振り向いた先にいたのは、
カレンとセーラさんが倒したはずの
ポイズンニードルだった。

当然、その2人は僕たち以上に動揺している。
 
 

カレン

嘘……でしょ……?
確かにトドメを刺したはずなのに。

セーラ

私も確認したはずですぅ!
ワケが分からないのですぅっ!

 
 

ギャギャギャギャ!

 
 

 
 

ライカ

っ!? 危ないっ!

 
 
 
 
 

ライカ

…………。

 
 
 
 
 

 
カキンッ、ギィンッ!
 

 
 
ポイズンニードルは全身のトゲを
一斉に放ってきた。
大きなトゲが雨のように降り注いでくる!

でも咄嗟にライカさんが唱えてくれた
結界魔法のおかげで
僕たちのところに到達することなく
全てが弾かれて地面に落ちたのだった。



あまりに急な攻撃だったから、
僕は驚いて
心臓が止まりそうになっちゃったよ……。

全身から冷や汗も吹き出している。
 
 

ライカ

あ……ぅ……。

トーヤ

ライカさんっ!?

 
 
ライカさんは苦悶の表情を浮かべながら、
足下がふらついて倒れそうになった。
でも隣にいたセーラさんが慌てて体を支える。


――熱中症かな?

でも意識はハッキリしているみたいだし、
体温が上昇している感じでもない。
 
 

クロード

どうやらライカ様は
魔法力が枯渇したようですね。

トーヤ

えっ?

クロード

バインドは魔法力を
大きく消費します。
今の結界魔法で残っていた分を
使い切ってしまったのでしょう。

トーヤ

そういうことだったんですか。

カレン

トーヤ、魔法力の回復薬を
持ってきてるでしょ?

トーヤ

うん、もちろん。

カレン

私とクロードさんが時間を稼ぐから
その間にそれを使ってあげて。

トーヤ

分かった。

カレン

行きますよ、クロードさん。

クロード

承知です。

 
 
2人は武器を構え、
ポイズンニードルへ立ち向かっていった。


すでにヤツの体には新しいトゲが生えている。
よく見てみると、
体の傷も消え去っているみたい。
 
 

トーヤ

っ!

 
 
――そうか、分かったぞ!

アイツにはきっと超回復の能力があるんだ。
だから完全に息の根を止めないと、
復活してしまうんだ。

切り落とされた腕がくっついているのも
そういうことなんだろうな。


でもあの回復力はたぶんトロル以上。
そんなモンスターがいたなんて……。
 
 

トーヤ

っと、いけない!

 
 
僕は慌ててライカさんの横へ行って
回復薬を服用させた。
これで少しだけど魔法力が回復するはず。

すると程なくライカさんの顔色が
良くなってくる。
 
 

ライカ

ありがとうございます、
トーヤさん。

トーヤ

いえ、僕たちの方こそ
ライカさんのおかげで
助かりました。

セーラ

どうやらポイズンニードルは
超回復の能力があるようですねぇ。

トーヤ

セーラさんも
気付いていたんですか?

セーラ

えぇ、全身のトゲが
瞬時に回復するのを見て
気付いたのですぅ。

 
 
その時、戦って時間を稼いでくれている
カレンとクロードさんが目に入った。


2人とも肩で激しく呼吸をしている。
動きだってどんどん鈍くなっている感じ。

一方、ポイズンニードルの猛攻は変わらない。



このままだと確実にジリ貧だ。
急いでこのピンチを切り抜けないと、
取り返しのつかないことになる。
 
 

トーヤ

セーラさん、どうしましょう?
こうなったらもう逃げるしか……。

セーラ

うーん……。

ライカ

それならもう一度、
バインドで動きを封じます。
その間に逃げましょう。

セーラ

それしかないですねぇ。
目的は達したわけですし、
マトモに戦うのは
得策ではないですねぇ。

ライカ

では、私は準備を。

セーラ

私はカレンちゃんたちの
助太刀に行ってくるですぅ。

 
 
セーラさんはバトルアックスを振り上げ、
ポイズンニードルへ向かっていった。
ライカさんは再びバインドを使う準備に入る。




――僕だけ何もできなくて悔しい。

なんて無力なんだろう。
僕には戦うための力も魔法もない。
何もできずに見ていることしかできない。


フォーチュンを使って援護攻撃くらいは
できるかもしれないけど、
今の状況では
みんなに弾が当たってしまう可能性の方が高い。

もし僕の攻撃で
ポイズンニードルが倒せるなら話は別だけど、
そんなの夢のまた夢だし……。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

アレス

最初から諦めてちゃダメだよ、
トーヤくん!

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

トーヤ

っ!?

 
 
――そうだ、思い出した。

アレスくんはどんな相手にも勇気を持って
立ち向かっていったんだ。
何もしないで諦めたくない!



よく考えるんだ、今の僕にできること……。

もし攻撃をするなら、
フォーチュンの力に頼るしかない。
これが僕の最大最強の武器なんだから。
 
 

トーヤ

ん? 待てよ?
果たしてそうなのかな?

トーヤ

……っ!

トーヤ

――そうだ、僕は薬草師。
戦うことは本職じゃない。
最大最強の武器は薬草や薬、
それに関する技術と知識なんだ。

 
 
デビルペッカーと戦った時も
薬草師としての知識を活かすことで
ピンチから脱出できた。


あの時、タックさんにも言われたじゃないか。

僕の持つ力を活かして仲間を助けろって。
 
 

トーヤ

今の僕にできること!
薬草師としての力、
そしてフォーチュンの力っ!

 
 
持てる全ての力を発揮して
この場を乗り切れる方法を思い巡らせた。


そしてとうとう、
この場を乗り切れるかもしれない
1つの策を思いついたのだった。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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