ーークラウンウラヌス・????

アルト

みぎゃっ!?

ルナ

ふにゃあ!?

俺はワープになにか因縁でもあるのだろうか…ワープホールから投げ出された俺達は、綺麗な庭園のようなところにいた。綺麗に刈り整えられた緑の芝生が、アンティーク調の白い噴水をよく引き立てていて、奥に見える花壇には、青と白の見たこともない花が植えられていた。その光景はすごく神秘的で、現実離れしていて…しかし、

貴様…何者です?

首元に当てられた冷たい金属が、俺を一気に現実へ連れ戻した。

アルト

ぎゃああああああ!?!?!?

ルナ

いやああああああ!?!?アルトおおおお!!!

騒がしいですね。野党ならもう少し静かに行動を起こすべきでは?

アルト

や、野党…!?違う!!俺たちは全っ然怪しいものじゃ…!!

怪しいものが自ら怪しいものと名乗るわけがないですからね。ですが、一応お聞きしましょう。狙ったように目の前に移動魔法で現れた他種族を、怪しいものではないと証明できるのなら…是非していただきたいものです

ルナ

ただ移動魔法でここに来たってだけじゃない!!そ、それだけで怪しいもの扱いってちょっと酷いんじゃないかしら!?

言われてみればそうだ…ルナが泣きそうな声で反論すると、男は剣を一旦引いて左手を口元に当てた。

確かに、そうですね…移動魔法なんて、しょっちゅう使うものでなくとも、イマガイの民なら、ここに来るのに必要な足ですし…

ルナ

そ、そうよ…!私達はただ、アガトって人に用があってーー

やっぱり怪しいですね

ルナ

なんで!?

男は警戒体勢に戻り、剣をもう1度俺たちに向けて構えた…嘘だろ…

ここがどこか、まさかご存知ない訳では無いでしょう?アガトに用があるとすれば尚更、です

ルナ

こ、ここ…?

アルト

いや、その…俺たち、クラヌスに来るのは初めてで…

その言葉も信用なりませんね…いいでしょう、教えて差し上げます。ここはクラヌスの一大都市、スカイライン…それを治める王、アガト・カミエルの居城…ここまで言えば、もうお分かりでしょう?

ルナ

え…まさか…

アルト

ここは…スカイラインの…?

俺とルナは顔を真っ青にしてお互いを見つめた…。

アルト

なんてとこにワープしてんだバカあああああ!!!

ルナ

ししししらなかったのよしょうがないじゃない!!!ワープした結果たまたまここに着いちゃっただけなのよ!!!

まだとぼけますか…正直、今すぐにでも切ってしまいたいところですが、決まりですからね。処遇は我が主よりーー

騒がしいと思って来てみれば…どういう事だ、ルーク

聞き覚えのある声が聞こえた…ルークと呼ばれた天族の背後を見ると、そこには…

侵入者は拘束し次第、脅す前に速やかに報告しろと…何度も言っているはずーー

アルト

アルマ!!

ルナ

アルマ!!

ルーク

………は?

アルマがいた…見間違いようがない、アルマだ…でもどうしてここに…?シルフもそばにいないみたいだし…なんて俺達が混乱していると、アルマは大きなため息を一つつき、機嫌が悪そうに言った。

似ているのは認める…だが、僕をあの愚兄と同じにしないでほしい…不快だ

ルナ

ぐ、愚兄…?ってことは……

アガト

僕はアガト。スカイラインを治める王だ

アルト

き、君が…

ルーク

王に向かって君とは…失礼ですよ。処しますか?

アルト

ひっ…!

アガト

ルーク、剣を収めろ。僕は気にしない…それに、奴のことを知っているとなると…

アガトはその場から踵を返し、俺たちについて来るように促した…えっと…?

アルト

ど、どこに…?

ルナ

あたしたち、不敬罪で牢屋に入れられちゃうんじゃ…

アルト

そ、そんな…!!

