『ホームランブギ(うめ吉ver.)』が流れる。
経華は阿波踊りみたいに手のひらをくるくると回しながら陽気に小暮の周りをグルグル回る。
『ホームランブギ(うめ吉ver.)』が流れる。
経華は阿波踊りみたいに手のひらをくるくると回しながら陽気に小暮の周りをグルグル回る。
君、そういうノリの音楽かコレ?
えへ?じゃあ、どういうリノですか?教えて下さいよ先生?
しゃっくりしながら小暮に頬釣りする経華。
千鳥足でよろける彼女の体をなんとか支えながらリズムを刻んでいると社交ダンスみたいに手と手を取りながらカニ歩きみたいな踊りになってしまう。
その姿を見て大笑いし盛り上がる菅原や他のお客さんたち。
さすが!にゃんにゃん先生はなんでも正解を知ってるんですね?
これはそういうスウィングした盛り上がとは違うと思うけどな
先生、これからもいろんな事をいっぱい教えて下さいね
いろんなといっぱいは同義だから一緒に使うのは間違いじゃないかな
また難しい事を言う
経華とも、粧子とも、ほのかともつかない声が耳元でささやいた。
さっきまで座っていたテーブルを覗くともうほのかの姿は無かった。
にゃんにゃん先生、楽しい?
素敵な恋の始まりじゃない?楽しそうね
ああ、楽しいよ。少なくとも君といると飽きないね
本当に?いっつも迷惑ばっかりかけてるのに?
ごめんね忍。私ずっと迷惑だったよね。バイバイ
大丈夫だ、迷惑ってほどじゃない。
君に気づかされることもたくさんある。
…本当にたくさんあるんだ。
なあ、黙って踊らないか?今日はもう喋り疲れたんだ
ずっと
いてくれて
ありがとう
誰に向かって言うともなくそう呟いて
小暮は目を閉じながらダンスフロアで華やかに踊った。
ミラーボールの中で
去りゆく思い出とまやかしのような今と明日への戸惑いが
彼の中で万華鏡のように
まばゆく乱発射して涙が溢れた。
経華はそのむせび泣きの理由は聞かず、
小暮の猫背をギュッと抱きながら踊った。
彼女のハニーテキーラの吐息と汗ばんだドレスの胸元から伝わる熱気に、
小暮はずっとやりきれなくて、
揺らめいて、
甘えた。
第6章
ゆらめき
IN THE AIR
おしまい