ーー説得…そうだ、説得！！さっきより落ち着いているみたいだし、今なら話を聞いてくれるかもしれない…そうじゃなくても、ルークさんが戻ってくるまで耐え切れれば…！！
ーー説得…そうだ、説得！！さっきより落ち着いているみたいだし、今なら話を聞いてくれるかもしれない…そうじゃなくても、ルークさんが戻ってくるまで耐え切れれば…！！
シルフ！！ちょ、ちょっと、待って…！！
…………
シルフは…その、やっぱり願いがあるの！？
……願い？
かかった…！！
そう、願い！！俺は、意識不明になった友達を助けたくて…シルフにも、そういう願いがあって、アルマのことを守ってるのかなって…
そういえば…奏者を守りきることで、番人は願いを叶えてもらえるのよね…どうなの？シルフ
………願い…俺は…
シルフは少し伏し目がちになって考え始める…そう、こうして、ちょっとでも時間を稼いで、ルークさんと合流できれば…！！
……違えよ
何かが通り過ぎる音がした。次の瞬間には、真横を飛んでいたルナが真っ二つになっていた…
あ……？
ルナぁ！！
アルマは…願いを叶える道具じゃねえ…
刀身についた血液を振り払うこともせず、シルフは切っ先をそのまま俺に向けた…背後は炎の壁になっていて…逃げられない…
し、シルフ…！待って…お願い…！
………でもさ、そうだな。俺も、ちょっとだけ、そう思ってたのかもしれないな…
あ、ああ…
アルマを守れればそれでいいってーー
切っ先はジリジリと俺の首との距離を詰め、小さく皮膚を裂いて、そこで止まっ
そう思ってたはずなのに…な
加速した切っ先は、俺の喉を貫いた…呼吸ができなくて、けつえきが、ふきだしてくる…
ーーーー！！！！
こえにならない、ひめいが…くちから、もれて…いたい…いたい、くるしい…いたい、いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたーー
……あ、ごめん…急所外しちった
でも、こうして何度も刺してれば死ぬよな
アルマもそうだったんだ…グチャグチャになるまで、たくさん刺されたんだ
人間はいいよな。痛くて苦しすぎたら、気絶できるもんな
いいな。そんなこと、魔族や天族は出来ねえのに
気絶できたら、アルマも少しは楽にーー
ーーーああ…
はっ……はっ……
………ルーク…
シルフ…あなた…
………おせえよ
………っ！！
……気絶する間なんて、与えませんよ…
…………
…………ひどい有様だ
ーーこうして、アルトのスコアゲームは、幕を閉じた…
ーー希望神殿内部
これが、奏者の本体…？
願いの間にたどり着いた私は、すぐに奏者にトドメをさした。既に死んでいて情なんてなかったし、あの悪魔のことを引き合いに出したら抵抗もしなくなったから、すごく簡単だった。
おめでとう、テナ…俺は信じていたよ。君がきっと願いを叶えてくれるって
さっきまでしきりに背後を心配していたのは何だったのかしら？
保険だよ保険…万が一でも、あの悪魔が解毒しちゃって、こっちにつっこんできたら…ねえ？
……はぁ…想像したくないわ…
奏者の心臓部から取り出した小箱を観察しながら、私は適当に返した…これは…オルゴールのようね。どこかにネジ巻きがついているのかしら…？
テナ？
何でもないわ。ネジ巻きが見つからないだけ
そんなもの必要ないさ。スコアの上に、そのオルゴールを乗せて…今まで通り、やってご覧？
……ええ
アミスに言われた通り、スコアの上にオルゴールを置いて、バトンを一振り…すると…
スコアから集めた音が溢れ出し、ひとつ残らず小箱に収まっていく…ことの盛大さに合わない、優しいオルゴールの音は、紛れもなく完成したスコアのものだった…。
……キレイ…
ああ…そうだね、テナ…
緒兎にも、見せてあげたいな…なんて…ああ、そうだ…これが終われば、きっと…すぐに…