アガト

違う。ルーク、どんな脅し方をしたんだ?こんなに怯えさせるなんて…

ルーク

どう見たって不審者でしょう?知らないふりも甚だしかったので、首を刎ねようと…

アガト

おまえはそれだから…いいかルーク。冷静になって考えてみれば分かることだろう?妖精と人間という半ばありえない組み合わせ、前回のスコアゲームの時期…奴のことを知っている…

ルーク

最後の情報はアガトがここに来てから知りました

アガト

それにしたってだ…大方、それを聞く前に脅したんだろう

ルーク

う…

アガト

お前、スコアホルダーだろう?目的はわかってる。ついてこい

アルト

は、はい……

ルークは不服そうな顔をしていたが、アガトは気にする様子も見せず進んで行き、俺達は遅れないように、一定の距離を置いて二人について行った……。

ーークラヌス・希望神殿前

アルト

ここが希望神殿…

ルナ

うふふ、お疲れ様、悪魔さん♪ちゃんと案内できたわね♪♪

シルフ

…………

シルフ

……大丈夫…まだ、まだ逃げられる…アルトもルナも戦闘慣れしてないし、隙だらけだ…だから、隙を見て仕掛ければ…アルマを取り戻して、すぐにワープで…!

じゃあ、もうお前に用はねえ

シルフ

は…!?

アミス

じゃあな

アミス

ギフト・ギフト

シルフ

っぐ…!!

シルフ

しまっ…!!

シルフ

う……

アルマ

シルフ!!

アミス

ククククッ!!面白い具合に上手くいったな、テナ♪

テナ

ええ、そうね…いくら頭が回る魔族でも、不測の事態には弱いってことかしら

シルフ

こいつら…!

アルマ

シルフ、シルフ!!

シルフ

…アルマ……

アミス

お前は優しいなぁ…いや、薄情と言った方がいいか?

シルフ

体が…動かない…意識も、なんだか…ふわふわ、して……

アルマ

シルフ…嫌だ…お願い、起きて…!シルフ…!!

アミス

なあ、奏者アルマ?そいつを助けたいか?

アルマ

……たい……たす、けて…お願い!!

アミス

うんうん、そうか。でも悪いな、今すぐってのは無理だ。ソイツは欲にまみれすぎてる…今ここで助けたら、テナの願いが叶わないんだよ

シルフ

こいつ、なにを……

アルマ

……何をすれば、いい…?

シルフ

ある、ま…!

アミス

そうそう、そう来なくっちゃ…テナの願いを叶えてくれよ。そうすれば、それに敬意を示し、事が済んだあとでお前の願いも叶えてやろう。そこの悪魔を助けたいって願いをさ?

アルマ

………本当に…?

アミス

ああ、本当だ

シルフ

だめだ…うそだ、そんな、の…あるま……い、くな…

アルマ

わかった…

シルフ

あるま…やめ、ろ…やめて、くれ…!

アミス

ククククッ…それじゃあ、行こうか?奏者アルマ

アルマ

…………

シルフ

いくな…ある…ま…いく、………な……

アルマ

もう少し、頑張ってね…すぐ、助けるから…

シルフ

ある…………

ーークラヌス・希望神殿に続く森

アルト

…あの、ずっと気になってたんですけど…

アガト

なんだ

アルト

アガトさんとアルマって、なんでそんなに仲悪……

アガト

ここでゲームを終わらせたいか?

アルト

すすすすみませんなんでもありません!!!!

俺達はアガトさんに先導され、ほとんど道がない森の中を歩いていた…うん、これは案内人がいなきゃ迷う…。

ルーク

スコアホルダー、アガトに王子の話題は禁句です。かつて機嫌が悪いアガトの前で口を滑らせ、瀕死まで追い込まれた家臣もいますので、お気をつけください

ルナ

そ、そんなに…!?

アガト

その話は今しなくていい…目的地がそろそろ見えてくる頃だ。心構えはできているか

アルト

は…はい…

アルマと全く同じ声のはずなのに、彼にはない威圧感で思わず返事が吃ってしまう。そんな俺を呆れたような顔で一瞥し、アガトさんはすぐに前方へと視線を戻した。

ルーク

……あれでもプレッシャーなんですよ

アルト

え?

少し距離を置いて歩いていたルークさんが、耳打ちのような小さな声で言った。

ルーク

彼、王子とほとんど同じ見た目でしょう?王子は、今や忌避すべき魔族の手を取り、あのような最期を迎えました…王子は天族の恥なのですよ

アルト

恥……

ルナ

もしかして、初めてアルマにあった時、アンデッドとして追われてたのは…

ルーク

先王のロディ殿下が仕向けたのでしょうね…あの方は、アガトがあの容姿で生まれたことを『呪い』と称したほど、王子のことを嫌っておられますから

アルト

実の父親なのに?

