・・・そんな。
じゃああなたが本当に由利さんを。

菖蒲

ふふっ。

罪を思い出すトリガーになったのがソーセージってホント皮肉だよね。

菖蒲

そうですわね。

椿

ど・・どういうことです?

菖蒲

しかたないですわね。
どうせあなたたちは私たちの手の内ですわ。
前世の罪もついでに話してあげましょうか。


そういって菖蒲さんは再び語りだした


『へんてこなおよばれ』
原題:Die wunderliche Gasterei

昔、仲の良い赤ソーセージ(赤腸詰)と白ソーセージ(肝臓腸詰)がいました。

ある日、白ソーセージは赤ソーセージの家に昼食に呼ばれます。

行くと赤ソーセージの家の玄関は段々になっており、一段登るたびに喧嘩をする箒や怪我をした猿など、次々におかしな物と出会いました。

家に入ると白ソーセージは早速、赤ソーセージに玄関のことについて聞きましたが答えず、その後も何度か聞きましたが、必ず赤ソーセージははぐらかしてしまいます。

やがて赤ソーセージは料理の出来が気になると台所へ引っ込んでしまいました。

白ソーセージが玄関のことについて考えていると、突然、何かが部屋に入ってきて言いました。

「ここはソーセージ殺しの家だ!早く逃げろ!」

慌てて白ソーセージが窓から外へ飛び出すと、別の窓から長い包丁を持った赤ソーセージが白ソーセージを見ながら言いました。

「つかまえたら、ただじゃおかないからな!」



おしまい


菖蒲

こんな意味の分からないソーセージの話がグリム童話にあるなんて驚きでしょう?
私は白いソーセージをだまして食べようとした赤ソーセージ。
【虚飾】の罪がかせられているの。

はっ。
さっきも言ったろ。
俺様は出られさえすれば他の奴の罪なんて興味ねーんだよ。
要はお前らは俺様と殺し合いを望むってことだろ?



菖蒲さんの話にみんなが身を凍らせている中、唯一ぎらぎらとした瞳で二人を見つめていたのは暁さんだった

ははっ。
大歓迎だ。
俺様はそんな奴ら嫌いじゃない。



そういって暁さんがそのまま近くにいた菖蒲さんに殴りかかろうとした瞬間

菖蒲

愚かな方ですわね。

菖蒲さんがぽつりとつぶやき、手にしていた人形の腕を無理やり後ろに折り曲げた

僕の耳に届くほど、その嫌な音は静まり返った部屋の中に響く


そして

っ・・・ぐあああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!


悲鳴が轟く

それは思わず目をふさぎたくなる光景だった





暁さんの両腕は、本来ありえないはずの方向に捻り曲がっていたのだ



苦痛のあまり、床に膝をついた暁さんが次の言葉を発する前に、菖蒲さんは人形ののど元を指で思いっきり握りしめる

か・・・はっ・・。

菖蒲

危なかったですわ。
たしかあなたは声の能力の持ち主。
使われる前に潰しておかないと。

そしてきゅっと彼女はさらに人形ののど元を捻った


暁さんは声が出なくなったらしく、地面に膝をついたまま、ただヒューヒューと荒い呼吸をするだけだった


菖蒲

これは何でしょう?

彼女はそんな暁さんを嘲り笑いながら、すっと人形から何かを取り出す

髪の毛・・・?

菖蒲

そう、さっきも話したみたいに、私の特技は髪の毛を入れた人形で、その髪の毛の主を操ることができるのよ。

!!

菖蒲

ほうら、みなさんの分。
きちんと全部用意していますわ。

そしてたくさんの人形をドレスの裾から取り出した

もしかして、僕の髪についたガラスをとるとき・・・わざと髪を抜いたんですか?

菖蒲

ええ、ご名答。
皆様のも同じような方法でいただきましたわ。

そして不気味なほどの満面の笑みを浮かべる

だから早死にしたくなければくれぐれも俺たちの邪魔をしないようにね。


兄上はみんなを見回す



兄・・上。

勝負だよ、漣。


そして兄上は先ほど自分がどこからか出現させた剣を僕に差し出した


え?

