ポタ、ポタと水滴が頬に落ちる気配がして僕は飛び起きる
ポタ、ポタと水滴が頬に落ちる気配がして僕は飛び起きる
こ・・・こは・・!!!!
勢いよく起き上がったはいいが、全身に微かな痛みを感じ、僕は顔を歪めた
・・・っ、ガラスか。
よく見れば周りにガラスの破片が大量に散らばっており、僕は体中傷だらけだった
上を見れば僕が落ちたであろうところにぽっかり穴が開いている
先は果て無く、見えない
あんな高さから落ちたのによく無事だったなと驚く
はぁ・・、無事なんですか?
突然の呼びかけに少し驚いたが、声が聞こえてきた方にゆっくりと目をやる
え・・?
メイド・・・さん?
・・・・。
そこに立っていたのはなんともこの場に似つかわしくない、メイド服の女性であった
その目はけだるそうに僕の方に向けられている
無事ならいいんです・・・はぁ。
あなた・・は?
自己紹介タイムですか・・・?
めんどくさいですね・・・・はぁ。
椿【ツバキ】と申します・・。
何度ため息をつくのだろう
そのメイドさん、いや、椿さんはとてもだるそうに名前を教えてくれた
あ、僕は漣です・・はい。
そうですか・・・、はぁ。
そっけなく彼女は答え、会話は途切れる
僕はとりあえず周りを見渡してみる
どうやらこの部屋には扉はないようだ
ならば椿さんはこの部屋にずっといたのだろうか
だとしたら僕を助けてくれたのは・・
そう思って椿さんを再び見ると、椿さんも腕のところに傷を負っているのが見える
!!
もしかして椿さん、僕を助けてくれました・・?
・・・・。
そうといえば・・そうなるんですかね。
でもどうやって・・。
はぁ・・・、さっきから質問ばっかり。
面倒な人・・・。
椿さんは面倒くさがりながらもその経緯を説明してくれた
・・・・。
ここは・・・?
目覚めると私は見覚えのない部屋にいた
・・・たしかお屋敷で働いててそれから意味の分からない占い師とかいう人が現れて・・・・
あんまりよく覚えてない。
ピンポーンパンポーン♪
ガッ・・・ガガ
・・・?
何か音が聞こえる。
あ・・、あのう。
みなさん起きてますか・・・?
なんだか眠くなるような声・・はぁ。
えっとじゃあ今から皆さんにやってもらいたいことを・・・
・・・・すぅ。
・・・・あ・・・、私は・・?
ん?
・・・どうやら眠ってたみたい
最近お屋敷での仕事が忙しかったからついうたた寝を・・・
ピンポンパンポーン♪
!
そこの寝ぼけ眼なくそ野郎!!!!
とっておきの目覚ましをお届けしてやるぜ!
!?
さてさて贖罪タイムです!!!!
今から落っこちてくるモノ、それを生きた状態で入手できなければお前の敗北だ!
・・・は?
貴方は何を言って・・。
俺たちの説明を聞いてないからお前は意味が分かんないんだよ。
全く、生まれ変わっても根本は変わんないんだね。
あ、三度目の説明はしないから!!!
・・ただ一つ・・言っておく。
?
この贖罪に失敗したら、お前は愛するご主人様のもとに二度と帰れなくなる。
・・・!!!!
ふふふ。
【今度は間に合うといいね!】
せいぜい頑張んなよ、ばいびー☆
ブツン・・、シン、
・・・・・。
・・・どうやらとんでもないものに巻き込まれたらしい
めんどくさ・・。
でも、
愛するご主人様に会えなくなるなんて
・・・これは、本気でやるしかないようですね。
でも
【落っこちてきたモノを生きた状態で入手】って?
上を見ても普通の木製の天井で、つるされているものなんてどこにもない
・・?
バリッ・・・
!
バリバリバリッ・・!!
すると突然、天井が何かの圧でひび割れ、どっかりと大きな穴が開く
けほっ・・!
はぁ・・なんです・・?
目をこらして上を見ると
!?????
大量の水が、ふってきていた
は!!!???
あれをモノって・・バカなんです!??
水を生きた状態って意味不明・・・。
・・・!!!!!!!
さらによく目を凝らしてみると、大量のガラスの破片が
っ・・・!
ガラスが混じった水を生きた状態で入手ってますます意味が分からない
でもあの水を直接受けたらガラスで致命傷を負ってしまう
幸い、私には人並み外れた特技がある
それは
【水を操ることができること】
とりあえず水の軌道を横にずらして・・・、そこにある壁にぶち当てて勢いを相殺してから蒸気に変える!!!
そうしようと手を構えた時だった
は!?
あれは・・・人!!!!????
――。
【落っこちてきたモノを生きたまま入手】って・・
あの人のことだったのです!??
っ・・・・!
