その後、菜由も加わって3人で食事をとったり
お菓子を食べたりした。
そして色々な話で盛り上がっていると、
あっという間に数時間が経過してしまった。


菜由はお店の手伝いがあって
そろそろ戻らないといけないということで、
それをきっかけに私も家へ帰ることにする。



それにしても楽しい時間って
過ぎるのが本当に早く感じるなっ♪
 
 

鷲羽 早希

じゃ、またね。

白井 菜由

ばいばい、綾音。

 
 
私と菜由は店の前まで見送りに来た綾音に
手を振った。

すると綾音は跳び上がりながら、
両手を大きく左右に振り返してくる。
 
 

大河内 綾音

まったねぇ~っ!

大河内 駿

――バカ。
大声で叫ぶな、恥ずかしい。

 
 
その時、私の後ろから誰かの声がした。

振り向いてみると、
そこには大河内 駿(しゅん)先輩が
頭を抱えながら立っていた。


大河内先輩は綾音のお兄さんで大学1年生。
うちの高校のOBで、写真部の前部長でもある。

私たちとは3歳違いだから、
中学や高校へ一緒に通ったことはないけど
綾音や部を通じて面識があるんだよね。



そして、私が憧れている人でもある……。
 
 

大河内 駿

鷲羽さん、菜っちゃん。
こんにちは。

鷲羽 早希

お、お帰りなさい。
大河内先輩……。

白井 菜由

おかえり、駿ちゃん。

大河内 綾音

あーあ、
目障りなのが帰ってきたよ。
早くどっか行け! シッシ!

 
 
大河内先輩を煙たそうに
手で払い除けるようにする綾音。
実のお兄さんなのに酷い扱いをするなぁ。

仲は悪くないんだろうけど……。
 
 

大河内 駿

ここは俺の家なんですけど?
それに出入り口はそっちだから
お前こそ早くどっか行け。
そこにいると入れないんだよ。

大河内 綾音

――っ!

白井 菜由

綾音も駿ちゃんも
兄妹ゲンカは
ほどほどにしておきなよ?
早希だって見てるんだから。

 
 
すかさず仲裁に入った菜由のおかげで、
大河内先輩と綾音は
気勢をそがれたみたいだった。

さすが菜由、幼馴染だけあって慣れてるなぁ。


そんな感じで感心していると、
不意に大河内先輩が私の方へ視線を向けてくる。
 
  

大河内 駿

ところで鷲羽さん、
最近の写真部の様子はどう?
綾音に聞いても
教えてくれないんだよね~。

鷲羽 早希

相変わらずですっ♪
それなりに仲良くやってます!

大河内 駿

それは良かった。
困ったことがあったら
遠慮なく相談しに来てね。

大河内 綾音

……先輩面しやがって。

大河内 駿

だって実際、先輩だし。
それより綾音、
なるべく早めに準備を――

 
 
 
 
 

大河内 綾音

言うなよっ!

 
 
 
 
 
突然、物凄い剣幕で綾音が怒鳴った。
そして敵意をむき出しにして
大河内先輩を睨み付けている。


――綾音、どうしたんだろう?

今さっきまでとは雰囲気が全然違う。
まるで怒りの質が別物みたいな感じ。



鬼気迫るようなその威圧感に押され、
誰も何も言えなくなってしまった。

その場には重苦しい空気と沈黙が流れる。
 
 

大河内 駿

……悪い、綾音。

 
 
やがて大河内先輩は
眉を曇らせながら素直に謝った。

一方、綾音は俯いたまま何も答えない。
 
 

鷲羽 早希

2人のこの反応はいったい……?

白井 菜由

じゃ、じゃあ、私は行くね。

鷲羽 早希

あ、それなら私も。

大河内 綾音

う、うんっ! ゴメンねっ♪
急に大声を出しちゃって。
またねっ。

 
 
綾音はばつが悪そうな顔をしながら
軽く頭を下げた。

すると続けて大河内先輩も私たちの方を向いて、
いつもの優しい笑顔へと戻る。
 
 

大河内 駿

鷲羽さん、菜っちゃん、またね。

白井 菜由

ばいばいっ!

鷲羽 早希

さようなら。

 
 
そのあと、
私はお総菜屋さんの前で菜由とも別れ、
1人で家へ向かって歩いていったのだった。
 



それにしても気になるのは、綾音のあの態度。
なんで急に怒鳴ったのかな……?
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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