島 達己

「おにぎり作ろうか」           


島は炊飯器の蓋を開けながら、ノルに微笑みかけた。


NOL

「おにぎり…」             


島 達己

「うん
 昨日 立一が食べてたやつだよ」           

NOL

「シマは それが作れるのか…」             


島 達己

「まぁ
 簡単だからね」           

島は早速、内釜を取り出し米を炊く準備に取り掛かる。


ノルは興味を持ったようだ。
島の横にぴったり付き、真剣な眼差しで作業を見届けている。

島 達己

「これで良しと」           


炊飯器をセットして、後は米の炊けるのを待つばかりだ。


島 達己

「すぐ炊けるからね」           


NOL

「わかった」             


ノルは、素直に頷いた。          


島 達己

米が炊けるまでに 具材を用意しておこうか 鮭 おかか 梅干し ツナ…と


島 達己

「ノルちゃんは 何かおにぎりに入れた
 い物はある?」


NOL

「ん… なんでもいいのか…?」             


島 達己

「良いよ
 ノルちゃんの好きなものは何かな」     

ノルは、少し考えてから島と視線を合わせた。         


NOL

「ゴリゴリ君…」             


島 達己

「ゴリ…?」             


島は、思わず言葉を詰まらせた。      

ゴリゴリ君とは……

国民的人気の棒アイスである!        

低価格で様々な味のバリエーションがあるのも魅力の氷菓なのだ!

コンビニで購入して以来、これはノルのお気に入りとなっていた。        

島 達己

「ノルちゃん…悪いことは言わない
 ゴリゴリ君は そのまま食べよう
 か…」

ノルは少し残念そうではあったが、冷凍庫にあったゴリゴリ君ヨーグルトソーダ味を手渡されると、機嫌は直ったようだ。        

NOL

「ぺろぺろ…」             


ノルは、舌先で器用に棒アイスを舐めていく。                     

島 達己

「……」                 


        

何故かその様子から目が離せない島であったが、不意に溶け出したアイスがノルの手を伝う。                   

NOL

「ん…」                


島 達己

…… …… えろい                


        

溶けたアイスを舌で舐め取るノルの姿をまじまじ見つめていると目が合った。


ノルは、食べかけのアイスと島の顔を見比べると、少し困ったような顔をした。


島 達己

つい見入ってしまった
  
ポーカーフェイスには 自信がある方だから 油断した顔はしていなかったはずだけど

NOL

「シマ…」                 


内心、如何わしい目で見ていたのがバレたのかとヒヤリとした島であったが、ノルの次に続く言葉は予想していたものとは違っていた。

NOL

「俺 一人だけ補給して すまない」                 


ノルは、食べかけのアイスを申し訳なさそうに差し出している。


島 達己

「え?」          
   


島は思わず、間抜けな声を上げていた。     


どうやら、ノルは見つめられているのに気づき、島もゴリゴリ君が食べたかったのだと勘違いをしたようだ。

島 達己

「ノルちゃんは優しいね
 でも 俺はお腹いっぱいだから
 ノルちゃんが全部食べていいんだよ」          
   

NOL

「ん…」                 


島は、柔らかく目を細めると、そっとノルの腰を抱き寄せた。


島 達己

「俺は これで十分だよ」          

   

島は、溶け出してノルの手に伝っているアイスを舌で掬う。


ノルの肩がピクリと震える。        


島 達己

ノルちゃん いい匂いがするなぁ…         
特に首筋のタトゥの辺りとか
   

島は、ノルが抵抗しないのをいいことに、そっと首筋に鼻を寄せる。


島 達己

なんの香水だろう すーはー…       
   

NOL

「シ シマ…っ」                 


顔を上げると、ノルの困惑した表情が眼前にあった。
少し、調子に乗り過ぎただろうか。

NOL

「くすぐったい…」                 


少し伏し目がちに俯くノルの姿は、どちらかといえば、恥ずかしがっているように見える。

島 達己

「……」                   


正直、今すぐにでも床に押し倒してしまいたかったが、そこはぐっと堪えた。                   

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