選び出した。

そして通話アプリで連絡を入れてみる。



まだ起きている時間だと思うんだけど……。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

鷲羽 早希

こんばんは、誉田くん。

誉田 一政

誉田でーすっ! 鷲羽か?

誉田 一政

どうした?

鷲羽 早希

うん、私だよ。

鷲羽 早希

相談したいことがあって。

誉田 一政

私って誰?
詐欺じゃないだろうな?

鷲羽 早希

違うよぉ。鷲羽早希です。
分かってて聞くんだから、もう。

誉田 一政

お約束ってやつだ。
で、どうしたんだ?

鷲羽 早希

うん、相談があるんだけど――

誉田 一政

だったら直接話をしないか?

鷲羽 早希

分かった。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その後、
私は誉田くんに電話をかけて用件を伝えた。

彼はそれを真剣に聞いてくれる。
 
 

誉田 一政

――そういうことか。
うん、任せておけ。
その日は空いてるから、
何か所か紹介してやるよ。

鷲羽 早希

ありがとっ♪

誉田 一政

鷲羽からデートに誘われちゃ
断れないもんな。

鷲羽 早希

うふふ、また冗談言ってぇ。

誉田 一政

……いや、本音なんだけど。

誉田 一政

マジ、嬉しい。
今からスゲェ楽しみにしてる。

鷲羽 早希

えっ? や、やだなぁ。
じゃ、またね。

 
 
冗談だと分かっていても、
実際に言われるとやっぱり照れくさい。

だから私は慌てて話を切り上げてしまった。


……でも誉田くん、
ああ言ってくれたってことは
少しは本気で嬉しいって思ってくれるのかな?
 
 

鷲羽 早希

っ!?

 
 

 
 
意識したら顔が熱くなってきちゃった!

あくまでも誉田くんは
友達として協力してくれるんだよ。



好意が全然ないとは思わないけど、
変に意識するような感じじゃないよ、うん!
 
 
 

 
 
 

鷲羽 早希

わっ!?

 
 
不意にスマホが小刻みに震えた。

ディスプレイに目を落とすと、
そこには綾音から電話を着信したという表記。



一瞬、また誉田くんからだと思っちゃった……。

私は気を取り直して電話に出る。
 
 

鷲羽 早希

もしもし? 綾音?

大河内 綾音

私だ!

鷲羽 早希

…………。

鷲羽 早希

綿志田(わたしだ)さんですか?
そういう名字の知り合いは
いないんですけどぉ?

大河内 綾音

そういう返しか……。
やるな、おぬしっ!

鷲羽 早希

綾音、気は済んだ?

大河内 綾音

うんっ! やっほー!
久しぶりぃ♪ 早希、元気ぃ?

鷲羽 早希

元気だよ。で、どうしたの?

大河内 綾音

あのさぁ、今度の日曜日、
一緒にどこかへ遊びに行かない?

鷲羽 早希

えっ? そ、それは……。

 
 
その日は誉田くんと約束したばかり。
タイミング悪いなぁ……。


でも嘘をついて誤魔化そうとしても
綾音は勘がいいし、
私も声に出ちゃうだろうしなぁ。
 
 

大河内 綾音

都合悪いの?

鷲羽 早希

実はね――

 
 
私は綾音に本当のことを話した。

冷やかされる可能性も考えたけど、
綾音はそういう性格じゃないし。


そして全てを話し終わると――
 
 

大河内 綾音

なんですと~っ!?
誉田めぇ~っ! 許せん!
私の早希を独り占めしようとはっ!

大河内 綾音

早希を誉田なんかと
2人っきりにさせてたまるかぁっ!
早希は私のものだっ!

鷲羽 早希

いやいやいや、
誰のものでもないし……。

大河内 綾音

よしっ!
その日は菜由も誘って
一緒に突撃するから。
誉田には私から連絡しておく!

鷲羽 早希

えっ? ちょっ――

大河内 綾音

それじゃ、また連絡するね。
なお、このスマホは5秒後、
自動的に爆発する。

プツンッ!
ツーッ、ツーッ、ツーッ……。

鷲羽 早希

通話、切れちゃった……。

 
 
やっぱり話すべきじゃなかったかも。
色々な意味で……。


ちなみに当然だけど、
5秒たってもスマホは爆発しなかった。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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