夏休みに入り2週間ほどが経過した。
私は終業式の翌日から、
なるべく町へ出て写真を撮っている。
景色、人物、動物、植物、機械、乗り物――
被写体も色々と試してみた。
でもなかなか満足のいく写真は撮れず、
お肌は焼ける一方。
もちろん日焼け止めを使っているけど、
完全にカバーできるわけじゃない。
このままじゃシミになっちゃうよぉ……。
でもっ！ それくらいの犠牲は払ってでも
綾音に負けない写真を撮るまでは
諦めるもんかっ！
――と、気合いだけはあるんだけど。
夏休みに入り2週間ほどが経過した。
私は終業式の翌日から、
なるべく町へ出て写真を撮っている。
景色、人物、動物、植物、機械、乗り物――
被写体も色々と試してみた。
でもなかなか満足のいく写真は撮れず、
お肌は焼ける一方。
もちろん日焼け止めを使っているけど、
完全にカバーできるわけじゃない。
このままじゃシミになっちゃうよぉ……。
でもっ！ それくらいの犠牲は払ってでも
綾音に負けない写真を撮るまでは
諦めるもんかっ！
――と、気合いだけはあるんだけど。
うぅ……暑ぃ……。
ついさっきまで私は照りつける太陽の下、
道路を歩いていた。
ただ、さすがに暑さに耐えかねて
今は公園の木陰にあるベンチで休んでいる。
日陰に入るだけで体感温度は全然違う。
こんなにも涼しいなんて思わなかったな。
んぐんぐ……ぷはぁっ！
自動販売機で買った
ヘットボトルの冷たい水がおいしい。
喉が潤って体もわずかに涼しくなる。
まるで染みこんでいくようで生き返るぅ。
鷲羽、こんなところで
何をやってるんだ？
あ、天王寺部長。
顔を上げてみると、
目の前には天王寺部長が立っていた。
カメラバッグを肩に提げているということは
どこかに撮影にでも行くのかな？
それとも帰りかな？
そこの道を通りがかったら、
鷲羽の姿を見かけたので
声をかけてみた。
それはわざわざお疲れ様です～。
このクソ暑い中、
外にいるなんてＭか？
お前はそういう趣味だったのか？
天王寺部長が言うと
本気に聞こえるので
やめた方がいいですよぉ？
私はぞんざいな態度で指摘をした。
そして再びお水を一口。
すると天王寺部長は小さくため息をつく。
……機嫌悪いのか？
この暑さですからねぇ。
多少はイライラしたり
相手をするのが
適当になったりしますよぉ。
ふむ、なるほど。
で、鷲羽はここで何をしている？
コンテストに出す写真を
撮っているんですよ。
ほぅ、それは感心だな。
少し見せてもらってもいいか？
どうぞ。でもどれも
満足がいかないんですよねぇ。
私はベンチの上に置いていた
デジタル一眼レフカメラを
天王寺部長に手渡した。
天王寺部長はそれを慣れた手つきで操作して
撮影した写真を流し見ていく。
そうなんだよね、
天王寺部長は銀塩写真ばかりをやっているけど、
デジカメを扱えないワケじゃない。
持っているのを見たこともあるし。
――そうだ、いい機会だからタイミングを見て
あの話を切り出してみようかな？
うーむ、相変わらずだな。
なんというか、
どの写真も面白味がない。
鷲羽らしいといえばらしいんだが。
ハッキリ言いますねぇ……。
私は思わず苦笑してしまった。
でも天王寺部長の性格なら
写真に対して正直な感想を言うだろうし、
その指摘は正しいんだと思う。
あ、写真に対しての姿勢は
誉田くんと似ているところがあるかも。
ここでお世辞や馴れ合いで
『いい写真だ』なんて言われて
鷲羽は嬉しいのか？
いえ、天王寺部長らしいなぁって
思っただけです。
真摯に向き合っている相手には
真摯に答えるのが俺のポリシーだ。
ですよね。でももう少し
オブラートに包んでくださいよ。
俺はそこまで器用じゃない。
過度な期待はするな。
ですよね……。
ところで天王寺部長は
どこかへお出かけですか？
俺はこれから部室へ行って
写真を焼くんだ。
――ということは、カメラバッグの中には
撮影済のフィルムやネガのファイルも
入っているんだろうな。
印画紙なんかもあるかも。
そうなんですかぁ。
そういえば、
前から聞きたかったことが
あるんですけど。
ん？ 何だ？
なぜ天王寺部長は
銀塩写真にこだわっているんです？
しかもモノクロで。
それを知りたければ、
部室へ来い。話をしてやる。
ここじゃダメなんですか？
ダメだ。ここは暑すぎる。
俺は暑いのが苦手だ。
だから冷房の効いた部室で
話をしようというわけだ。
そういうわけですか……。
納得です。
私もここよりは部室の方が涼しくていい。
もし綾音がここにいたらどっちを選ぶかな？
暑い公園か酢酸臭い部室か。
ふふっ、究極の2択かもっ♪
そういえば、最近は綾音と会ってないなぁ。
今ごろ何をしてるのかなぁ。
次回へ続く！