簡単に解体してもつまらないでしょ?
楽しまなきゃ。


そして自分も新たに剣を出現させる


さあ、始めようか。


僕が戸惑っていると、兄上は問答無用で切りつけてくる



っ・・!!!!



兄上に小さいころから剣技で勝ったことがない

前世の影響で刃物裁き慣れていたのだろうか






ほら、かかってこないと死んじゃうよ?

兄上は舞を舞うかのように余裕な剣さばきで僕を追い込む



兄上の動きにはすきがなく、僕はただ受け止めるばかりで段々と端へ追いつめられる

つまらないなぁ。
俺を殺す存在なんでしょ?
もう少し粘らないと。

一閃

大きくなぎ払われた兄上の剣は、僕の肩を掠める

っ!!!

浅く切られた傷口から血が流れて、僕の服を赤く染めていった

でも


僕は負けられない!!!
僕が本当の正義だ!!


自分でもこの体制から優勢になるのは厳しいと思う

しかし、僕が死ねば、
兄上たちが正義だ
・・・・・・・・

そんなのは許されない

裁かれるべきは彼ら

彼らは現実世界にいてはだめだ


ここで僕が裁かないといけない
・・・・・・・・・・・・・・

そう、絶対に
・・ ・・・


僕は勢いをつけて切りつける

甘いよ。


無論、兄上にはかわされてしまう

そして兄上は身を翻して今度は攻撃を仕掛けてくる





そして僕は












ぽた―、ぽた

兄上の剣に真っ赤な血が伝い、床にまだらを描く


何で避けないの。


兄上の剣は僕の脇腹のあたりに沈み込んでいる



漣殿!!!!

椿

漣さん!!!

こ・・・こうでもしない、と兄上にすきがないからね・・。



鈍い痛みで意識が飛びそうになるが、僕は兄上に向かって最期の力を振り絞って切りつける




!!!!!!

その一撃で兄上の身を貫くつもりだった





しかし、僕の意識は思ったよりもうつろになっていて、的を外してしまい、腕に傷を負わせただけであった

ははっ・・・、最悪。
ここで外すなん・・・て。

目標を外した後僕の手から力が抜け、剣が地面に落下する


そして耐え切れず、僕は膝をついた



馬鹿だね、漣。
自滅行為なんてするから、遊びの時間に終わりが来ちゃったじゃないか。

兄上は無情にも僕に埋もれた剣を思いっきり引き抜く



ぐっ・・・!!!!



その激痛に口からうめき声が漏れる



菖蒲

終わりのようですわね。

菖蒲さんがつぶやいた


僕はっ・・・まだ・・!!!

目の前に転がる剣に手を伸ばすが、その手を兄上の足が阻む

いっ・・・!!!!

そんな状態で戦えるわけないでしょ。
本当はもう少し遊びたかったけど、漣、痛いでしょ?
義兄弟のよしみで、最後は兄らしく楽にしてあげるね。


そして兄上の剣先が僕をとらえた

さようなら。







つづく


~罪人リスト~
名前、罪状
童話
特技
 


No.1 漣 強欲
     『青ひげ』
      ???

No.2 馨 憂鬱 
     『子供たちが屠殺ごっこをした話』
      想像したものを具現化(?)

No.3 壱 色欲 
     『ながい鼻』
      心を読み、真贋を色で見分ける(?)

No.4 菖蒲 虚飾
      『へんてこなおよばれ』
       髪の毛をいれた人形を使い
       人を操ることができる

No.5 卓 憤怒
     『鍛冶屋と悪魔』
      千里眼
 
No.6 暁 傲慢
     『夜うぐいすとめくらとかげの話』
      特殊な声を持つ

No.7 椿 怠惰
     『夏の庭と冬の庭』
      水を操ることができる

No.8 由利 暴食
      『餓死しそうな子供たち』
       絶対味覚

No.1

No.2

No.3

菖蒲

No.4

No.5

No.6

椿

No.7

由利

No.8


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