酔いどれEND
「それじゃ パンケーキでも作ろうか」
先日使ったパンケーキ用の粉が、まだ残っていたはずだ。
トッピングに使える フルーツか何か冷蔵庫に入ってたかな
島は、冷蔵庫を開けると中を覗き込んだ。
「シマ これは 何だ?」
気づけば、ノルも島の背後から冷蔵庫を覗き込んでいる。
「ん? コレは俺が持ってきた差し入れ
ノルちゃん飲む?」
コレというのは、ここに来る際、島が持って来たドリンク類のことである。
適当に選んだものだが、カラフルなパッケージにノルは興味を持ったようだ。
「好きなの選んでいいよ」
「ん…」
ノルは頷くと、じっと数種類のドリンクを眺めている。
どれにしようか悩んでいるようだ。
それじゃ この間に
パンケーキを焼いちゃおうかな
真剣な面持ちでドリンクを選ぶノルを微笑ましく思いつつ、島はパンケーキ作りの準備を済ます。
「さて 後は
ノルちゃんの好きなものをトッピング
して…」
島がフルーツソースを作っていると、背後から物音がした。
振り向くとノルが缶ジュースを手に持ったまま、床にペタンと座り込んでいる。
「ノルちゃん ?!」
何事かと慌ててノルの元へ歩み寄ると、ノルがトロンとした表情で島を見上げる。
「ん…
これ 面白い味がする」
ノルが差し出した缶を受け取り、まじまじとラベルを確認する。
「エッグノッグ
ノルちゃん これ飲んだのか」
「んぅ… シマが 二人に増えた
シマはプラナリア星人だったのか」
「その星人の事は知らないけど
何となく どんな異星人なのかは
想像がつくな…」
ノルは、ふにゃりと微笑む。
心無しかいつもより、表情が豊かな気がする。
「でもこれ アルコール1%…だよな」
思わず、何度もラベルの表示を確認してしまったが、間違いは無いようだ。
ノルちゃん もしかして…
いや、もしかしなくても明白だ。
明らかに、酔っ払っている。
異星人って 酒弱いんだ…
島が一人頭を抱えていると、ノルの手が伸び、缶を握る手を掴んだ。
「それ もっと 欲しい」
おっとりとした口調でおねだりされ、島は生唾を飲み込む。
だが、ここで飲ます訳にもいかない。
「駄目駄目
ノルちゃん酔っ払ってるでしょ」
心を鬼にして、それを制止するとノルが膝の上に乗ってきた。
「こらこら ノルちゃん」
「んー…
シマが3人になってる」
膝の上で、頬を島の手の甲にすり寄せ、甘えた仕草をするノル。
「色々ヤバイ
これ以上は色々ヤバイから」
島の我慢も限界に達しようとしていた時…。
「あ 寝た…」
島は、すやすやと寝息を立てて眠るノルの姿に脱力する。
幸せそうなその姿を目の前にすると無情に起こすことも出来ず。
結局、立一が帰宅するまでノルの寝顔を眺めている羽目になったのであった。
酔いどれEND