そのまま水流を壁にぶち当てようとしたが、それではあの人は死んでしまう
だからと言って水とガラスだけを払いのけても、落下速度で勢いを増した男性を私は受け止めきれない
じゃあぎりぎりまで水の浮遊力で男性の勢いを殺した後、受け止めるしか・・・でもそれだとガラスの破片が少し残り当たり所が悪ければ私が致命傷を・・・
いや、ここで失敗してご主人様に会えなくなるぐらいなら死んだほうがまし!!!
私は決意を決めて男性に向き直る
まずはぎりぎりまで待って―
・・・・。
そこですね・・!!!
私は引き付けた水を一気に横にながし、落ちてきた男性を受け止める
っ・・・!!!!!
・・・。
いきなり腕にかかる負荷と残ってしまったガラスの破片で、私の腕に痛みが走った
なん・・とか!!!!
ガラスで傷ついたものの、何とかお互い無事であったのに安心する間もなく、横の壁にぶつけたガラス入りの水がこちらに迫ってくる
・・・ふっ!!!!
ぎりぎりのところで水を蒸発させ、浮遊力を失ったガラスの破片は地面にガラガラと落ちる
はっ・・・・はっ・・・。
今度こそすべてを乗り切ったと安堵するが、突如激しい頭痛が私を襲った
な・・・っ、んです!??
そして割れるような頭痛の中、静かに物語が頭の中に響いてきたのだった
『夏の庭と冬の庭』
原題:Von den Sommer- und winergaren
ある時一人の商人が年の市へ出かけようと思い、三人の娘たちに土産は何がよいか尋ねました。
一番目と二番目の娘はドレスや宝石などを頼みましたが、三番目の娘が謙虚でバラが一本だけ欲しいと言いました。
しかし、市に行った商人はバラだけ手に入れることができず、最愛の娘に何も土産を持っていけないのかと悩み考え込んでいると、商人はある城の前にたどり着きます。
城には庭があって、その庭は半分は夏の気候、半分は冬の気候という不思議な庭でした。
夏側の垣根がどこもかしこもバラで一杯なのをみると、商人はこれでバラが手に入る喜んで近寄り、一本だけならバレないだろうとバラを折って馬に乗って帰り道へと進みました。
馬でしばらく進んだ頃でした。
何かが荒い鼻息をたてながら後ろを追いかけてくる音が聞こえたので、恐る恐る振り返ってみると、大きな黒い獣が商人を追い掛けて来ていました。
獣は商人に追いつくと、バラを譲る代わりにそのバラをねだった美しい娘を妻として自分によこすようにと商人に言いました。
商人は、どうせ家もわからないのだから娘を貰いに来れないだろうと考え、申し出を受け入れます。
しかし、一週間たったころでした。
娘たちが食卓についているとなんとあの黒い獣が娘を妻に娶りにやって来たのです。
三番目の娘は悲しくて泣きだしましたが、従わなければ家族を殺すといわれ、一緒に行かないわけにはいきませんでした。
城にたどり着くと、城の中はたいへん美しく、娘は獣と一緒に暮らしていくうちに獣に心惹かれるようになり、そして心から愛するようになりました。
あるとき家族のことが不安になった娘は一週間で帰ってくることを獣に約束して家に帰ります。
しかし、娘が家に帰ると父親が病気で倒れていました。
父親である商人は娘に再び会えたことを喜びましたが、持ち直すことなく死んでしまいました。
葬儀を終え、姉妹はお互いに慰めあい、娘は父親の死に、あまりのショックをうけて部屋に篭って食事もとらなくなりました。
だんだんと気持ちが落ち着いてきた娘が、獣のことを思い出した時には一週間はとっくに過ぎてしまっていました。
そして、娘が城に戻ったころには城は黒い紗がかけられていました。
獣の姿はどこにもなく娘は何倍も悲しくなります。
あるとき庭にキャベツが一山積まれているのに気がつき、山をひっくり返すと黒い獣がキャベツの下に横たわって死んでいました。
娘は素早く【水】を持ってきて獣に休みなくかけ続けました。
すると、獣はすくっと立ち上がり、なんとあっという間に美しい王子に姿を変えたのです。
獣の目覚めとともに、城の黒い紗ははがされ、ふたりはいつまでもいっしょに幸せに暮らしましたとさ。
おしまい
つづく・・・
~罪人リスト~
名前、罪状
童話
特技
No.1 漣 ???
『???』
???
No.2 馨 憂鬱
『子供たちが屠殺ごっこをした話』
???
No.3 壱 ???
『???』
心を読むこと(?)
No.4 菖蒲 ???
『???』
???
No.5 卓 憤怒
『鍛冶屋と悪魔』
千里眼
No.6 暁 ???
『夜うぐいすとめくらとかげの話』
特殊な声を持つ
No.7 椿 ???
『夏の庭と冬の庭』
水を操ることができる
No.8 ??? ???
『???』
???
No.1
No.2
No.3
No.4
No.5
No.6
No.7
No.8