さようなら。

剣を振り上げた兄上が、どこか遠くに見える



ああ、死ぬんだ



心の中を虚無感が満たした


しかし、僕の視界は赤いもので遮られた








赤い?



燃えるような赤



わなわなと震える菖蒲さんを僕は横目で見る




そしてゆっくり正面の人物を見上げた


・・・・。

だ・・・れ?




赤い髪、赤い瞳


わしじゃ。
漣殿!






そして目の前に立つ彼はにっこりとほほ笑む

この声、このしゃべり方は・・・




・・壱さ・・ん?



気づけばあの奇妙な仮面は地面に落ちていた


髪は白髪だったかのように思われたが、それはただのかつらで今は仮面と一緒に脱ぎ捨てられている

は・・・・・・?
菖蒲、これはどういうこと?






兄上は目を大きく見開き硬直したまま菖蒲さんに尋ねる


菖蒲

私の特技が効かないと思ったら、これは偽の毛だったのね!!!!




彼女は人形から白い毛を取り出し、壱さんに突き出した

ほほっ。
【わし】の能力は心を読むことじゃ。

菖蒲

!!

おぬしは知らなかったじゃろう?
わしにはおぬしの考えは筒抜けじゃったよ。
運よくかつらを地毛と勘違いしてくれて助かったわい。

菖蒲

くっ!!!!



菖蒲さんは悔しそうに顔を歪めて、壱さんを睨み付けた

すぐに助けられなくてすまなかった、漣殿。



壱さんは素早くそばにある剣を拾い、兄上に切りかかる


!!!!!


とっさのことで兄上は受け止めはしたがふらつく


壱さんはその隙を見逃さなかった

ふっ!!!!


だん、と強く踏み込み、兄上の懐に入り、彼の剣を叩き落した

しまっ・・!!!!





兄上は完全にバランスを崩して、地面にしりもちをつく



鋭利な刃先が兄上ののど元に触れた



はっ・・、あんた何者・・?



兄上は荒い息を整えながら、壱さんに問いかける


【わし】は、壱。
漣殿の、本当の兄弟じゃ。

!!!!??



壱さんが、僕の兄弟・・!?


どうりで顔が似てる。
・・・そして目も。



そして兄上は自らを嘲り笑う


本当の俺の敵は・・・壱さん、あんただったんだね。





赤い目の男


それは、僕じゃなくて・・僕の兄である壱さんだった・・・?

馨殿、終わりじゃ。




赤く鮮血が舞った





そこから僕の意識は途絶える

これで【俺】は、少しはお前の役にたてたかな・・・、壱。

義父

漣、朝だ。
そろそろ起きないか。

今起きました!!




お義父さんの呼び声が僕の部屋に響く

心地よい朝の光が窓から部屋の中に差し込んでいた




僕は窓を開け、胸いっぱいに新鮮な空気を吸い込む



僕は漣、天王寺 漣


僕がこの家に引き取られてどれほどたっただろうか


物心つく前に引き取られたので本当の母や父は覚えていない



確か、この家の跡取りになるはずだった【馨】という人が事故で亡くなったか何かで、この家の両親は僕を生活に困っていた両親から引き取ったらしい

最初は戸惑って、新しい家族には心が開けなかった



でも、みんないつでも僕に温かく接してくれた




だから僕は今幸せである


引き取られたことは後悔していない

さて、今日もゲームセンターに行こうかな。



最近、僕のゲームスコアをすべて抜かした奴が現れた

売られた喧嘩は買う主義だ


 

ハンドルネーム
【JACK】だっけな。




そしてドアを開けて、いつも通り、僕は学校に向かったのだった













???

またお前、断罪しちゃったな☆

???

ま、また会えるんですね!

・・・・。

占い師

静かにしなさい、ルア、ソル。
私は彼との久々の対話を楽しみたいのです。

ルア

はぁい!

ソル

は、はい!!
グレゴリウス17世様!!!

グレゴリウス17世?

元気にしてましたか。

あんた、まだこんな胸糞悪いゲーム続けてたんだな。

グレゴリウス17世?

