クロードさんはクスッと笑うと、
ゆっくりと先に起き上がった。
そして僕の手を握り、引っ張り上げてくれる。
クロードさんはクスッと笑うと、
ゆっくりと先に起き上がった。
そして僕の手を握り、引っ張り上げてくれる。
もう大丈夫です。
ご心配をおかけしました……。
急に倒れちゃって、
どうしたんですか?
この魔法道具を使うには、
莫大な魔法力を消費するのです。
ヘタをすれば生命力までも引き込まれ、
命に危険が及びます。
えぇっ!?
ご安心ください。
私は道具の使用に耐えうる
魔法容量がありますから。
ただ、一気に魔法力が落ちるので、
一時的に体に負担が
かかってしまうのです。
これは仕方のないことです。
無理はしないでください……。
トーヤ様、
お気遣い感謝いたします。
それでこの結界は?
外部の影響力を全て排除する結界。
この中にいる限り、
外部のいかなる影響も受けません。
ということは、
この中にいれば氷系の魔法も
使えるということですか?
はい、その通りです。
でも長時間は持ちません。
急がなければ……。
クロードさんは壁に手をつきながら
立ち上がろうとした。
僕はその補助をしながら一緒に立ち上がる。
こんなにフラフラになるなんて、
かなりの魔法力を消費するんだね。
何もできないのが悔しい……。
もし僕にも大きな魔法力があれば
変わってあげられるのに。
…………。
クロードさんは両手を掲げ、
意識を集中させながら何かを呟いた。
すると蒼い光が手のひらに生まれ、
どんどん膨れあがっていく。
そして氷の粒らしきものが中で光っている。
心なしかバスルームの中も
涼しくなってきたかも……。
――凍結粒!
クロードさんは叫びながら、
手のひらをバスタブへ向けた。
すると光の中からブドウの粒くらいの氷塊が
ガラガラとけたたましい音を立てながら
大量に流れ出してくる。
こうしてバスタブはあっという間に
氷の粒で満杯になった。
ふうっ。
これだけあれば、
しばらくは氷に困らないですね。
溶けてなくなる頃には
セーラ様が冷凍装置の修理を
終えてくれるでしょうしね。
その時、バスルーム内に張られていた結界が
パッと消滅した。
本当に短時間しか効果が持たないんだね。
多用はできないけど、
うまく使えば便利な魔法道具かもしれない。
その後、僕たちは洗面器に氷を入れ、
ベッドの方へ持っていく。
カレン、おまちどおさま。
氷を持って参りました。
お疲れ様。
でもどこから持ってきたの?
その説明はあとだよ。
治療を優先しよう。
そうね。
それじゃトーヤ、
早速だけどリューリュートーを
用意してもらえる?
分かった。それなら
調薬済のものがあるよ。
え? そんなに特殊な薬を
お持ちなのですか?
はい、汎用性のある
便利な薬ですから。
王都を出る前に
作っておいたんです。
出発の時は忙しかったので、
あまり量は作れませんでしたけど。
あれって作るのに
時間と手間がかかりますもんね。
しかも一般的な調薬成功率が
10%程度と言われていますし
さすがトーヤ様です。
いえ、そんな……。
僕は持ってきた薬の中から
リューリュートーを探し出し、
それをカレンへ手渡した。
するとカレンは女の子に適した量を
注射しようとする。
う……うううう……。
えっ!?
急に女の子の体が小刻みに震えだした。
でもまだ何も薬を投与していないから
その影響というわけじゃない。
いや、もし薬を投与していたとしても
こんな反応が出るのはおかしい。
あぁああああああぁーっ!
女の子は耳をつんざくような咆哮を上げた。
そしてゆっくりと起き上がり、
こちらを睨み付ける。
っ!?
うそ……っ……。
なっ!
ひっ!
そこにいた女の子の姿は、
もはやモンスターそのものだった。
周りに殺気をまき散らし、
口から鋭い牙がのぞいている。
次回へ続く!