そんな思いで、僕は思わず椿さんの前に飛び出た
これ以上死傷者は出したくない!!!!
そんな思いで、僕は思わず椿さんの前に飛び出た
っ・・・!!!!!!!
寸でのところで椿さんと彼女の前に割り込んだが、そのままとびかかってきた彼女の歯が僕の腕に食い込む感触がする
そして、痛み
くっ・・・。
苦痛に歪む僕の顔を見て、彼女が少し動揺した気がした
あ・・・・・。
後悔の念が表情から見て取れる
彼女は顔を覆い、震えだした
あ・・・・ぁああ、いや・・・・、いやああああああああ!!!!!!
今度は苦しそうに頭を押さえ、のたうち回る
!?
その瞬間、幾度となく感じたあの感覚が再び僕らを襲った
そして、ゆっくりと頭の中に物語が紡がれていくのだった
『餓死しそうな子供たち』
原題:Die Kinder in Hungersnot
あるところに、娘を二人持つ女がいました。
貧乏でみんなおなかが空き、どうにも我慢できなくなると女は正気を失い、娘を殺して食料を作ろうとしました。
そこで、娘は食べ物を持ってくると言い、小さなパンを持って帰ってきたのでみんなで食べましたが、やはり空腹はどうにもなりません。
女はまた娘を殺すと言いましたが、娘は世界の終わりが来るまで横になって寝続けようと言いました。
そこで二人の娘は寝てしまい、誰も起こすことはできない眠りについてしまいました。
ただ、女だけはどこかへ行ってしまい、その行方を誰も知ることはありませんでしたとさ。
おしまい
っ・・・。
わたし・・・・、人間なんて食べたくない・・・!
あ、あぁ・・食べたい・・食べたい。
その煩悶の言葉を最後に、完全に少女の焦点がうつろになる
ふ・・ふふ。
無駄にあがいてくれたねぇ・・。
あたしはおなかが空いてたまらないんだ。
食わせておくれよぅ、その肉をさ!!!!
その姿から想像できないほどしゃがれた声になり、彼女はもう彼女ではなくなっていた
焦点が合わなくなった目は、それでも獲物をゆらりとみつめている
彼女は一歩、また一歩と近づいてくるが頭の中がごちゃごちゃになった僕にはこの危機的状況を回避する術が思い浮かばない
戦うしか・・ないのか!
僕はゆっくり構えをとる
この子はいうなればこの贖罪ゲームの被害者である
おそらく罪は暴食
そんな彼女に暴力を加える真似をしたくはないのだが、彼女は完全に正気を失っているし、僕だけでなく椿さんもいる
それに、僕は黙って食われるわけにはいかない
!!
そう覚悟を決めた時だった
彼女が今度は首を押さえながらもがき始めた
ぐ・・・ぎ。
首元には何も見えないが、ぎりぎりと何かが彼女の首にめり込んでいる
justiceさん、そして貴女も早くこちらへ。
もがき苦しむ彼女の後ろには見覚えのある姿が
菖蒲さん!!
さあ、早く!
菖蒲さんの手には人形のようなものが握られていて、菖蒲さんはその人形の首をぎりぎりと紐で締め付けていた
わかりました!!!
は・・はい!
僕は苦しむ彼女の横を椿さんと共にかけ抜けて、菖蒲さんのもとに駆け寄る
もう大丈夫そうね。
そういうと菖蒲さんは縛っていた紐から手を放し、今度はその人形の頭を思いっきりグーで殴った
が・・っ!!!!!
その瞬間、目の前の少女は地面に崩れ落ちた
あ・・!!
大丈夫よ。
気絶してるだけだから。
にっこりと相変わらずの美しい微笑みを僕に向けながら、菖蒲さんは言い切った
それで、こちらの方は?
菖蒲さんは椿さんに向かって会釈する
あ・・、椿さんです。
はぁ、椿と申します。
よろしくお願いしますね、椿さん。
椿さん、こちらは菖蒲さんです。
僕の言葉に椿さんは小さくうなずく
菖蒲さんもやはりこちらの世界にいたんですね。
ええ、私も罪人だったみたいですから。
菖蒲さんはもう試練を・・?
・・いいえ、まだですわ。
僕の質問に答えた菖蒲さんの表情が複雑そうに歪む
試練・・・。
いったいどんな裁きが待ち受けているのでしょう・・。
恐ろしいですわ・・。
お二方はもう経験されたのですか?
僕はまだ・・。
はぁ、私は受けましたが。
僕らは歩きながら会話を続ける
まあ。
ならば、ご自分の罪にお気づきで?
まあ・・、頭の中に響きましたから。
菖蒲さんが興味深そうに話を聞くと、椿さんは面倒臭がりながらも再び自分の罪の物語である『夏の庭と冬の庭』の話をした
この話は・・。
おそらく現代の美女と野獣の原本でしょうね。
言われてみれば確かにそんな気もします、はあ。
僕は童話についてあまり詳しくは知らないので、会話の外から聞いているとふいに菖蒲さんと目があう
あら・・?
justiceさん、髪にガラスがついていましてよ。
そういうと菖蒲さんは僕の髪に触れる
いっ・・!??
ごめんなさい!!
一緒に髪を抜いてしまったかもしれませんわ!
・・いえ、ガラスをとってくださってありがとうございます。
思わぬ痛みに、オーバーにリアクションを取りすぎたことで気まずい気持ちになる
ふふっ、やはり身体が弱いのは嘘なのですね。
・・・ええ、もう観念して白状しますよ。
別に僕は身体が弱くもなんともありません。
そういえば菖蒲さんはさっきから僕をjusticeさんと呼ぶ
パーティーでも僕がjusticeという名前でゲームセンターに陣をはっていたことにも気づいていた
ところでなんで知ってるんですか。
僕がjusticeってこと。
僕は疑問に思ったことを菖蒲さんに尋ねる
それに答えようと菖蒲さんが口を開いた時だった
!!??
その菖蒲さんの口を影のようなものがふさぐ
は!!??
その影は椿さんにもまとわりつき、そのままズズズズと、ものすごい速さで二人を引きずっていき、一つの部屋の中に消えて行った
菖蒲さん!!
椿さん!!!!
つづく・・・
~罪人リスト~
名前、罪状
童話
特技
No.1 漣 ???
『???』
???
No.2 馨 憂鬱
『子供たちが屠殺ごっこをした話』
???
No.3 壱 ???
『???』
心を読むこと(?)
No.4 菖蒲 ???
『???』
人形を使った何か(?)
No.5 卓 憤怒
『鍛冶屋と悪魔』
千里眼
No.6 暁 傲慢
『夜うぐいすとめくらとかげの話』
特殊な声を持つ
No.7 椿 怠惰
『夏の庭と冬の庭』
水を操ることができる
No.8 ??? 暴食
『餓死しそうな子供たち』
???
No.1
No.2
No.3
No.4
No.5
No.6
No.7
No.8