あれから歩き回っているが、一向に試練の場所にたどり着く気配がない
本音を言えば、あんな命を懸けた試練なんて恐ろしいが、カギを手に入れるためには仕方がない
そんなことを考えていると、どこからか鳴き声
暁さん・・。
何だ、うるせーな。
暁さんはカギをもう手に入れたんですか?
してねーよ、だから馬鹿みたいに徘徊してんだよ。
見てわかんねーのか。
・・・。
あれから歩き回っているが、一向に試練の場所にたどり着く気配がない
本音を言えば、あんな命を懸けた試練なんて恐ろしいが、カギを手に入れるためには仕方がない
そんなことを考えていると、どこからか鳴き声
【・・シクシク、ぐすん】
何・・?
あの扉の向こうからか・・・。
暁さんは声がする部屋の扉に手をかけ、ためらいもなく一気に開いた
これは・・・。
そこは一面ガラスで覆われているが、まるで海の中にいるかのような幻想的な部屋だった
そしてその真ん中
静かにたたずむ、それはそれは美しい人魚の姿があった
泣き声の主はこの人魚殿かのう。
シクシク・・・。
あ、あれを見てください!
ガラス張りの部屋の中央に台座があり、その上に錆びたカギのようなものがのっていた
カギのようじゃのう・・。
しかしあの位置は・・・
床のガラスを見る限り、厚さは二センチほど
人がぎりぎり乗れるか乗れないかぐらいの厚さだ
床の底は真っ暗な闇で、先が見えない
みなさん・・、どうしま・・。
僕が言いかけたとき、またしてもあの奇妙な声が部屋に響き渡った
ふふっ・・ふふふふふ!
みなさんお待ちかね、贖罪のお時間でーす!!!!!!
ほ・・・、またあやつじゃのう。
中央にカギがあるのは気づいたかな?
あれはあのままじゃ使えないよ!!
だって錆びちゃってるんだからね♪
じゃあ手に入れても意味な・・。
でもね・・、錆びをとる方法が一つだけあるんだぁ。
!
それはね、人魚の涙。
それが錆びたカギに流れ落ちれば一発で綺麗新品元通り!!!
そのためには人魚さんの願いをかなえてあげないとね☆
おい、てめぇ。
人魚の望みってなんだよ。
人魚さんはねえ。
【声】をなくして悲しんでいるんだよ。
【声】をあげたらどんなに喜んで涙することだろう!!!
【声】ねぇ・・。
どうするかは君たち次第。
あ、【声】っていっても普通の声じゃだめだよ?
人魚さんなんだから特殊な【声】じゃないとね・・?
以上!!!!!!!
そうしてまたプツリとスピーカーの音は途絶え、人魚のすすり泣く音だけが響く
特殊な【声】って・・。
くく・・、これは俺様への試練だな。
のどをえぐって差し出せってか?
暁さんは楽しそうに口元をおさえ、笑う
だがな、俺様は声を差し出す気なんてさらさらねーよ。
そして彼は意味ありげな視線を僕に向ける
暁さんと目があった途端、僕の脳内に警鐘が鳴り響く
いやな予感がする
その予感は不幸にも的中したのだった
お前、カギを取りに行け。
瞬間、また先ほどのように体の自由が利かなくなり、足が意識に反してガラス張りの床に踏み出された
っ・・・!
パリッ・・・
微かに不吉な音が響く
僕の恐怖とは裏腹に、足は一歩、また一歩と着実に歩数を進めていった
暁殿!!!!
何をやっておるのじゃ!!!??
そう怒鳴って僕のもとに行こうとする壱さんを、暁さんは制止した
いいのか・・?
二人も乗って。
この床はあいつだけでも限界なんだ。
お前が行けば、間違いなくガラスは割れるぞ。
・・・くっ!
漣殿・・!
そんな壱さんの叫び声もどこか遠くに聞こえる
今まで死というものにこんなにもリアルに近づくことなどなかった
僕は驚きと恐怖で意識が飛びかけていた
しかし、暁さんの言葉に縛られた僕の体はそんな朦朧とした意識のなかでもハキハキト足を進めている
そして、カギに手をかける
無事にたどり着いた安心感から、はっと恐怖で止まっていた息が吐きだされた
漣殿・・。
すこし安心したかのような壱さんの声も聞こえてくる
よーくカギ持っとけよ?
はっ・・・はっ・・・は・・・・、っえ?
涙ねぇ、嬉し涙じゃなくてもいんじゃねーの?
そうつぶやいた彼は大きく息を吸い込んだ
な・・・何を。
刹那
キーンと超音波のような音が部屋中に反響する
・・・!!!!??
あまりに高周波な音に頭が揺さぶられ、僕は何とか防ごうと耳をふさぐ
!!!
!!!!!!!
天井のガラスを見ると、人魚が苦しそうに悶えていた
そして
!!!!!!
勢いよく涙が、
滝のような涙がガラスを突き破り、僕の上に振ってきた
!
まぁ、お前死んでるかもしれねえけど後で会えたら会おうぜ。
下でな?
そして僕を助けようと部屋に入ろうとする壱さんを扉の向こうに突き飛ばし、自分も部屋から出て扉を閉めた
この部屋には僕一人
人魚を含め二人か?
僕はゆっくりと上を見上げる
水はもうすぐそこまで迫っていた
ああ、ダメだー
完全に途切れ行く意識の中、水が体を叩き、ガラスが身を切る痛みを感じながら、一つの物語が僕の頭の中に流れてきたのだった
『夜うぐいすとめくらとかげの話』
原題:Von der Nachtigall und der Blindschleiche
昔々あるところに、それぞれ目玉を一つしかもたない夜うぐいすと盲(めくら)とかげが仲良く暮らしていました。
あるとき、うぐいすは婚礼に招かれますが、自分の目が一つしかないのが気になり、とかげに一日だけ目玉を貸してくれと頼みます。
とかげは快く承諾し、自分の目玉をうぐいすに貸しました。
一日だけという約束でしたが、うぐいすは両目で世界を見れることの素晴らしさを知り、翌日になってもとかげに目を返しませんでした。
そのため、二人は仲違いし、後日盲(めくら)とかげはうぐいすを恨むようになります。
しかし、うぐいすにとっては空を飛べないとかげは怖くありません。
だから夜にうぐいすは「高いぞ、高いぞ。」と鳴き、盲(めくら)とかげはうぐいすの巣のある木の下に潜み、うぐいすの卵を襲うことがあるんだとさ。
おしまい
つづく・・・
~罪人リスト~
名前、罪状
童話
特技
No.1 漣 ???
『???』
???
No.2 馨 憂鬱
『子供たちが屠殺ごっこをした話』
???
No.3 壱 ???
『???』
心を読むこと(?)
No.4 菖蒲 ???
『???』
???
No.5 卓 憤怒
『鍛冶屋と悪魔』
千里眼
No.6 暁 ???
『夜うぐいすとめくらとかげの話』
特殊な声を持つ
No.7 ??? ???
『???』
???
No.8 ??? ???
『???』
???
No.1
No.2
No.3
No.4
No.5
No.6
No.7
No.8