カレンたちと合流した僕たちは食事を終え、
宿でゆっくり休養をとった。

そして翌日の朝になり、出発の準備を始める。
 
 

トーヤ

あれ?

 
 
いつもは早起きのはずのクロードが
まだベッドの上で眠っていた。

僕よりも起きるのが遅いなんて珍しい。
ちなみにクロウくんも夢の中のようだ。
 
 

カレン

ねぇ、トーヤ。
そろそろクロードたちを
起こしたら?

トーヤ

でも疲れているのかも
しれないよ?
ギリギリまで寝かせてあげたら?

セーラ

でもでもぉ、
さすがにお寝坊さんですねぇ。

ライカ

以前からクロードさんは
規則正しい生活が大事だって
言ってたじゃないですか。
起こしてあげた方がいいですよ。

トーヤ

……それもそうだね。

 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
僕はクロードの掛け布団を引きはがし、
大きく体を揺する。

一方、セーラさんはクロウくんを
起こしてあげるみたい。
 
 

トーヤ

起きて、クロード。
もうすぐ出発の時間だよ。

セーラ

ほらほらぁ、
起きてくださいぃ~♪

 
 
その後も僕たちは激しく体を揺すったり、
大声で呼びかけたりした。


でもクロードもクロウくんも
起きる気配が全くない。

それでようやく様子がおかしいことに気付く。
 
 

トーヤ

カレン、
どう考えてもおかしいよ。
これだけやっても起きないなんて。

カレン

そうね……。

ライカ

何かの病気だったら大変ですね。

カレン

病気だと判断するのには
疑問があるわ。

トーヤ

どうして?

カレン

もし病気なら、
なぜこの2人だけが罹患したのか?

トーヤ

そっか、感染性のある病気なら
僕たちもかかっている可能性が
高いもんね。

ライカ

感染性がなかったとしても、
それはそれでおかしいですもんね。
2人同時に症状が出るなんて。

 
 
カレンやライカさんの言う通りだ。

もし感染する病気が原因なら、
僕たちやこの町の多くの人に症状が出て
大騒ぎになっていたとしてもおかしくない。


それに体質に関係する病気なら
個体差が出るから、
症状の出るタイミングが同じなのは疑問だ。
 
 

セーラ

それならぁ、
男子にだけ感染するんじゃ
ないですかぁ?

トーヤ

っ!? セーラさんっ!
それ、どういう意味ですかっ?

セーラ

冗談ですよぉ♪

 
 
もうっ、セーラさんったら!
こういう時にからかうのはやめてほしい。

でもそれを聞いていたカレンは
なぜか真面目な顔をしたまま頷いている。
 
 

カレン

セーラさんの指摘は
いい着眼点だと思います。

トーヤ

カレンまでからかうつもりっ?

カレン

冷静になって、トーヤ。
私たちはこの町に着くまで、
ずっと一緒にいたのよ?

カレン

私たちと別行動をした時に
何かあったって想像するのが
自然よ。

セーラ

でもでもぉ、
それだと1つだけ疑問が
残りますねぇ。

ライカ

そっか、トーヤさんに
何も起きていないというのが
疑問の残る原因というわけですね?

セーラ

その通りなのですぅ。

カレン

トーヤ、
どこかでクロードとクロウくんが
別行動をした時ってなかった?

トーヤ

あっ!

 
 
僕の頭にはすぐに温泉の休憩所のことが
思い浮かんだ。



そうだ、あの覗き穴の時だ。
あの時だけ、2人は僕と別行動をとった。
何かがあったとすれば、
その時しか考えられない。



でもその話をするのは……まずいよね……。
 
 

カレン

思い当たることがあるのね?

トーヤ

う、うん……。

カレン

詳しく話してもらえる?

トーヤ

えっと……その……。

カレン

このままクロードたちに
取り返しの付かないことが
起きてもいいの?

トーヤ

わ、分かった。話すよ。

 
 
クロードたちの体のことを考え、
やむを得ず僕は全てを話すことにした。


でもカレンたちに言いつけているみたいで
すごく気が退けるなぁ。
話をしている途中で、
3人の表情も曇っていってるし……。
 
 

トーヤ

――というわけなんだ。

ライカ

……この2人、最低ですね。

セーラ

自業自得なのですぅ!

カレン

トーヤ、
本当に覗いていないのね?

カレン

嘘じゃないわよね?

トーヤ

あ、当たり前じゃないか!
そんなことしないよっ!

セーラ

大丈夫ですよぉ!
トーヤくんが無事なのが、
覗いていない証拠なのですぅ!

カレン

でもそれが原因だと
決まったわけでは……。

ライカ

ほかに別行動をしていないなら、
それが影響していると考えるのが
自然ですよ。

カレン

それもそうね……。

 
 
ふぅ、すごくホッとするのはなぜだろう。
命の危機を脱したからなのかな?


いずれにしても
カレンは納得してくれたみたい。
危うく僕まで
とばっちりを食うところだったよ……。
 
 

カレン

とりあえず、
原因を調べてみましょう。
診察魔法を使ってみるわ。

 
 
カレンは慣れた様子で診察魔法を使った。

程なくそれが終わると、
目を丸くしながら大きな声を上げる。
 
 

カレン

これはっ!?

トーヤ

原因が分かったの?

カレン

呪いがかかってる。

トーヤ

呪いっ?

カレン

しかも夢魔の……。

トーヤ

えぇっ!?

 
 
夢魔というと、
人間の精気を吸い取ると言われている
種族のことだ。

男性型がインキュバス、
女性型がサキュバスって呼ばれてる。



彼らは寝ている間に精気を吸い取って、
いずれは死に至らしめてしまうという。


――でもそれだと、ちょっとおかしい。

だって夢魔の呪いは
僕たち魔族には効かないはずだから……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第85幕 緊急事態! 呪いの罠!!

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