ルーク

ええ

ルナ

そんなの…まるで、子どもより家の方が大事みたいじゃない!

ルナが言うと、ルークさんは困ったような笑顔を浮かべ、ゆっくりと首を振った。

ルーク

残念ながら、それが王家の『普通』なのですよ

ルナ

ひどい……

ルーク

………ええ、本当に…

アガト

ルーク

ルーク

はいはい、言いすぎましたよ。もう黙ってーー

アガト

違う…なんだ、あれは

アガトさんの視線を追うと、そこには大きな神殿のようなものがあり、そのさらに前で、誰かが倒れて蹲っていた…

ルナ

シルフ!!

いち早くその正体を捉えたルナが、急いでその人ーーシルフの許に飛んでいった。俺は反射的にその後を追い、倒れたシルフの顔をのぞき込む…元々色白だった顔色がさらに悪くなっていて、まるで死人のようだった…。

アルト

シルフ!シルフ!!おい、どうしたんだよ!!

ルナ

アルト、むやみに揺すっちゃダメ!!ええっと…ここはとりあえず…!!

ルーク

キュアー・ケルト!!

少し遅れて来たルークさんが唱えると、シルフの顔色がほんの少しだけ良くなった…ルークさんはそのまま俺の隣にしゃがみ、シルフの首に手を当てた。

ルーク

……脈も呼吸も安定していませんね…それに、多少筋肉の硬直もみられます…毒でも仕掛けられたのでしょう

ルナ

毒…?でも、誰に?シルフはアルマと一緒だったはず…その他には誰も…

アルト

そう、だよな………待て、アルマは…?

慌ててあたりを見回すが、アルマの姿はどこにも見られない…本当に何があったって言うんだ…!

ルーク

シルフと王子は一緒にいて…でも、今はこの状態で……そうですか…スコアホルダー、これは私がなんとかしますから、先に行ってください。急いだ方がいいですよ

アルト

え…でも…!

ルーク

あのシルフが不意打ち以外で毒を食らうとは思えない…しかも、王子を助ける暇もないほど強い毒を…恐らく、上級の毒魔法でも受けたのでしょう…そして、近くに王子がいない…ロディ殿下に捕えられた線もありますが、彼の部下に毒魔法の使い手がいない上、普段侵入を許されていない希望神殿に部下を派遣するのは現実的ではありません…ここまで言えば分かりますね?

ルナ

もう1人のスコアホルダーが、アルマを…?

アルト

……テナ…!

もしそうなら…あいつが既に、アルマと希望神殿の中に入っていたら…!途端に焦燥に駆られ、俺は希望神殿を見上げた。すぐに追わなきゃ、願いを叶える権利が取られてしまう…でも…

ルーク

何をしているのです?早く行きなさい!

ルークさんに鼓舞され、俺はシルフを彼に任せ、走り出ーー

そうと、した

グランド・クラフト

アルト

うわっ!?

突如せり出した石柱に道を阻まれ、そのまま尻餅をついてしまった…!

ルナ

うわわわ!?な、何よ!?

間一髪止まることが出来たルナに、石柱の第二波が迫る!!

ルナ

きゃああああ!?ちょ!!や、やめてこないでええええ!!!

ルーク

ーーっ!!

逃げ回るルナを追うような形でせり出てきていた石柱が止まり、そこで俺は初めて状況を把握したーー正直、それでも何が起きているのか、分からなかったーー。

シルフ

……す、か……

アルト

し、るふ…?

先程まで気を失っていたはずのシルフが、ルークさんに拘束されていた…

ルーク

シルフ!!何やってるんですか!!

ルナ

い、今の、シルフが…?どうして…?

アルト

わ、わかんねえ…でも、なんか…

動きを封じられていてもなお俺たちに向けられたその目は、敵意に満ちていた…一昨日までの彼からは、想像出来ないほど、恐ろしい目をしていた…。

シルフ

はなせ

ルーク

シルフ、落ち着きなさい!こんなことをして、一体何になるというのです?

