都 大樹

それで? 公園に着いたはいいけど、綾瀬はペアの相方をどうするつもりなんだ?

3人で一目散に駆けて公園に着いた僕たちは、綾瀬にパートナーがいないという参加条件の基本中の基本の壁にぶち当たっていた。

桐谷 シルク

ダブルスなんだから1人じゃ参加できないわよ。いくら咲月が強くてもね

綾瀬 咲月

何だと!? それじゃ私はみーくんとシルシルのマネージャーと言うことになるのか!?

都 大樹

え? 嫌だよ。熱血を通り越してスパルタ指導されそう……

桐谷 シルク

試合終了までもたない気がするわね。……私たちではなく咲月の精神的に

都 大樹

ああ。マネージャーのコート乱入とか。下手したら教育的指導という名目の暴力で、僕たちが再起不能になる可能性もあると思うんだ……

綾瀬 咲月

ああ……マネージャー。今まで選手としてなら多くのスポーツをやってきたが、マネージャーは初めてだな。「お疲れさま。はい、タオルです!」とか言うのだろうか……いいな!

桐谷 シルク

既にもう危険な匂いが漂っているようよ

綾瀬 咲月

選手がミスしたら「もう先輩! 駄目じゃないですか。ドーン!」とか言って、手取り足取り教え込んだり……ぐふふ

都 大樹

試合終了がそのまま人生終了にならないことを願っておこうか

「————は————か?」

綾瀬 咲月

よし。ペアができないならしょうがない。私がマネージャーになって2人を優勝に導こう!

桐谷 シルク

大樹。マネージャー登録される前に、もう2人の名前だけで参加申し込み済ませた方がいいな邪ない?

都 大樹

そうだね。よし、ちょっと行って来るから桐谷はここで待っていてくれ

「——1人なんです——なって——人は——んか?」

桐谷 シルク

分かった。お願いね

都 大樹

ん? うわ!? 何だよ綾瀬? この手を離せ!(うわ~怖いよ何これ助けて)

綾瀬 咲月

いやいやみーくん。受付に申し込みに行くんだろう? 任せろ! 私が登録を済ませてくる

桐谷 シルク

何を言っているの咲月。そんなの大樹がやるからわざわざ咲月の手を煩わせる必要なんてないのよ(むしろお願いだから何もしないで欲しいのだけれど)

「誰かペアになってテニス大会に
参加してくれる人はいませんかー?」

綾瀬 咲月

シルシルこそ何を言っているんだ!? そういう雑用もマネージャーの仕事じゃないか!

桐谷 シルク

いや、でも。そんなの咲月に悪いわ(そもそもそのマネージャーを認めてないのだけれど)

「私も相方がいないんですよ! 
ダブルスに参加したい
のに1人なんですよ!!」

都 大樹

ギブギブギブギブ~~!! (これ死ぬこれ死ぬホントに死ぬから)

桐谷 シルク

大樹!? 腕が!? 腕が変な方向に曲がっているわ!?!?

綾瀬 咲月

みーくん。この程度で音を上げるとは優勝など夢のまた夢だぞ!

「もしもーし。そこのお三方。
1人余っているようなら
私とペアを組みませんか!?」

桐谷 シルク

待ってて大樹。私がマネージャーを諦めるように咲月を説得するから

都 大樹

いやもういいから。優勝とかマネージャーとかもうどうでもいいからこの手を放してくれ!

桐谷 シルク

駄目よ大樹。ここで諦めたら試合終了何とやら、よ

都 大樹

ここで諦めなかったら僕の人生が終了しそうなんだけど

綾瀬 咲月

あ、骨が……

都 大樹

な、何!? 骨がどうしたの!? 今僕の身に何が起こっているの!?

桐谷 シルク

大丈夫よ大樹。私は何も見ていないしあなたの身にも何も起きてはいないわ

都 大樹

何故そこで目を逸らすんだ桐谷!? おい! 頼む! お願いだから僕を見捨てないでくれーー!!

「人の話を聞いてください!!」

都 大樹

え? 何これ? 大丈夫だよね? 僕の体は大丈夫だよねーー!?

黒須 美幸

男のくせにワイワイとうるさいですね。曲がりかけていた関節を戻しただけです

都 大樹

あ、ありがとう。て言うか、君は?

黒須 美幸

まったく。先ほどから何回も言っているのにあなたたちは。いいですか? ちゃんと聞いてくださいね

綾瀬 咲月

お! 四つ葉のクローバーだぞシルシル!

桐谷 シルク

あ! 私は五つ葉のクローバー見っけ

黒須 美幸

こらーー! 言った傍からあなた達は! 本当にもう!!

都 大樹

まあまあ。落ち着いて

いきなりの騒がしい女の子であったが、結局のところペアがいない彼女は綾瀬と一緒に参加したいとのことだった。

もちろん僕と桐谷は即OKだ。そして、僕たちは4人揃って受付に行った。

あらあら。受け入れてしまったのですね彼女のことを

もう後戻りはできないのですよ?

