東條 夕日

まだ白雪さんが犯人と決めつけるのは早いんじゃないか?

俺は小柳の問いにそう答えた。

姫宮 愛沙

どうして? 彼女は自分で犯人だって言ってるんだよ?

東條 夕日

まず最初に、鑑識によれば被害者の打撲痕は頭の前と後ろそれぞれにあるはず。しかし白雪さんの証言通り、「後ろから殴った後すぐに逃げた」のでは、彼女は後頭部にしか傷を負わせていないということになる。白雪さん、あなたは館長が死亡したのを確認したのではないんですよね?

白雪 星香

ええ、そうよ。じゃあ何?
私が館長を殴った後、誰かが館長の前頭部を殴って殺したって言うの?

東條 夕日

あるいは誰かが前頭部を殴った後に、あなたが後頭部を殴り館長を殺したか。いずれにしても、館長を殴った人間が他にもいるということだ

生徒会長

ねえ、あなたが館長を襲った時、その剣に血が付いていたかどうか覚えてないの? もしその時すでに血が付いていたなら、その前に誰かが殴ったって分かるんじゃない?

白雪 星香

それが、残念なことにあの剣は元々血のりのコーティングをしていたから、私があの部屋に剣を置いた時から、見た目には血が付いていたように見えたはずよ。だから、私が持った時に付いていたのが血のりなのか館長の血なのかは分からないわ

第三の親

確かに、模造品の剣には館長の血液とともに、血のりも混じっておったのぅ

矢野 樹理

ひゃっ、誰!?

鑑識

やあ、わしじゃよ。

渋谷

おや、鑑識さん。まだこちらに残っていたんですね

鑑識

ああ、ここでできる簡単な調べは済んで、仮眠室で横になっておったんじゃがな、癖っ毛の少年に、自分が使うからと追い出されてしまってな。ぶらぶら歩いておったら知らん声が聞こえたんで来てみたんじゃ

小柳 真

神嶋のやつだな。それにしてもちょうど良かった。おい、鑑識のじいさん。事件現場の足跡や争った形跡、凶器の指紋なんかの詳しい説明も聞きたいんだが、お願いできるか?

鑑識

いいじゃろう。現場に争った形跡はなかったよ。おそらく不意打ちでやられたんじゃろう。じゃがその部屋にまとめてあった荷物がちと散乱しとったのぅ。足跡は、まあ特に怪しいものはなかった。凶器からはそこの容疑者三人と館長、それに会議室や舞台に待機してる白雪星香の舞台仲間の者の指紋が出てきたよ

姫宮 愛沙

特に不自然なことなんかないよね

東條 夕日

なあ、ひとまず在り処も分かったことだし、脅迫文を見るのが先じゃないか?

生徒会長

そうね。鑑識さんもいることだし、そこから指紋が出れば犯人も分かるんじゃない?

白雪 星香

あの……脅迫文を出したのも私なんだけど

小柳 真

白というダイイングメッセージが暗証番号のことだったとすると、館長はあんたの名前を書こうとしていた訳じゃなくなる。それに、殴った奴が他にいるとすれば、脅迫文を出したやつももう一人いるかもしれないだろ?

白雪 星香

確かに……

東條 夕日

まあ、それでも殺人罪だったはずの罪が軽くなるだけで、消える訳ではないんだけどな

白雪 星香

そんな事は分かってる

渋谷

出来ることならもう一人の犯人さんにも、罪が軽くなるよう努力してほしいなあ。容疑者のお二人さん。俺たちは今から現場に行って脅迫文を確認してくる。その間、お前たちは自由にしてていい。だが、逃げても無駄だ。素性が割れているんだから、すぐに捕まるに決まってる。それよりも、自首してくれることを願っているよ

渋谷のその言葉を最後に、容疑者の残り二人を置いて、俺たちは全員で事件現場の部屋に戻った。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

姫宮 愛沙

あ、本当に「11111」で金庫が開いたね

矢野 樹理

ホワイトちゃんが鍵を握っていたのは間違いじゃなかったね

東條 夕日

だが、これは……

生徒会長

一応指紋を確認してもらう? 大体予想は出来るけれど

小柳 真

そういう事だったのか。予想外だな。難しいのはむしろこれからか

金庫の中から出てきたその脅迫文に俺たちが衝撃を受けている中……

部屋の扉が開き、彼らが入って来た。

神嶋 伸也

ねえ、この人が「僕が犯人です」って自首してきたんだけど、一体どうなってんの?

山岸 努

すいません。脅迫文を出したのも、館長を殴ったのも、もう一人は僕なんです!!

彼の自白直後に、そんな笑い声とともに、この空気をぶち壊しそうな嫌な予感がやって来た。

佐藤 立夏

待て! 役に立たない下僕たちよ!
我が真犯人を連れて来てやったぞ!!

三船 当夜

すまない、白雪くんではないもう一人の犯人とは私だ

東條 夕日

やはりこうなったか。さて、ここからが本番だな

そう呟いた俺の手から、金庫から出てきた三枚の脅迫文がひらひらと舞い落ちた。

* * * * *

こんにちは。ご覧いただきありがとうございます。

さて、新たに二人の男が自首をしてきました。皆さんの予想を裏切ることが出来たでしょうか?

ところで、すでにお気付きとは思いますが、今回は新たな謎が出て来ておりません。それは、次回三人の証言を聞き、誰が館長を殺した本当の真犯人なのか推理してみて下さい。

今回は、今日大学の講義中に思いついたストーリーについて、お知らせと言うか質問をしてみたいと想います。

今後のストーリーで、ミス研の中のお一人が裁判員制度(年齢については触れないで下さい)によって、裁判員となり事件の真相を明らかにするというものを考えています。

そこで、読者さん本人にも、裁判員として、またはミス研の一員や検察側の立場に立ってもらい、それぞれ自分の選んだ役職のストーリーを読み、読者さん同士で法廷を舞台に争ってもらいたいなと考えています。

初めての試みで上手くいくかどうかは分かりませんが、もっと読者さんにストーリーに参加しているという実感を持ってもらうのと、読者さん同士の対決を見てみたいという私の思いつきに興味がありましたら、ぜひコメントを下さい。

それでは、今回はこの辺りで失礼します。

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