諏訪先輩は雑誌のページをめくり、
該当の部分を開いて私たちの方へ向けた。

そこには読者の写真コンテストの結果と
作品が掲載されている。



そしてそのページで
一番大きく載っている写真の横にある
作者の名前は……。
 
 

大河内 綾音

例のコンテストの件っスよね?

諏訪 晴久

まさか大河内が最優秀賞を取るとは
思わなかったぞ。

鷲羽 早希

…………。

大河内 綾音

たまたまですよ、たまたま。

諏訪 晴久

謙遜するな。
お前、今までだって何度も
入選してるじゃないか。

大河内 綾音

運が良かっただけっスよ。

諏訪 晴久

でも写真を始めたのって
高校に入ってからだろ?

大河内 綾音

そっスね。
まだ半年も経ってないっスね。

諏訪 晴久

スゲェよなぁ! 天才だよ!

大河内 綾音

私自身は天才だなんて
思ってないっスけどね……。

諏訪 晴久

――そうだ、
鷲羽もよくがんばったな。
佳作に入ってたぞ。

鷲羽 早希

……あはは、
ありがとうございます。

 
 
――そう、私の写真も佳作に入った。

でもすぐ隣に
天才的な才能の持ち主がいるから
どうしても私は霞んでしまう。


実際、綾音の写真は本当にすごい。
引き込まれる写真もあれば
感情がひしひしと伝わってくる写真もある。

どんなシーンを撮らせてもすごいんだけど、
特に人物写真の腕は
ハッキリ言ってプロ並だと思う。



写真を始めたのは私の方が先で、
綾音をこの趣味に誘ったのも私。



でも綾音はその天賦の才で
あっという間に私を追い抜いていった……。
 
 

諏訪 晴久

うんうん、我が部も
将来は安泰だなぁ。

天王寺 那珂也

来年、諏訪たち2年が
写真部を引っ張っていくって
考えたら、俺は不安だらけだよ。

 
 
部室の奥から3年生で写真部部長の
天王寺 那珂也(てんのうじ なかや)先輩が
やってきた。

制服の上にエプロンを着けた姿。
おそらく暗室で写真を焼いていたんだろう。


ちょっと薬品の酸っぱい臭いが漂ってくる。
 
 

諏訪 晴久

そんな、ひどいですよ。
天王寺部長ぉ~!

能代 美緒

そうですよ、天王寺部長。
私と諏訪くんを
一緒にしないでください。

 
 
今度は奥のミーティングスペースから
副部長の能代 美緒(のしろ みお)先輩が
眉をしかめながら現れた。


能代先輩は2年生だけど、
実質的に部を取り仕切っている。

しっかり者で、私はちょっと憧れている。
 
  

天王寺 那珂也

俺から見たら同じだよ。
そのお堅い性格じゃ、
心配の種は残るよ。
能代は融通が利かなすぎる。

能代 美緒

…………。

天王寺 那珂也

能代と諏訪を足して2で割ったら
ちょうどいいのにな。

能代 美緒

やめてください。

諏訪 晴久

真っ平ゴメンですよ!

天王寺 那珂也

やれやれ……。
そういう調子だから
心配なんだっての。

 
 
うちの部はいつもこんな感じ。
なんだかんだ言って、仲はいいと思う。

バランスが取れているっていうのかな?



その後、綾音は自分のロッカーから
三脚とカメラケースを回収した。
夏休み中に撮影で使うんだろう。


そしてまた、素晴らしい写真を撮って
どんどん私との差を引き離していくんだ……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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