そう、これは夢なのだ。

だからこの時、僕は第三者的な視点から後悔はしたし抵抗もしたけれど。

夢の中で僕は笑顔で歩いて行ったのだ。

——最悪の地獄が待つ、あの日と全く同じ活末に向かって。

* * * * *

こんにちは。
ご覧いただきありがとうございます。

突然ですが、今回で20話突破なのです!!

と、その喜びを噛み締めつつ、このお話を楽しみにしてくれている読者の方に大変感謝しています。

これからも、どうぞよろしくお願いします!

ところで、前話から地の文を極力減らして台詞を多用しているのですが、気付きましたでしょうか?

新しい試みですが、読者さんにどのように感じて頂いているのかが気になります。

そして、20話突破(主に前回のコメ)でテンションが上がっているので、少しおまけを載せたいと思います。

おまけ1

都 大樹

なあ桐谷。突然だけどペットって飼ってる?

桐谷 シルク

ふぇ? い、いや飼ってないけどどうして

都 大樹

いやさ。昨日動物番組で子犬が出てたんだけどさ。すごく可愛くてな。実際に見たいなーと思ったんだよ

桐谷 シルク

へ、へーそうなんだ(そんな大気が1番可愛いんじゃない!?)

都 大樹

ちなみにそこには赤、青、白、黒、黄色それぞれの服を着た5匹の犬がいたんだけど。桐谷だったら何色の犬が良い?

桐谷 シルク

んー。私は赤かな

都 大樹

その心は?

桐谷 シルク

恋にモえる乙女の色!

都 大樹

なるほど! 桐谷は今恋に燃えているんだね。応援するよ

桐谷 シルク

……馬鹿

都 大樹

え?

桐谷 シルク

何でもないわよ。それより大樹はどうなの?

都 大樹

僕は白かな

桐谷 シルク

その心は?

都 大樹

だって、白は何色にも染まれるだろ? 例えば、好きな人と同じ色になったりさ

桐谷 シルク

・ ・ ・

都 大樹

あ、あれ? 桐谷?

青葉 桐斗

今のはお前が悪い

都 大樹

あ、青葉。何だか久し振りだな

青葉 桐斗

そうかもしれないな。ところで、赤とか白とか聞こえてきたが、何の話をしていたんだ?

都 大樹

ああ。赤青黒白黄色の服を着た犬の中ならどの犬が良いかって話だよ。ちなみに桐谷が赤で僕が白だ

青葉 桐斗

予想通りだな。まあお前たち2人は分かりやすいからな

都 大樹

なんだそれは。じゃあお前は何色が好きなんだよ。やっぱり青葉だから青か?

青葉 桐斗

やっぱりお前は単純だな。そんな訳がないだろう

都 大樹

じゃあ何色だよ

青葉 桐斗

そうだな。丁度青が減った4択になったことだし、お前が当ててみろよ

都 大樹

……じゃあほら、例えばどんな犬が好きなんだ?

青葉 桐斗

俺は静かな犬が好ましい

都 大樹

それ色関係ないじゃん

青葉 桐斗

次回までに考えておいてくれ。次回も多分おまけがあるからな。残りのメンバーはその時だ

都 大樹

それでは皆さんまたじ

それではみなさんまた次回! お会いできるといいですね!!

気が向いたら、青葉桐斗は何色の服を着た犬を選んだかも考えてみて下さいね~

都 大樹

台詞が奪われた……

おまけ2

ユメノトビラ

 今日は私にとって今までで一番特別で、もしかしたらとても大切な日になるかもしれない。

 六月十九日。それは十七回目の私の誕生日で、幼馴染の和哉と一緒にパーティーをする日で。そして。

 私の五年分の『大好き』を素直に伝える日だ。

 今私は和哉の部屋にいる。

 パーティーが終わった後、和哉の『ここは俺達が片付けるから主役は部屋でのんびりしてろ』という心遣いと、和哉のお父さんお母さんの優しさに甘えて一人和哉の部屋で待機しているのだ。

