世界はみんなの為にある。
世界はみんなの為にある。
全ての人間は平等だ。
——そんな幻想を俺は信じない。
世界は俺の為にある。
人間は不平等だ。
俺は十四歳でアメリカの大学を卒業した。十五歳の時に書いた論文は世界中で評価され、天才ともてはやされた。
その甲斐もあって、十六歳の時には既に貯金が億単位だった。
現実で俺に敵う奴はいなかった。
だけど俺は——
——そんな毎日が退屈だった。
だから、世界は俺の為にあるゲームを開発した。
直接脳に電流を流し、ゲームの世界を実際に体験できるという、誰もが憧れた理想だ。
フルダイブゲーム
そういう通称が付けられていた。そして当然、俺はそのゲームを手にする。
『空と大地のラグナロク』
それは、五つの国と、天空の城を舞台とした、魔法が当たり前の異世界。
ルールは簡単。旅人かたスタートして、それぞれの国の王を目指し、天空の城に住む神の元に到達し、王冠を授かるだけ。
初めにランダムに割り振られる属性は、炎、水、風の三つ。それは神が気まぐれに選定するらしい。
それとは別に、いくつかの役職というものもあるらしい。
俺が広げた説明書は、最後にこう締めくくられていた。
『初めの属性と役職が
君の運命を左右する。
神の恩恵に期待しろ』
さて、この世界は俺を満足させられるのか?
頭に専用の機械をはめ、俺は宣言した。
リンクバースト、オン!
そして俺の意識は、闇の中に吸い込まれていった。
城塞都市、サルバーレ。俺が目を覚ましたのは、用意された五つのうちでも、特に武力に優れた国だった。
まずは探索と行こうか
そう言って足を一歩踏み出す。
——と。
見~つけた。私のレベル上げの生贄になりなさい!!
いきなり手裏剣を手に一人の少女が襲いかかって来た。
いくら天才の俺でも、その不意打ちには気付けなかった。と言うより、直前まで姿が見えなかった。
もらったー!
彼女の両手が俺の腹に突き刺さる。
——その一瞬前に。
見えないバリアみたいなものが、その手を弾く。
よろめく彼女に手を差し伸べると——
——竜巻が彼女を吹き飛ばした。
唐突にそんな音がした。見ると、右腕には時計みたいなものが巻かれていた。
何だこれは?
訝し気に見ると、画面には文字が。
くノ一撃破。経験値305獲得。
レベルアップ 198→199
レベル199.どうやら俺は神に好かれているようだ。色々な確認・設定が出来るようなので、自分のステータスを確認する。
レベル:199
属性:炎・水・風・雷・土・?・『 』
役職:超能力者
特殊スキル:オートガード
現在の職業:——
うん・・・勝ったな
最後のステータスを見て、俺は勝利を確信した。
ここで、ゲームのルールを確認しておこう。
五つの国の王を目指し、
天空の城に住む神に、
王冠を授けてもらう。
そして、俺の現在の職業は——
現在の職業:四ヵ国を統べる王
だから俺は言った。
よし。神をぶん殴ろう!