クロードの出血が止まり、
のぼせていたのも収まってから
僕たちは家族風呂を出た。
このあとはクロードが面白い場所へ
案内してくれるらしい。
僕とクロウくんは彼の後ろに付いていく。
クロードの出血が止まり、
のぼせていたのも収まってから
僕たちは家族風呂を出た。
このあとはクロードが面白い場所へ
案内してくれるらしい。
僕とクロウくんは彼の後ろに付いていく。
クロード、
面白い場所ってどこなの?
行けば分かります。
クロードはニヤニヤするだけで
それ以上は何も答えてくれなかった。
すごく気になるなぁ……。
クロウくんは何だと思う?
さぁ、僕にも分かりません。
でも温泉に付随する娯楽といえば、
卓球や射的などが定番だと
聞いたことがあります。
ふーん、そうなんだ?
卓球に射的かぁ。
確かにそれならどちらも面白そうだなぁ。
でも遊ぶのならカレンたちも呼べばいいのに。
みんな揃っている方が絶対に楽しいもん。
あ、ほかにも思い当たることが
ありました。
え? なぁに?
食べ物ですよ。
温泉の熱を利用して作る
温泉たまごや温泉まんじゅうが
温泉地の定番の名物なんです。
へぇ、それは美味しそうだね。
ただ、地域によっては
温泉を使わないものも
あるらしいですけど。
クロウくんは色々なことを
よく知ってるね?
はい、ご主人様のお使いで、
魔界や平界の各地を
旅していますので。
そういえば、クロウくんって
年齢はいくつなの?
583歳です。
えぇっ!?
僕たちの中で最年長だったんだ!
今まで失礼な話し方をしてしまって
ごめんなさい。
気にしないでください。
今後も今まで通りで構いません。
魔族の年齢差なんて
あってないようなものですから。
う、うん……。
クロウくんがそう言ってくれて
少しだけホッとした。
さすが年上なだけあって心が広い。
でもまさか一番年下に見えた彼が
最年長だったとはね……。
その後、僕たちは母屋の2階にある
大きな部屋へ通された。
そこには温泉からあがった人たちが
飲み物を飲んだり会話をしたり、
ゲームをしたりしてくつろいでいる。
僕たちのところにも店員さんがすぐに
冷たいお茶を持ってきてくれた。
よく冷えていてすごく美味しい。
どうです?
ここなら約束の時間まで
ゆっくり過ごせるでしょう?
そうだね。
僕は冷たい飲み物でも飲んで
涼むことにします。
窓から涼しくて気持ちいい風が
入ってきてますし。
あ、僕もそうしようっと♪
それはそれでよいのですが、
その前にあちらで少し
楽しみませんか?
クロードは部屋の奥の方を指差した。
そちらを見てみると
なぜか大勢の人が集まっていて、
床に顔を近付けてニヤニヤしている。
みんな何をしているのだろう?
何かあるの?
はい、実はこの部屋の下は
女風呂になっているんです。
床に穴が開けられていまして、
覗くことができるのですよ。
んごっ!? ――げほっ、げほっ!
ぶはっ!
クロードの放った想定外の言葉に、
僕は飲みかけのお茶が
気管に入りそうになってむせてしまった。
クロウくんはお茶を吹き出しちゃってるし。
な、ななななっ!?
ご安心ください。
女性は覗かれているのを承知の上で
肌を見せているのですよ。
ホントなのっ?
はい、それが嫌な女性は
覗かれないお風呂を
選択していますので。
よく確認してみると、
確かにこの部屋にいるのは全員男性だった。
そうか、床に顔を近付けている人たちは
みんな下のお風呂を覗いていたのか……。
だ、だめだよっ!
いくら承知の上でも
そんなことをするなんてっ!
真面目ですねぇ、トーヤは。
でも少しは興味あるでしょう?
男の子なんですから。
興味のあるなしじゃないよ!
クロウ様はどうですか?
……まぁ、覗くだけなら。
見ても減るもんじゃないですしね。
合法的な覗きですし。
っ!? クロウくんまでっ?
なんでそんなことをしようとするの!?
ダメだよ、合法的で相手が承知の上でも
倫理的にやっちゃいけないことはある!
それにもしカレンたちが
このことを知ったらきっと悲しむよ。
僕は彼女たちの気持ちを裏切ることなんて
絶対にしたくない。
もしかしたら、
カレン様たちが
いるかもしれませんよ?
それならなおさら、
見ちゃダメだよ!
そこまで言うなら
これ以上の無理強いはしません。
クロウ様、行きましょう。
はい。
…………。
ふたりは覗き穴のある方へ行ってしまった。
僕はひとり、その場に取り残される。
ちょっとだけ寂しい気持ちになる。
……僕は間違った判断をしたのだろうか?
ううん、そんなことはない。
あれはやっちゃいけないことだと思う。
だからやらない。
僕は窓の前に移動し、涼しい風に当たった。
そして黄昏時の空を眺めて
時間を潰したのだった。
次回へ続く!