トーヤ、起きて……。

トーヤ……。
 
 

トーヤ

ん……あ……。

 
 

 
 
眠っていた僕は誰かの呼ぶ声に気が付いた。

目を開けると、
そこには外出の準備を整えた
カレンの姿があった。


どうしたというんだろう?
 
 

トーヤ

カレン? もう朝になったの?

カレン

ううん、まだ夜よ。

 
 
確かに窓の方へ視線を向けると、
まだ外は真っ暗だ。

空には丸い月が輝いていて、
辺りも静まり返っている。


ライカさんはもちろん、
遅くまで作業をしていたセーラさんも
すでに眠りについている。
 
 

トーヤ

何かあったの?

カレン

実は私、サキュバスの家で
気になったことがあるの。
これから2人で調べに行かない?

トーヤ

こんな夜中に!?

カレン

シッ! みんなが起きちゃうわ。

 
 
僕は慌てて手で口を塞ぎ、
セーラさんたちの方を見る。

幸い、みんな静かに寝息を立てたまま。


ホッとした僕は、
あらためて囁くようにカレンに問いかける。
 
 

トーヤ

でもなんで僕たちだけで?

カレン

私が気になったってだけで、
確信が持てないから。
みんなを振り回したくないの。

トーヤ

でも……。

カレン

調べるだけだから。
お願いっ!
もしダメなら私だけで行くけど。

トーヤ

そ、それはダメだよっ!
分かった、僕も行くよ。

カレン

ありがとっ!

 
 
カレンを1人だけで行かせるわけにはいかない。
あまりにも危険すぎるし……。

だから僕はカレンに付いていくことにした。


なるべく音を立てないようにしつつ、
急いで準備を整えて宿を出た。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
僕たちは再びサキュバスの家に侵入した。

もしかしたら相手に遭遇してしまうかもって
ちょっとだけ不安だったんだけど、
幸いにして中には誰もいないみたい。


やっぱりもうここから逃げたまま
別の場所に移動しちゃったのかなぁ。
 
 

トーヤ

ねぇ、カレン。
気になったことってなんなの?

カレン

あ、うん。
その前に聞きたいことが
あるんだけど。

トーヤ

なぁに?

カレン

銭湯で女湯を
覗かなかったって本当の話?

トーヤ

またその話? 本当だよ。
だってそんなの、
やっちゃいけないことだもん。

カレン

じゃ、女の子に興味がないって
わけじゃないのね?

トーヤ

えっと……それは……
まぁ……。

 
 
僕は答えに困った挙げ句、曖昧に頷いた。


全く興味がないと言ったら嘘だけど、
クロードやクロウくんみたいに
露骨に欲望を出すのも嫌いだから。

理性で自分の心を律しておくことが
大切だって僕は思う。
 
 

カレン

……ふふ、それを聞いて安心した。
だって私、
トーヤのことが好きだから。

トーヤ

うん、
僕もカレンのことが好きだよ。
いつも助けてくれるし、優しいし。

カレン

私が言っているのは、
そういう意味の好きじゃないの。
異性として好きだってこと。

トーヤ

えぇっ!?

 
 
突然の告白に僕は大きく心が揺さぶられた。

どんどん顔が熱くなってきて、
心臓の鼓動はバクバク高まっている。


カレンに視線を向けると、
彼女は頬を赤くしながらボーッと
僕を見つめている。
 
 

カレン

気になることがあるって
実は嘘なの。
2人っきりになりたかったから。

トーヤ

…………。

カレン

私はトーヤみたいに
清い心を持った人が好き。

 
 
そう言ってカレンは目を瞑り、
僕の方へ顔をゆっくりと近付けてくる。


でも……これは……。


僕は覚悟を決め、全身に力を入れて身構えた。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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