振り向いた先にいたのは、
カレンとセーラさんが倒したはずの
ポイズンニードルだった。
当然、その2人は僕たち以上に動揺している。
振り向いた先にいたのは、
カレンとセーラさんが倒したはずの
ポイズンニードルだった。
当然、その2人は僕たち以上に動揺している。
嘘……でしょ……?
確かにトドメを刺したはずなのに。
私も確認したはずですぅ!
ワケが分からないのですぅっ!
ギャギャギャギャ!
っ!? 危ないっ!
…………。
カキンッ、ギィンッ!
ポイズンニードルは全身のトゲを
一斉に放ってきた。
大きなトゲが雨のように降り注いでくる!
でも咄嗟にライカさんが唱えてくれた
結界魔法のおかげで
僕たちのところに到達することなく
全てが弾かれて地面に落ちたのだった。
あまりに急な攻撃だったから、
僕は驚いて
心臓が止まりそうになっちゃったよ……。
全身から冷や汗も吹き出している。
あ……ぅ……。
ライカさんっ!?
ライカさんは苦悶の表情を浮かべながら、
足下がふらついて倒れそうになった。
でも隣にいたセーラさんが慌てて体を支える。
――熱中症かな?
でも意識はハッキリしているみたいだし、
体温が上昇している感じでもない。
どうやらライカ様は
魔法力が枯渇したようですね。
えっ?
バインドは魔法力を
大きく消費します。
今の結界魔法で残っていた分を
使い切ってしまったのでしょう。
そういうことだったんですか。
トーヤ、魔法力の回復薬を
持ってきてるでしょ?
うん、もちろん。
私とクロードさんが時間を稼ぐから
その間にそれを使ってあげて。
分かった。
行きますよ、クロードさん。
承知です。
2人は武器を構え、
ポイズンニードルへ立ち向かっていった。
すでにヤツの体には新しいトゲが生えている。
よく見てみると、
体の傷も消え去っているみたい。
っ!
――そうか、分かったぞ!
アイツにはきっと超回復の能力があるんだ。
だから完全に息の根を止めないと、
復活してしまうんだ。
切り落とされた腕がくっついているのも
そういうことなんだろうな。
でもあの回復力はたぶんトロル以上。
そんなモンスターがいたなんて……。
っと、いけない!
僕は慌ててライカさんの横へ行って
回復薬を服用させた。
これで少しだけど魔法力が回復するはず。
すると程なくライカさんの顔色が
良くなってくる。
ありがとうございます、
トーヤさん。
いえ、僕たちの方こそ
ライカさんのおかげで
助かりました。
どうやらポイズンニードルは
超回復の能力があるようですねぇ。
セーラさんも
気付いていたんですか?
えぇ、全身のトゲが
瞬時に回復するのを見て
気付いたのですぅ。
その時、戦って時間を稼いでくれている
カレンとクロードさんが目に入った。
2人とも肩で激しく呼吸をしている。
動きだってどんどん鈍くなっている感じ。
一方、ポイズンニードルの猛攻は変わらない。
このままだと確実にジリ貧だ。
急いでこのピンチを切り抜けないと、
取り返しのつかないことになる。
セーラさん、どうしましょう?
こうなったらもう逃げるしか……。
うーん……。
それならもう一度、
バインドで動きを封じます。
その間に逃げましょう。
それしかないですねぇ。
目的は達したわけですし、
マトモに戦うのは
得策ではないですねぇ。
では、私は準備を。
私はカレンちゃんたちの
助太刀に行ってくるですぅ。
セーラさんはバトルアックスを振り上げ、
ポイズンニードルへ向かっていった。
ライカさんは再びバインドを使う準備に入る。
――僕だけ何もできなくて悔しい。
なんて無力なんだろう。
僕には戦うための力も魔法もない。
何もできずに見ていることしかできない。
フォーチュンを使って援護攻撃くらいは
できるかもしれないけど、
今の状況では
みんなに弾が当たってしまう可能性の方が高い。
もし僕の攻撃で
ポイズンニードルが倒せるなら話は別だけど、
そんなの夢のまた夢だし……。
最初から諦めてちゃダメだよ、
トーヤくん!
っ!?
――そうだ、思い出した。
アレスくんはどんな相手にも勇気を持って
立ち向かっていったんだ。
何もしないで諦めたくない!
よく考えるんだ、今の僕にできること……。
もし攻撃をするなら、
フォーチュンの力に頼るしかない。
これが僕の最大最強の武器なんだから。
ん? 待てよ?
果たしてそうなのかな?
……っ!
――そうだ、僕は薬草師。
戦うことは本職じゃない。
最大最強の武器は薬草や薬、
それに関する技術と知識なんだ。
デビルペッカーと戦った時も
薬草師としての知識を活かすことで
ピンチから脱出できた。
あの時、タックさんにも言われたじゃないか。
僕の持つ力を活かして仲間を助けろって。
今の僕にできること!
薬草師としての力、
そしてフォーチュンの力っ!
持てる全ての力を発揮して
この場を乗り切れる方法を思い巡らせた。
そしてとうとう、
この場を乗り切れるかもしれない
1つの策を思いついたのだった。
次回へ続く!