果たしてどんな結果だったのだろう?
僕に特別な力はあるのか、それともないのか?


今までずっと、
人並み以下の力しかないと思って生きてきた。
だから何も能力がなかったとしても
それは自然なこと。

それなのになぜかすごくドキドキするし、
不安だし、ちょっと怖い。


曖昧だからこそ安心できたり、
希望を持ち続けられたりするということも
世の中にはたくさんあるもん……。
 
 

シンディ

能力検査の結果だけど――

トーヤ

…………。

シンディ

やっぱりトーヤには
特殊能力があるわ。
それもかなり珍しい能力よ。

トーヤ

えっ?

トーヤ

ホ、ホントですかっ!?

 
僕が問いかけると、
シンディさんは笑顔で頷いた。



や、やったぁああああぁ~っ!


僕にも能力があったんだっ!
でもそれってどんなものなんだろう?

魔法に関係することだといいなっ♪
 
 

トーヤ

それってどんな能力なんですか?

シンディ

トーヤの能力は状態異常無効化。
つまり毒や麻痺などを
アイテムなしに無効化するの。

トーヤ

状態異常の無効化っ!?

ライカ

なるほど、そうでしたか……。
ようやくあの時の違和感に
納得がいきました。

トーヤ

あの時の違和感って
どういうことですか?

ライカ

トーヤさんはポイズンニードルの
トゲに刺さりましたよね?
その治療をする時、
毒に冒されていなかったんですよ。

ライカ

おかしいなって
ずっと疑問だったんです。

 
 
そうだったんだ……。

僕自身はすごく痛かったから、
完全に毒が体を蝕んでいると思ってたよ。


でもそれはトゲが刺さったことによる
痛みだったんだね。
ということは、怪我のダメージは受けるわけか。

逆に言えば、直接攻撃を伴わない状態異常は
ノーダメージということ――
 
 

トーヤ

あっ!

シンディ

どうしたの?
大きな声を出して?

トーヤ

もしかしてそれって
石化も無効化するんでしょうか?

シンディ

えぇ、おそらくは。

トーヤ

実はバジリスクの石化光線を
浴びたことがあったんです。
でも体はなんともなくて。

シンディ

そうだったの。
きっとそれも特殊能力のおかげね。

トーヤ

僕にそんな能力が
あったなんて……。

 
 
そういえば、今まで毒草を扱った時にも
毒に冒されたことはなかったな。

それはうまく処置していたからだと
思っていたんだけど、
この特殊能力のおかげだったという場合も
あったのかもしれない。
 
 

シンディ

ほかにも分かったことがあるわ。
身体能力は平均レベル。
魔法力はゼロ。

トーヤ

テハハ、そうですか……。
それは自分でも
よく分かってたことです。
今さらガッカリなんてしませんよ。

シンディ

でもね、あなたは魔族には珍しい
もうひとつの能力があるの。

トーヤ

状態異常無効化以外にも
何か能力があるんですかっ!?

シンディ

えぇ、トーヤは潜在能力の容量が
一般的な魔族と比べて
桁違いに大きいの。

トーヤ

どういうことですか?

ライカ

つまり成長の余地がある
ということです。

トーヤ

魔族なのに成長できるんですかっ?

シンディ

えぇ。珍しい特殊能力を
ふたつも持っているなんて
予想もできなかったわ。

 
 
魔族は能力的に成長できない――


それが世間一般の常識だ。
厳密にはわずかに伸びしろはあるらしいけど。

つまり生まれた時点で一生の待遇が決まる。


能力のない者はどこへ行っても迫害され、
世界の片隅で細々と生きていくしかない。
僕も隠れ里のみんなもそうだった。

女王様のおかげでそれは改善されつつあるけど、
まだまだ差別は残っているんだよね……。
 
 

トーヤ

あの、成長できるってことは、
魔法も使えるように
なるんでしょうか?

シンディ

努力次第でしょうね。
それに簡単にはいかないわ。
成長スピードが
人間の数倍は遅いから。

トーヤ

でもっ、努力を続ければ
魔法が使えるんですよねっ?

シンディ

まずは魔法容量を上げてから。
どんな魔法が身につくかは
そのあとでないと分からないわよ?

トーヤ

やったぁー!
僕にも魔法が
使えるかもしれないんだっ!

 
 
魔法が使えるなんて、夢の話だと思ってた!

でもそれが努力次第で叶うかもしれないっ!
それならどんなに苦しいことだって
乗り越えて積み重ねてみせるっ!!!


まずは毎日、瞑想をして――
 
 

シンディ

……トーヤ、忠告しておくわね。

トーヤ

――ッ!?

 
 
いつの間にかシンディさんは、
表情が雨雲みたいにどんよりと曇っていた。

僕が我を忘れてはしゃいでいたから、
機嫌でも損ねちゃったのかな?
でもそうじゃないような雰囲気だよね……。
 
 

シンディ

あなたの能力のこと、
無闇にほかの人に話しちゃダメよ。

トーヤ

どうしてですか?

ライカ

希有な能力の保有者は
実験材料として狙われるんです。

トーヤ

っ!?

シンディ

もし話すとしても
カレンとセーラだけにしておきなさい。

トーヤ

わ、分かりました……。

シンディ

さて、能力検査の話は
これでおしまい。
今度は私からトーヤに
相談したいことがあるんだけど。

 
 
シンディさんは一転して
いつもの優しい雰囲気に戻った。

そしてなぜかライカさんは姿勢を正す。
 
 

シンディ

あのね、ライカをあなたたちの旅に
加えてもらえないかしら?

ライカ

お願いします、トーヤさん。

トーヤ

えぇっ!?

シンディ

私がギーマ先生宛ての手紙を書いて
ライカに持たせるわ。
この子にも薬草師として
もっと上を目指してほしいから。

ライカ

トーヤさんを見ていて、
私もまだまだ未熟だと知りました。
だから私にも旅を通じて
色々と勉強させてほしいんです。

トーヤ

僕は構いませんけど、
カレンやセーラさんにも
相談してみないと……。

シンディ

もちろんよ。
あとで2人にも相談するわ。

トーヤ

そうですか。
それなら問題ありません。
まぁ、カレンたちなら
反対はしないと思いますけどね。

 
 
僕はニッコリと微笑みながら返事をした。


もしライカさんが旅に加わってくれるなら
心強いなぁ。
多彩な補助魔法が使えるみたいだし。

それに同じ薬草師として
お互いに切磋琢磨していけるもんねっ!
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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