オルゴール音がなり止み、あたりは静寂に包まれた…あの口達者なアミスでさえ何も言葉を発さなかった。何も起こらないじゃないか、と、アミスに抗議しようと口を開きかけた…その時だった。
どこからとも無く鈴の音が聞こえ、私達は慌ててあたりを見回した…一体どこから…
スコアホルダー・テナ
名前を呼ばれ、視線を前方に戻す…すると、そこには…
………お、と…？
死んだはずの弟…緒兎が、何事も無かったかのように、そこに立っていた…
緒兎…なの…？
残念ながら、違う
私はK…このスコアゲームの主催者だ
あなたが…
主催者…ということは…あなたは、アミスが言っていた…？アミス、なぜあなたが知らないの？
今まで声だけだったからさ…姿を拝むのは初めてでね…それより、驚いたなぁ…まさか、神様がこんなにテナにソックリなんて…
？何を…
私と緒兎はそんなに似ているだろうか…？というか、なぜ神が緒兎とソックリな見た目をしているのか…
……私の姿は、人により見え方が異なる…スコアホルダー・テナ。お前がその時一番思った者の姿で、私は見えているはずだ
…そう…そういう事なの…
ふうん…なるほど♪
確かに、私は今緒兎のことを思った…だから、神の姿が緒兎に…紛らわしい…
スコアホルダー・テナ。早速だが、お前はこのスコアゲームを制し、勝利した。約束通り、願いを一つだけ叶えてやろう
私の願い…
そんなの、一つに決まっている…
弟を……緒兎を、生き返らせて
………それが、お前の願いか
ええ
………その願い、確かに聞き届けた…スコアホルダー・テナ、お前がネイチャーカオスに戻れば、この願いは成就する。お前は、お前が望んだものを手に入れるだろう…
……はい
…アミス
はい
よく、ここまで彼女を導いた…長い旅路、ご苦労だった
誠に、光栄の極みでございます…我らが創造神
スコアホルダー・テナ。これからお前をネイチャーカオスに送り届ける…ここで、やり残した事はないか？
ええ。何も無いわ
サバサバしてるなぁ…彼らに挨拶していかないのかい？
ええ…イマガイに来る前にしたもの。何度も必要ないわ
そうかい
……アミス
うん？
……ここまで、ありがとう
………なんだ、らしくないじゃないか
私だって、お礼くらい言えるわ…あなたがいてくれて、よかった
……元気でな
……あなたも
……では、転送を開始する
体がふわりと浮き上がり、光の粒子で包まれる…暖かい…なんだか、眠くなってくる…
……テナ！！
アミスの声が聞こえて、私の意識は途切れたーー
ーーらしくないのは、どっちの方よ…
ーーテナの家・自室
……ん…
いつの間にか眠っていたらしい…モソモソとベッドから起き上がり、枕元の時計を見る…
4時…？やだ、もう緒兎が帰ってくる時間だわ…
慌てて部屋を出ると、寝癖がたっていないかを確かめるために洗面所に向かった。寝起きのような火照った顔をしていたが、不思議と寝癖はたっていなかった。
結構長い夢を見てた気がするんだけど…寝た時間はそんなでも無かったのかしら…？
不思議に思ってしばらく鏡を見ていると、玄関の鍵が開く音がした。
ただいまー！ねーちゃーん！！お腹減ったー！！今日の晩御飯なにー？
緒兎、おかえーー
…？
ただいま、ねーちゃ…ん…？え！なになに！？どうしたのねーちゃん！？
緒兎の声を聞いたら、なぜか、涙が溢れてきた…それに、なんかだか久しぶりに聞いた気がして…どうして…？止まらない…！
ねーちゃん…？何かあったの？学校で辛いことあった…？
…ううん…なにも、何も無いよ…どうしてか、お姉ちゃんにも分からないの…
ふええ…ど、どうしよう…
大丈夫、ちょっとしたら落ち着くから…ね…
う、うん…
とにかく、落ち着かなきゃ…でも、これだけは言わなきゃ…いつも言っているはずなのに、どうしても言わなきゃいけない気がしたーー。
おかえりなさい、緒兎ーー
テナ、冀望を取り戻す
・・・・・・ほかの結末、見てみたい？
