僕はすぐに調薬へ取りかかることにする。

取り扱いを間違えると危険だけど、
急がないと作戦に入る前にやられてしまう。
急ぎつつ慎重に……。
 
 

トーヤ

ライカさん、
毒を作るのを手伝ってください。

ライカ

はいっ!

カレン

じゃ、その間の結界魔法は
また私が担当するわ。

 
 
そう言って、カレンが再び結界魔法を張った。

こうして手の空いたライカさんは、
僕と一緒に調薬の準備をしていく。


程なく目の前には必要最低限の道具が揃う。
 
 

 
 

トーヤ

よし、これで調薬ができる。

ライカ

でもこの材料では
モンスターを倒せるほどの
毒なんてできそうにありませんが?

トーヤ

いえ、大丈夫です。
特定の成分を組み合わせることで、
毒の効力を強めることが
できるんですよ。

ライカ

あ、相互作用のことですね?

トーヤ

はい。逆に効力を
弱めてしまう組み合わせも
ありますけどね。

クロード

へぇ、そんなことが
あるんですねぇ。

トーヤ

ライカさんはトンデメタンを
調薬してください。
僕はホイサンを調薬します。

 
 
どちらの薬も調薬はそんなに難しくないし、
広く一般に知られている薬だ。

だからライカさんなら調薬ができるはず。


ただ、ホイサンは体質によって
皮膚に触れると炎症を起こす可能性があるので
僕が調薬することにする。


ライカさんみたいな美人さんに
万が一のことがあったら大変だもん。
 
 

ライカ

その組み合わせって
毒になるのですか?
どちらも単独では
毒ではありませんけど?

トーヤ

これを混ぜることによって
反応が起きるんですよ。
それで発生する気体が
猛毒なんです。

ライカ

へぇ~。知りませんでした。
どこでそんな知識を?

トーヤ

故郷の隠れ里にいた時、
師匠から教わったんです。

ライカ

その方、ただ者ではないような
気がしますけど。
シンディ先生ですら、
薬同士の組み合わせまでは
把握していないかもしれません。

トーヤ

僕自身も詳しい素性は知りません。

トーヤ

隠れ里は過去に色々あった人が
流れ着いて住んでいる場所なので、
過去を聞かないのが
暗黙のルールなんです。

トーヤ

それよりも早く
調薬をしてしまいましょう。

ライカ

はいっ!

 
 
僕たちは調薬を始めた。

一方、その間にもモンスターは結界に向かって
何度も攻撃を仕掛けてくる。


でもクロードがナイフで牽制してくれているし、
結界も効果が出ているので防げている。
ただ、いつまでも無事で済むとは限らない。

だから急がないと……。



僕は手早く調薬を成功させた。
ライカさんもほぼ同じタイミングで
完成したみたい。
 
 

トンデメタン

ホイサン

 
 

トーヤ

ライカさん、
トンデメタンを僕に。

ライカ

はい。

 
 
ライカさんからトンデメタンの入った
瓶を受け取った。

その瓶と僕が作ったホイサンの入った瓶を持ち、
クロードへ視線を向ける。
 
 

トーヤ

クロード、準備できたよ。
あの魔法道具をライカさんへ。

クロード

承知しました。

トーヤ

あと、クロードには
魔法力を回復させる薬を
渡しておくね。
状況に応じて使って。

クロード

お任せください、
トーヤ様――いえ、トーヤ。
では、ナイフはお返しますね。

トーヤ

うんっ!

 
 

 
 
クロードはナイフを鞘に収め、
僕の腰に差してくれた。


そのあと、結界を作り出すロッドを
ライカさんに手渡し、使い方の説明をする。

それが終わると、ライカさんは結界を張った。


――いよいよ作戦を決行する時だ。
 
 

カレン

トーヤ、気をつけてね。

トーヤ

分かってる。

クロード

結界を出たら中には戻れません。
万が一の時でも壁に穴を開けて
毒を外へ拡散させてからでないと
助けにいけません。

トーヤ

覚悟の上だよ。

クロード

どうかご無事で。

 
 
僕は右手にトンデメタンの瓶、
左手にホイサンの瓶を持った。


そして意を決して結界を出ると同時に、
2つの薬を混ぜ合わせる。

すると途端に熱が発生し、気体が発生し始める。


――どうかうまくいってくれ!
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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