続けるのが私の使命でして。
どうです、二回目に参加した気分は?
ジャックさん。

その名で呼ぶな!!!!
もうその名前は捨てたんだ。

グレゴリウス17世?

貴方の本当の特技は
【殺した人物の特技や姿全てをコピーすること】。
現に今、貴方が壱さんの姿で殺した馨さんの姿になってますしね。
ころころ姿が変わってほんとにややこしい。

っ・・・!!!

グレゴリウス17世?

これで前回あなたが断罪した壱さんは名実ともに消滅しました。
そして、貴方は再び断罪したためまたゲームに参加しなくてはなりません。

ルア

断罪という名の人殺しの罪を負ってしまったからなぁ。
三回目強制参加、ドンマイ☆

ソル

ルア君!!
今度から断罪したら、いったんは現実世界に戻れるけどまた参加しなくちゃいけなくなるってちゃんと放送で説明しようよ!!

ルア

いやだね!
二回目に強制的に連れてこられた奴の顔を見るのが僕の趣味なんだ。

・・・安心しなよ。
次は死んでやるからさ。
俺は・・・壱のもとに行かなくちゃ。

ルア

えー!
簡単に死なれちゃつまんないっていうかー。
てか壱の兄弟?
あいつも面白い特技持ってたのに、自分で気づいてなかったよね。

ソル

漣さんですか?
たしか自身では特技は射撃系のゲームって言ってましたけど・・・。

ルア

バーカ。
あいつの本当の特技は身体能力を瞬時に5倍まで引きのばせることなんだよ。
ゲームどまりとかホントもったいねー。

グレゴリウス17世?

無駄話はそこまでです。
どれ、ひとつ再会がてらに昔の懐かしい話をしませんか?
ジャックさん。

・・・断ったらどうせ元の世界に帰さないとかいうんだろ。

グレゴリウス17世?

ご名答。
なんだかその姿のジャックさんと話していても落ち着きませんし、昔話の間だけ、元の姿に戻して差し上げますね。

は!!???
ちょ・・!!!

ジャック

・・・ちっ!!!!!

グレゴリウス17世?

おお!
懐かしい。
では、昔話に花を咲かせましょうかね。

ルア

グレゴリウス17世様。
その前に罪人リスト更新してなくていいの?

グレゴリウス17世?

ああ!
忘れるところでした。




そうして彼はノートを取り出す

 

 

~罪人リスト~
名前、罪状
童話
特技

No.1 漣 強欲
     『青ひげ』
      身体能力を瞬時に五倍にする

No.2 馨 憂鬱 
     『子供たちが屠殺ごっこをした話』
      想像したものを具現化

No.3 壱 色欲 
     『ながい鼻』
      心を読み、真贋を色で見分ける

No.4 菖蒲 虚飾
      『へんてこなおよばれ』
       髪の毛をいれた人形を使い
       人を操ることができる

No.5 卓 憤怒
     『鍛冶屋と悪魔』
      千里眼
 
No.6 暁 傲慢
     『夜うぐいすとめくらとかげの話』
      特殊な声を持つ

No.7 椿 怠惰
     『夏の庭と冬の庭』
      水を操ることができる

No.8 由利 暴食
      『餓死しそうな子供たち』
       絶対味覚

補足
No.9 ジャック ■■■■
       『■■■■■』
       殺した相手の姿能力をコピーする

No.1

No.2

No.3

菖蒲

No.4

No.5

No.6

椿

No.7

由利

No.8

ジャック

No.9

グレゴリウス17世?

おっと。
ジャックさんのところにインクをこぼしてしまいました。

ソル

グ、グレゴリウス17世様!
ジャックさんのファイルは以前の分にもありますので大丈夫ですよ!

グレゴリウス17世?

それもそうですね。

ジャック

・・・・。

グレゴリウス17世?

さて、お待たせしました。
貴方の昔話、話していきましょうか。


そういって
彼は昔の罪人リストを開いた



 


さあ、語りましょう




貴方がまだジャックという名で

壱さんが
まだ生きていたころの話を







【-justice-】終わり


pagetop