東條 夕日

答えは『9』だな

生徒会長のヒントを聞いて早々に、俺は堂々と答えを告げた。

東條 夕日

最初の数字は素数の並び。そして二つ目は31日まである月。それぞれ当てはまらない数字は『9』ってわけだ

生徒会長

ぐぬぬ。やるじゃない。素数はヒントがあったにしても、月の方までよく分かったわね

東條 夕日

なに。さっきまで閉じ込められていた部屋で偶然カレンダーを見ていたからな。……あんたがこの謎を出すと踏んで、わざとカレンダーを織り込んだ謎解きを用意した、なんて真似を誰もしていなければね

生徒会長

ってことは、音楽室のあの散らかりようは、あなた達の仕業だったのね。部長の林道さん、怒ってたわよ

なるほど。どうやらこの謎解きは、生徒会長も音楽室でカレンダーを見て、そこから思いついたらしい。

小柳 真

そんな事より、早く事件現場に向わなくていいのか? 殺人事件なんだろ?

生徒会長

そ、そうね。じゃあ、午後の授業は公欠届を出しておくから、校門の前で待っていてちょうだい

その言葉を最後に、生徒会長は手続きのため職員室へ。そして俺たちは、授業中に堂々と校門へ向かった。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

東條 夕日

ミステリー研究部は公欠扱いで事件にまで行けるのか!?

校門前。

俺はずっと抱いていた疑問を投げ掛けた。

矢野 樹理

一応学校公認の部活動だしね

姫宮 愛沙

警察から感謝状ももらったことあるんだよ

佐藤 立夏

こんなちっぽけな権力に縛られる我等ではない!

どうやら俺が考えていた以上にまともな部であるようだ。

生徒会長

お待たせ―。みんなの公欠取れたわよー。変態さんの分を取るのに少し手間取ったけれどね

東條 夕日

いい加減言わせてもらうが、『変態』呼ばわりはやめてもらおうか。俺にはちゃんと東條夕日という名前があるんだ

生徒会長

そうね。この事件を見事解けたら考えてあげるわ。それじゃ行きましょ

振るえる右手を理性で抑えながら、俺たち一同は事件の現場へと歩き始めた。

神嶋 伸也

……で。その現場ってのは歩いてどのくらいかかるのさ? 一時間なんていったら僕は帰るけれど

生徒会長

歩いて十分くらいのちょっとしたコンサートホールよ。そんなに遠くないから安心して

矢野 樹理

それはいいんですけど。死体ってまだ現場にあったりするんでしょうか?

生徒会長

それも大丈夫よ。すでに警察の方が到着してシーツを掛けて場所を移しているから。希望があれば見られるでしょうけどね

姫宮 愛沙

私たちは遠慮しておこうね

小柳 真

警察が来ているのに俺たちを呼んだのか? 犯人の目星くらいは付いているのだろう?

生徒会長

容疑者は三人に絞れたわ。でも……分からないことがあるのよ

佐藤 立夏

我が来たからにはもう安心だ! ふはは!!

東條 夕日

分からないことってのは何だ? 動機か?

生徒会長

いいえ。動機も凶器もはっきりしているの。わからないのは、そう

そこで息を吸い、さながら自らが探偵でもあるように、独特の空気を纏い彼女は言った。

生徒会長

『ダイイングメッセージ』。説明するよりも現場について見てもらった方が早いわ

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ホワイト

ワンワンワンワンワン

姫宮 愛沙

あ、可愛いワンちゃん

生徒会長

ホワイトっていうそうよ。被害者の飼っていた犬で、賢くて色んな芸を覚えているらしいわ

コンサートホールの中にある、簡素な控室。

犬に向えられたその場所が、事件の現場だった。

ソファーにテーブル、閉められたカーテンに机と椅子に、テレビが一つと観葉植物に洗面所。

観葉植物の木

テーブルの横には、被害者の跡をかたどる様に、ロープが置かれていた。

さらに、小さな金庫とその上に置かれた猫の置物。

小さな金庫(暗証番号は何桁かも分からない)

白い猫の置物

隣には、冷蔵庫が置かれていた。

白い冷蔵庫

矢野 樹理

殺風景な部屋だね。それで? ダイイングメッセージってのはどれのことかな?

生徒会長

そうだったわね。ちょっと警部さん。こちらがうちの高校のミス研のメンバーよ。早速で悪いけど、あの手帳を見せてくれない?

生徒会長に言われてこちらにやって来たのは、とても警察の方とは思えない格好の女性と、見知った顔のおじさん。

東條 夕日

って、古典の渋谷先生じゃないか!?

渋谷

おう、東條。今日の古典の授業、あまり聞いてなかったくせにサボりとは、いい度胸だな

東條 夕日

く、気付かれていたか。でもあんたが何でこんなところに

上条警部

おいおい。見知った顔なら自己紹介は学校で勝手にやってくれ。ここは事件現場だ。お前たちはこのダイイングメッセージの謎を解けばいいんだよ

渋谷

分かりましたよ上条警部。ほら、これが被害者が握り締めていたメモ帳、つまりはダイイングメッセージだ

あの女が警部だと!? という俺の驚きは彼女の視線によって一蹴される。

渋谷から渡されたメモの内容は、こんな感じだった。

東條 夕日

どうやら元々書いてあったメモのページに、死の間際に自らの血で『白』と書き加えたらしいな

さて、ミステリー研究部員としての初めての活動。さっさと謎を解き明かし、『変態』の称号を返上するとしようか。

* * * * *

こんにちは。ご覧いただきありがとうございます。

さて、いよいよ殺人事件編ですが、予想以上に一話が長くなってしまいました。すみません(´;ω;`)

今回読者さんに挑んで頂く謎解きは、メモの内容の解読です。どんな事でもいいので、コメントの方をお待ちしております。

いつもコメント下さっている方は、本当にありがとうございます。大変励みになっています!

それでは、今回はこの辺りで失礼します。

11.第二章~奇妙な殺人事件~

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