シルフ

頼む、ルーク

ルーク

聞きなさいシルフ!!

シルフ

はなせ

ルーク

あなた、いい加減に…!!

シルフ

うるさい…邪魔だ

ルーク

っ!!

シルフは固められた右腕を無理やりねじ曲げ、ルークさんの拘束を逃れた…ゴキ、と嫌な音がして、使い物にならなくなった右腕を力なく垂らし、シルフは魔法を詠唱した…標的はーー

シルフ

カタストロフレイム

アガト

っ!!

ルーク

アガト!!

アルト

アガトさん!!

ルナ

危ない!!

巨大な火球が四散し、離れたところに待機していたアガトさん目掛けて飛んでいく…!ルークさんがすぐ助けに向かうが、間に合わない…!!

ルーク

アイス・ルーチェ!!

足じゃ間に合わないことを悟ったルークさんは、アガトさんの前に光の壁を出現させた…火球の破片がそれに当たると、凄まじい蒸発音と共に消滅していった…

アルト

か、間一髪…!

ルナ

大丈夫かしら…

シルフ

他人の心配、してる暇あると思ってんの

アルト

うわっ!!

背後から声がし、慌てて前に飛び出すと、さっきまで俺がいたところで横薙ぎに剣が振られた…あのまま突っ立ってたら、今頃…!

ルナ

シルフ!!ちょっと何すんのよ!!危ないでしょ!?

シルフ

巻き添えくらいたくないんなら、どっかいってよ…殺さなきゃいけないのは、アルトだけだから…

アルト

な、何言って…!

ルナ

落ち着きなさいよ!!何があったか知らないけど、とにかくあんた安静にしてないと…!

シルフ

邪魔。一緒に死ね

ルナ

なんで!!!

アイツ右腕使えないのに…!!治癒魔法を使う余裕が無いほど錯乱しているのか、シルフは左手一本で猛攻を仕掛けてくる…毒の影響もあってか、少しずつ動きに鈍りが見えてくるが、それでも俺たちだけじゃ対処できない…!

ルーク

ハングド・サイレンス!!

シルフ

っ!!

アルト

ルークさん!!

ルーク

スコアホルダー、私はアガトを安全なところへ移します!!すぐに戻りますから、魔法が効いているうちに希望神殿に入りなさい!!

それだけ言い残すと、ルークさんはアガトさんを連れて森の奥へ消えていった…まだ捕縛魔法の範囲内にいるらしい…しかし、距離が離れていっているせいか、捕縛の光は徐々に薄れていく…

ルナ

アルト、早く希望神殿に!!

アルト

あ、ああ…

迷っている暇はない…今はとにかくあの中に!!
俺達は、希望神殿の入口へと全力で走った…そしてーー!

アルト

間に合えーー!!

アルト

うわああっ!?

ルナ

きゃあああ!?

突如、入口を大火が覆った…どうして…?シルフは今、魔法を封じられているはずなのに…!!

シルフ

残念。ここで終わりだよ、アルト

振り返ると、捕縛魔法が完全に解けたシルフが、そこに立っていた…

シルフ

俺、魔族だからさ。頭はキレる方なんだよ…ルークから何かしら妨害されることも読んでたし、その隙にお前らが動くことも読んでた

アルト

そんな…でも、なんで…?捕縛魔法はしっかり効いてたのに…!

シルフ

ルークはいつもそうなんだ。ツメが甘い…一つヒントをあげるなら……

シルフ

カタストロフレイムには、こんな使い方もあるんですよ…ってね?

ルナ

カタストロフレイム…さっきの…!

四散して飛んでいった火球…その一つが、ここに…!?

シルフ

ルークが帰ってくると面倒だから…ね?死んでよ、アルト

ルナ

アルト!!!

シルフがすっかり治癒した右手で剣を構えている…俺じゃシルフには敵わない…それは明確だ。でも、戦わないならどうすればいい…!?

アルト

俺は…!

A.逃げる
B.説得する
C.戦う

ボタンを押してください。それぞれの展開に飛びます。

こんなの勝ち目なんてあるわけない・・・逃げる

話くらい聞いてくれるかもしれない・・・説得する

こうなったらやるしかない・・・戦う

第八楽章 シルフ、希う

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