東條 夕日

なあ鑑識のじいさん。館長の遺体から、薬物反応は出なかったんだよな?

鑑識結果の紙を投げ捨て、俺は核心へと迫る。

鑑識

ああそうじゃ。じゃから、毒薬などを飲ませることも出来なく、アリバイのある秘書さんは容疑者から外れたんじゃよ

東條 夕日

でも、だったらおかしくないか?

生徒会長

一体何がおかしいって言うのよ

東條 夕日

だって考えてもみろよ。館長の遺体から薬物反応が出なかったってことは、心臓病の薬も出なかったってことになるぞ

姫宮 愛沙

確かに!?

神嶋 伸也

でも館長は薬を飲んだんだろう?

東條 夕日

ああ。だからさ、館長が飲んだ薬は偽物だったんだよ

生徒会長

そんな事が!?

東條 夕日

心臓病の薬はカプセル状の物。だったら、その中に小麦粉や片栗粉なんかを入れていたとしたら。薬の効果が表れないんだから、当然館長の心臓は持病を発症させるだろう

姫宮 愛沙

でもさ、さすがにそんなの飲んだら館長も気付くんじゃない?

東條 夕日

普通ならな。だけど、今日は不運にも館長は三度も殴られ、少しの間だとしても気絶していた。だとしたら、そのことを伝えることが出来ないまま、心臓麻痺が起こる可能性だってある。だったらその時間にアリバイがあり、館長に薬を渡した秘書の草野、あんたが一番怪しいんだがな

草野 志保(秘書)

そんな!? だから私はやってないって言ってるじゃないですか!!

佐藤 立夏

ふははっは!!
我の思った通りだ!!

小柳 真

だが東條、その事実をどうやったら証明できる?

東條 夕日

まず左腕のダイイングメッセージだが、おそらくあれは『草野』と書こうとしたのだろう

小柳 真

左手で書いた意味は?

東條 夕日

それは……偶然だ

小柳 真

不安だな。それで、証拠はあるのか?

東條 夕日

そんなの簡単だ。おい鑑識のじいさん、さっき見つけた館長の薬を調べてくれ

鑑識

いやまあ、それなら見つけた後とっくに調べて結果も出ておるんじゃが……

生徒会長

ちょっと! だったら何でもっと早く言わないのよ!?

鑑識

当然じゃろ! 結果は全く問題なしの、館長の心臓病の薬だったんじゃからな。もちろん館長に薬を処方していた医師にも確認済みじゃ

東條 夕日

なんだと!? それは信じられるんだろうな!?

鑑識

もちろんじゃよ

姫宮 愛沙

ちょっと、あんたの推理点で駄目じゃない

姫宮 愛沙

新人君、ドンマイ

ホワイト

ワンワンワンワンワン!

姫宮 愛沙

あ、待ってホワイト

部屋を飛び出したホワイトを追って、姫宮も部屋の外へ走って行った。

草野 志保(秘書)

だから言ってますよね、私はやってないって!!

矢野 樹理

だけど夕日くん、着眼点は間違ってないよ。君は一つ、犯人の誤算を考慮し忘れているんだ

東條 夕日

犯人の誤算?

小柳 真

もしお前が今の通りに館長を殺害した犯人だったとしたら、偽の薬をそのまま放っておくか?

東條 夕日

そんな訳ないだろう。ばれないように本物の薬とすり替えるに決まっている

矢野 樹理

じゃあ誰がそんな事できたと思う?

東條 夕日

そもそも館長の心臓病のことを知っていたのが三船と秘書だろ?

小柳 真

いや、もう一人いるぞ

矢野 樹理

山岸さんも本当は知ってたよね?

小柳 真

館長を殴った時間を証言した時に、薬を根拠にしていただろ

山岸 努

ばれてたんだね。そうだよ、僕も三船さんと同じように、館長と秘書さんが話しているのを聞いたんだ。きちんと時間を守って十一時半に飲んでくれって

佐藤 立夏

ふははっは!!
我もとっくに気付いていたさ!

東條 夕日

だが、この三人から絞ることなんて出来るのか?

小柳 真

全ての鍵は、三船さんが握っているさ

矢野 樹理

三船さんの行動こそが、犯人の誤算だったんだよ

東條 夕日

三船の行動……

俺は真相に気付くために、もう一度深い思考に集中するのだった。

* * * * *

こんにちは。ご覧いただきありがとうございます。

ミス研のメンバーの話し合いを聞くと、すでに犯人に気付いているようでしたね。

読者さんの中にも、とっくにお気付きの方がいることでしょう。

しかし、犯行を否定する犯人を追い詰めるには、決定的な証拠が必要となります。彼らは、その鍵が三船さんにあると言っていましたが、果たして……

それでは、今回はこの辺りで失礼します。

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