椿

・・・というわけなのですよ~。

それはすみませんでした・・・。
ありがとうございます。

不可抗力とはいえ、女性の腕に傷を作る原因となってしまったことに、素直に謝罪の言葉がでた

・・・ということは、椿さんは試練をクリアしたんですよね?

椿

・・・・これで最後の質問にしてくださいね・・・、はぁ。
しましたよ、この通り。

そういって椿さんはエプロンのポケットから水色のカギを取り出した。

椿

先ほどお話しした通り、私への試練はあなたを救うことでした。
そして、私は父の死により、全てを放棄してしまった怠惰の罪を持つ三番目の娘の生まれ変わりのようです、はぁ。

なるほど・・・。

そして僕は椿さんが持つカギを見て、ハッと自分が命を懸けて手に入れようとしたカギのことを思い出す


慌てて自分の周囲を見回すが見つからず、不安が胸をよぎった




しかし、自分の掌に何か硬い感触がする

・・・よかった・・。

ゆっくりと手を開いてみると、そこには錆が綺麗にとれて、銀色に輝くカギの姿があった

ふと、銀色のカギを眺めながら暁さんのことを思い出す



頭の中に流れてきた「夜うぐいすとめくらとかげの話」によれば、彼はとかげから結果目を奪ったうぐいすの生まれ変わり

罪は『傲慢』



あいつにぴったりな罪だなと心の中で苦笑する



彼はカギを集める派なようだが、人を殺すことにためらいがなく、どちらかといえば断罪派の思考に近いようだった

本当に兄上に似ている



自分のためなら手段は選ばない

落とす命がいくつであれ、自分が助かればそれでいい


そう、例え僕(家族)でも




いずれは兄上と対立しなくてはならない
そのときは間違いなく彼は僕を殺しにかかるだろう


兄上の命を脅かす存在であるこの僕を

椿

はぁ・・・、考え込んでいるところ失礼しますが、あなたは何かプランはあるのですか?

彼女の声に一気に現実に引き戻される

え・・・?
あ、すいません、考え事をしていて。

椿

見ればわかります・・。
それよりはやく私はここから出なくてはいけません・・。
どのくらい私がここにいたと思います?
はぁ・・、扉なんてないですし。

そうだ、この部屋には見渡す限り扉がない

どうしたら出られるのだろう

椿

・・・・はぁ、誰か来るのを待つしかないようですねぇ。

彼女は再び考え込む僕を見て、半ばあきれて呟く




そんな時だった


壁の向こうで音がし始めたのは

ガッ・・!
ガッ・・・!

椿さん!
もしかして誰かが僕たちを見つけてくれたのかもしれません!

椿

はぁ・・・、やっと出られます。

しかし、僕らの考えは甘かった

数回壁を削る音がして一気に壁が崩れ落ちた


見た目、分厚さは一メートルぐらいであろうか


さすがの僕でもこの厚さの壁は崩せなかっただろう



立ち込める砂煙の中、うっすらと影が浮かび上がる



そして現れた姿は、まだ幼い少女だった

由利

・・・・・・おいしそーう。



信じられないことに、彼女は口いっぱいに岩をほおばっていた



!?

由利

・・・やっぱりこの壁はまずいわ・・。
ふふっ・・、いい具合のお肉がふたぁつ。
どっちにしようかしら―・・?


彼女の目の焦点は合っていない



なんだか様子がおかしい・・・!
椿さん、逃げましょう!!!

椿

はぁ・・・、走るの面倒・・・、なんて言ってる状況じゃないですね!

僕らが走り出した途端、小さな少女も後を追ってくる

由利

なんで逃げるのぅ・・?
ふ・・ふふふふふふ。
まてまてー♪

何とか振り切り、僕と椿さんは先ほど少女があけた穴から外に出る

どうしてあの子はあんなことに!?
たぶんあの子も参加者なはず!!

椿

はぁ・・・眠って説明を聞いてなかった私にはさっぱり・・。

説明・・・?
そういえば・・・。



そういえば、スピーカーから流れてきた声が言っていた

・・・試練に失敗すれば狂う・・。

もしかしたらあの子は試練に失敗した・・?




僕らはなおも一直線に続く廊下を走り続ける

僕らの体力がなくなる前に彼女があきらめてくれればいいのだが



すると、前方を走っていた椿さんが何かに勢いよくぶつかる


椿

っ!!!????
かはっ!!

椿さん!!!???

椿

前に・・・、何かあるみたいです・・。

椿さんはぶつかった鼻を押さえて前方を指さす


え・・?
何も・・。

僕が手をかざすと、何もないはずの空間に透明なバリケードのようなものの感触がした

うそだろ・・。

廊下はまだまだ続くが、この透明なバリケードに阻まれて先に進むことができない





さらに悪いことに、あとを追ってきていた彼女に追いつかれてしまった



由利

ふふふ、鬼ごっこはもうおしまい。
んー、どちらにしようかな。

!!!!!

由利

んー、男の肉って硬いのよね。
やっぱり、女の方かしら?
ふふっ。

彼女の目はすでに椿さんをとらえていた


その瞳はまるで狩りをするときの猛獣のようにぎらぎらと嫌な光を帯びていた


椿

・・え!

由利

じゃぁ、いっただっきまーす♡


彼女は勢いよく椿さんにとびかかる

・・・!
やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!

つづく・・・

~罪人リスト~
名前、罪状
童話
特技
 

No.1 漣 ???
     『???』
      ???

No.2 馨 憂鬱 
     『子供たちが屠殺ごっこをした話』
      ???

No.3 壱 ??? 
     『???』
      心を読むこと(?)

No.4 菖蒲 ???
      『???』
       ???

No.5 卓 憤怒
     『鍛冶屋と悪魔』
      千里眼
 
No.6 暁 傲慢
     『夜うぐいすとめくらとかげの話』
      特殊な声を持つ

No.7 椿 怠惰
     『夏の庭と冬の庭』
      水を操ることができる

No.8 ??? ???
       『???』
       ???
 

No.1

No.2

No.3

菖蒲

No.4

No.5

No.6

椿

No.7

由利

No.8

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