中は静まり返っていて
誰かがいる気配は感じられない。
全ての部屋を見て回ってもそれは同じ。


でも確実にここにいるはずだから、
息を潜めて隠れているのかもなぁ……。
 
 

トーヤ

見つからないね……。

セーラ

もしかしたら、
私たちの気配を察して
直前に逃げ出したのかも
しれないですねぇ。

カレン

魔力の流れは
どうなってますか?

セーラ

えとえとぉ、
ちょっと待ってくださいねぇ。

 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
セーラさんが可視メガネを
覗きこもうとした時のことだった。


突然、窓は何かで塞がれ、
部屋の明かりも消えてしまった。

辺りは漆黒の闇に包まれ、何も見えない。
 
 

トーヤ

うわわっ! 急に真っ暗に!

カレン

どうなってるのよ、これ?

セーラ

はわわっ!

 
 
 

セーラ

ひゃぁ~っ!!!

 
 
 
大きな物音とともに、
セーラさんの驚愕したような声が
聞こえてきた。


えっ? えぇっ!? 何があったのっ?
 
 

トーヤ

セーラさん、どうしたんですか?

セーラ

可視メガネを
誰かに奪われたのですぅ。

トーヤ

えぇっ!?

カレン

そんなことよりも
今は明かりをっ!

セーラ

……そ、そうですねぇ。

 
 
 

 
 
 
それから程なく、
セーラさんがライティングの魔法を使って
部屋の中を明るくした。

やっとみんなの姿が見えるようになる。
 
 

トーヤ

これは……。

 
 
窓はやっぱり木の板で塞がれていた。

しかもどこかで操作か魔法を使うと、
全部が閉まるような
仕掛けになっていたみたい。


これをすぐに取り外すのは難しいかも。
 
 

セーラ

やっと見えるように
なりましたねぇ。
散々な目に遭いましたぁ。

トーヤ

カレン、怪我はない?

カレン

うん、大丈夫。

トーヤ

一度、外へ撤退しよう。

セーラ

分かったのですぅ。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
僕たちは家の中を出て
ライカさんのところへ戻ることにした。



建物の周りには依然として
結界が展開されている。

つまりサキュバスは
まだ中にいるってことなのかな?
 
 

トーヤ

ライカさ~ん!

ライカ

あれ?
もう片が付いたのですか?

トーヤ

それが……。

 
 
僕はライカさんに事情を説明した。

それを終えると、
ライカさんは心配そうに僕たちを見やる。
 
 

ライカ

それは災難でしたね……。

トーヤ

誰かあの建物から
出ていきませんでしたか?

ライカ

いえ、おそらく誰も
出ていないと思います。
私たちの知らない抜け道があれば
話は別ですが……。

トーヤ

ということは、
表向きのルートからは
逃げていないってことかぁ。

ライカ

またすぐに家へ探索に入りますか?
まだ中に隠れている可能性も
ありますよ?

ライカ

調べる範囲が確定しているなら
探索魔法で探ることも
出来ると思います。

 
 
そうだなぁ、どうすればいいのかな?

僕が考え込んでいると、
カレンが少し慌てながら会話に入ってくる。
 
 

カレン

で、でもっ、
何をしてくるか分からないわよ。
深追いは危険だと思う。
体制を整えてからの方が……。

トーヤ

カレンの言う通りかも。

ライカ

確かにそれも一理ありますね。

セーラ

…………。

トーヤ

セーラさん、可視メガネを
奪われちゃったんですよね?
予備ってあるんですか?

セーラ

いえ、また新しく作らないと
ダメですねぇ。

トーヤ

どれくらいかかりますか?

セーラ

急げは1日くらいで
なんとかなると思いますぅ。
構造自体は単純ですのでぇ。

トーヤ

良かったぁ。
もっと時間がかかるかと
思いましたよ。

ライカ

さすが名工セーラですね。

セーラ

うふふふっ♪

トーヤ

それなら今日は
宿へ戻りましょう。
セーラさんの道具が完成次第、
捜索を再開するということで。

カレン

やむを得ないわね。

 
 
こうして僕たちは宿へ戻り、
後日あらためて探索をすることにした。


クロード、クロウくん、
もう少しだけ耐えてね。
きっと助けてあげるから……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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