 と言ってもただ寛いでるだけじゃない。さっきから必死で告白の台詞を何通りも頭の中で試している。

 ちなみに今ので八回目だけど、その八回とも頭の中の和哉は決まって苦笑いだった。

 机の上に置かれている四角い時計を見ると、和哉の部屋に来てもう十分程が経過していた。そろそろ和哉もやって来る頃だろう。

 特に理由は無いけど一度寛ぎモードに入るともう言い出せない気がするので、告白は和哉がこの部屋に来た時にと決めていた。

「あー。良い台詞が浮かんで来ない。……よし! ごちゃごちゃ考えるのは止めた止めた。和哉に『好きだ』ってありのままを伝えよう!」

 そう言って一世一代の決意を口にした時だった。

「えっ?」

 と。トビラの向こうでそんな声がしたのは。

「も、もしかして……和哉?」

「お、おう」

 私の初めての告白は、今までの苦労とか恥ずかしさとかそんなものを色々全部吹き飛ばして、そんな感じで終わってしまった。

「えっと、その、あの、これは、その……」

「あー、祈?」

 私が慌てふためいている時、和哉は私の名前を呼んだ。

「は、はい!?」

 思わず声を上げてしまった。その後に少しの沈黙があった。

 静か過ぎるその間に、私の心臓のドキドキいう音と、和哉が息を呑む音が聞こえて……

「ごめん」 

 そんな声が聞こえた。

 きっとこれは夢だ。
 私の不安が創り出した夢だ。

 だから覚めて欲しいと思った。一刻も早くここを立ち去りたいと思った。

 結局。私と和哉を別つ薄いけど厚過ぎた一枚のトビラを、私は開ける事が出来なかった。

 こんな夢を見た。

 目が覚めた後、私は枕元の時計を見た。朝七時。日付は六月十九日となっていた。

 私の誕生日だ。そして私が和哉に気持ちを伝えようと心に決めた日だ。

 きっとこれは、夢で思ったように私の不安が創り出した夢だ。現実とは全く関係ない夢だ。

 だけど。頭では分かっていても心のモヤモヤは晴れなかった。

 今私は和哉の部屋にいる。もちろん一人だ。

 パーティーも終わっている。和哉はお父さんお母さんと一緒に後片付けをしている頃だろう。

 結局パーティーが終わっても心のモヤモヤは晴れなかった。それどころかこの時間が近づくに連れ不安はどんどん増していった。

 正直今も悩んでいる。和哉が好きな気持ちはもちろん変わらない。

 だけど。今日この気持ちを伝えてしまってもいいのか。そう考えると答えは出せなかった。

 今日この日を逃せばもう私は告白なんて出来ないと思う。ずっとこの気持ちを隠したままこれからも一緒にいるんだと思う。

 ずっと気持ちを押し込めて。胸の内に押し留めて。ひたすら隠し通して行くのだろう。

 出来ないとは思わない。今日までも五年間隠して来たんだ。その心配は無い。

 だから、やっぱりこの気持ちは胸の内に秘めておこうと思った。

 だけど。それでも。

「好きだよぉ。和哉ぁ」

 思わず零れてしまったその言葉。だけど、それでもう終わり。

 この気持ちを口にして、確認出来て、後は隠し通して行く。それでいいんだ。

 なのに。

「えっ?」

 やっぱり、トビラの向こうからそんな間の抜けた声が聞こえた。

 折角気持ちを誤魔化して隠し通そうと心に決めたのに、現実は私の気持ちなんてお構いなしに夢と同じ道を辿って行く。

「いの、り?」

 もう駄目みたいだった。自分の気持ちに嘘を付いて、きっとそれを神様は許してくれなかったんだと思う。

 なら。せめて。

「和哉。好きだよ。私は五年前からずっと、和哉の事が大好きだよ」

 この気持ちを伝えよう。夢と同じ結末だとしても、夢とは違う自分になろう。

 そして。

「……祈!」

 和哉が私の名前を呼んだ後、少しの間沈黙があった。だけど、私の心臓のドキドキは聞こえなかった。

でも、和哉の息を呑む音が聞こえて……

「ごめん」

 そんな声が聞こえた。

 きっとこれは夢だ。
 私の不安が創り出した夢だ。

 ……なんて嘘は通じない。
 予想していた事だ。
 分かっていた結末だ。
 悲しくなんてない。

 目の前には夢で見た一枚のトビラがあった。この向こうに和哉が、大好きな人がいるのに。

 やっぱり私にはこのトビラは余りにも厚過ぎて。
それでも。

 思い切りトビラを開けた。

 夢の中では開けられなかったトビラを、もし開ける事が出来たら何かが変わるんじゃないかなんて期待はしてなかったけど。

 夢と同じ情けない自分になるのだけは嫌だったから。

 トビラを開けても和哉の顔は見えなかった。でも。私は、背中に回された腕と、トクントクンと速くなる二つの鼓動と。

何より私を優しく包み込む和哉の温かさに出逢えた。

「ごめんな、祈」

 和哉はもう一度そう言って。

「五年間も待たせてごめん」

 そう呟いた唇を、私の唇にそっと重ねた。

「もう、待たせ過ぎだよ。バカ」

ここまで読んで頂き本当にありがとうございます。

恋愛系の物語を書いてなかったので、この機会にと載せて見ました。

今回はキャラクターの絵もなしのカギカッコで勧めましたが、このお話の雰囲気に合うキャラクターがいたら、吹き出しを使うのもいいなと思ってます。

それでは、かなり長くなりましたが、今回はこの辺りで失礼します。

青葉の選んだ犬、台詞の多用、長めのおまけそれぞれ意見や感想、アドバイスなどありましたら、遠慮なくお願いします。

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