湯之谷先輩は、家庭の事情について話し始めた
湯之谷先輩は、家庭の事情について話し始めた
俺は五人きょうだいの長男でな・・・親父がひき逃げ事故で死んでから、俺とおふくろの二人で、必死に弟や妹を支えてきたんだ・・・
お兄ちゃんお腹すいたよう・・・
お兄ちゃん、先生が給食費払え!って怒るの
僕もみんなと修学旅行に行きたいよう・・・
みんなが臭いって私をいじめるの・・・
いくら俺やおふくろがバイトやパートで稼いでも貰える金額はたかが知れている。風呂・トイレなしのアパートが精一杯だ・・・。
銭湯だって全員毎日入れる訳じゃない・・・。食費のことを考えると、どうしても一日おきの交代制になってしまう・・・。
お兄ちゃん、わたし、保育園行きたくないよう!
何でだよ!保育園ちゃんと行かなきゃダメだろ!
だってみんなが私のこと臭いっていじめるの・・・
活発に動く年頃だし、一日おきの風呂じゃ、無理もない話だな・・・
まあ、俺がしばらく銭湯を控えれば済む話か・・・
おふくろ!俺、しばらく銭湯を止める!代わりにゆみこを連れてってやってくれ!
ダメよ!あんた今、就活中でしょ!そんな臭い体で面接に行くつもり?
学校のシャワーを使うから大丈夫だよ!
帰宅部なのに使えるの?嘘はおよし!
おふくろ・・・
そんなある日、俺は図書室で「日本の温泉」という本を見つけたんだ!
何っ!!「日本は近くに火山がなくても1000m以上掘れば、どこでも温泉に当たる」だと!
おいっ、図書委員!この本に買いてあることは本当か?
あ、これは、その通りですよ・・・。確か、先月隣町にできたスーパー銭湯も地下1700メートルで掘り当てたそうです!
隣町だと!じゃ、この学校でも掘れば湧いてくるのか?
ハハハ、おそらくそうでしょうね!もっとも1700m掘ることができればの話ですけど・・・
その瞬間、俺は決断した!その夜、俺は仮面を着けて学校に忍び込み、温泉採掘を開始したんだ!
普通に掘ったらすぐにバレてしまう。まず横穴をトンネル状に掘って、そこから真下に掘り進むことにした
ゆみこ、待ってろよ!兄ちゃんが何とかしてやるからな!
だが翌朝、想定外のことが起こった!お前らがトンネルの真上を通ったせいで崩落が起こったんだ!
そうだったんですか・・・。僕がハマったのは落とし穴じゃなくて、ゆみこちゃんのために掘ったトンネルだったんですね
湯之谷先輩が妹想いなのは認めるが・・・!これ、どう考えても普通にバイトしたほうが早くないか・・・?
銭湯の子供の料金なんてたかが知れてるぞ・・・
でも、とてもそんなツッコミ入れられる雰囲気じゃない・・・
分かりました!僕も男ッス!湯之谷先輩、ゆみこちゃんのためにひと肌脱がせてください!
えっ・・・お前・・・ロリコン?
うわッ、せっかく金田が良いこと言ってるのに・・・。残念な先輩・・・
僕が爺やに頼んで温泉採掘業者を手配させます!
お、おいっ!マジかよ!温泉採掘なんて・・・仮設トイレの設置とは掛かる金が違うぞ!
僕も学校帰りに温泉に入りたいし、クラスのみんなもカンパしてくれるはずです!!
なるほど・・・。全額負担する気はないのね
こうして、探偵部はトロロ学園でカンパを募り、ゆみこちゃんのために学園内に温泉を採掘する工事が始まった!
学校に温泉ができるなんてすげえ楽しみ!
覗いた男子は絶対ブッ殺してやるわ!!
温泉のロビーで店の特売品売れないかな・・・
こうして、わずか二週間の突貫工事でトロロ温泉は完成した!
どうですか?湯之谷先輩?トロロ温泉の施設は?
最高だ!これは来週のオープンが楽しみだよ!ゆみこ、よかったなぁ!
うん、お兄ちゃんありがとう!
近所の人も入れることになってよかった・・・!
ところで・・・安見君が見当たりませんが?
おっ、みんなー、待たせたな!
えっ、安見君?
お前・・・何脱いでんの?
え?あ、あれえ?
今日は完成施設見学会でオープンは来週だぞ!
ハ、ハハハ・・・そうなのか・・・
こうして、学園内の日帰り温泉のオープンとともに校門前大規模陥没事件は解決した!