僕とカレンが先制攻撃を仕掛けた。

金属塊と炎がポイズンニードルへ向かって
空気を切り裂きながら進んでいく。


一方、セーラさんとクロードさんは
武器を構えて攻撃をする準備に入った。
 
 

クロード

行きます!

セーラ

はいですぅ!

 
 
間髪を入れず、セーラさんとクロードさんが
ポイズンニードルへ突進していった。
 
 

トーヤ

あっ!
クロードさんの剣が光ってる!

 
 
いつの間にか、クロードさんの持つ剣の刀身は
蒼い光に包まれていた。

あれはきっと何かの魔法の効果が
付加されているのだろう。
やっぱり魔法が使えるのってうらやましいなぁ。



――でも僕にしかできないことだってある。

だから僕はそれを一生懸命にやるだけ。
そうやって仲間全体で助け合えばいいんだ。
 
 
 
 
 

ぷぎぃいいいいいぃ~っ!

 
 
 
 
 
僕とカレンの攻撃が
ポイズンニードルにヒットした!

そのままヤツは後ろに倒れ、砂が舞い散る。



気のせいかもしれないけど、
地面が揺れたような感じさえする。
それくらい派手な倒れ方だった。

ただ、それだけで倒せるわけもない。
フラフラしながらもすぐに立ち上がってくる。
 
 

トーヤ

カレン、2撃目の準備を!

カレン

分かったわ!

カレン

…………。

 
 
カレンは魔法の詠唱に入った。

僕は金属塊をフォーチュンにセットし、
放つタイミングを見極める。


今度はセーラさんやクロードさんが
ポイズンニードルのそばにいるから
2人に当たらないように気をつけないと。
 
 

セーラ

たぁああああぁ~っ!

 
 

 
 
一気に間合いを詰めたセーラさんの
重く鋭いひと振りがクリティカルヒットした。

その攻撃でポイズンニードルの
左腕(?)っぽい部分が切り落とされる。


続けてクロードさんが下方から上方へ
剣を振り上げて攻撃を加えた。
刀身を覆う蒼い光が軌跡となって目に残る。
 
 

 
 

クロード

はぁあああぁ~っ!

 
 
 

 
 
さらに体を捻って切っ先を
ポイズンニードルに向けると、
そこから蒼い光弾が雨のように降り注いだ。



――すごいっ!

剣と魔法による複合攻撃だなんて!
クロードさん、魔法剣士なのかなっ?
 
 

カレン

トーヤ、次の攻撃を放つわよ!

トーヤ

――あっ!? うんっ!

 
 
2人の攻撃に感動して、
ちょっと浮かれてしまっていた。

僕はカレンの声で気を引き締めると、
しっかり狙いつつ
攻撃するタイミングを見定める。
 
 

トーヤ

今だっ!

トーヤ

うりゃぁあああああぁっ!

 
 
僕はフォーチュンを力一杯振りかざした。

放たれた金属塊は上空へ向かって飛んでいく。
そしてある程度の高さまで達したところで、
今度はポイズンニードルへ落下していった。


これならセーラさんたちは避けやすいし、
ポイズンニードルに精度よく攻撃もできる。
 
 

カレン

はっ!

 
 
一方、カレンはさっきと同じように
真っ直ぐ炎の魔法を放った。

セーラさんたちは横にステップして
それを避ける。
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
炎はポイズンニードルに命中!
そこへ僕の放った金属塊がさらに命中した!


今回の弾は
落下のエネルギーを増しているから、
与えたダメージは一撃目よりも大きいはずだ。
 
 

ぎゅおぉおおおおぉ!

 
 
ポイズンニードルは逆上しながら
トゲを放ったり腕を振り回したりして
攻撃を始めた。


でもセーラさんとクロードさんは
武器でトゲを弾き、
素速い身のこなしで距離を取って
直接攻撃を受けないように避けている。
 
 

ライカ

――お待たせしました!

 
 
その時、ライカさんが大きな声をあげた。


視線を向けてみると、
彼女の体は陽炎のような空気の揺らめきに
包まれている。

そして前に突き出した両手は
ポイズンニードルへ向けられている。
 
 
 
 
 

ライカ

束縛(バインド)!

 
 
 
 
 

 
 
ライカさんはカッと目を見開きながら叫んだ。


するとポイズンニードルの足下と頭上に
巨大な魔方陣が出現し、
その間に光の柱が生まれた。

するとヤツは一切の動きが停止する。
 
 

ライカ

今です、トーヤさん!
そんなに長くは持ちません!
急いでください!

トーヤ

は、はいっ!

 
 
僕は調薬の道具を載せてある
ソリのヒモを引き、
ポイズンニードルに向かって走っていった。

でも下が砂で足がめり込むから走りにくい。
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
程なく僕は
ポイズンニードルのところへ辿り着いた。

横には武器を構えたセーラさんたちがいる。
 
 

トーヤ

セーラさん、クロードさん!
2人は離れていてください!

セーラ

承知なのですぅ!

クロード

トーヤ様、
どうかお気を付けて!

 
 
2人はポイズンニードルから離れていった。


僕は動きを封じられているヤツに近づき、
毒の抽出がしやすそうなトゲの横に膝をつく。

ひとつのトゲの大きさは手のひらくらいある。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 

トーヤ

ゴクリ……。

 
 
間近で見ると、その鋭さは刃物と変わらない。
しかもその肌の奥では血液か何かが
脈動しているのが分かる。


つまりこいつは確実に生きている。
もし魔法が解けて動き出したら僕は……。
 
 

トーヤ

いやっ!
そんなことは言っていられない!

 
 
恐怖を堪えながら僕は注意してトゲに
ナイフで切り込みを入れた。

するとその切り口から
紫色の液体が滲み出てくる。


――シンディさんの話だと、これが毒のはず。
 
 

トーヤ

えっと、ナイコトキシンは……。

 
 
僕は荷物の中から
ナイコトキシンの入った瓶を取り出した。
そのフタを開け、毒を一滴ずつ加えていく。



急がないといけないけど、焦りは禁物。

慎重に見極めて調薬しないと
ここまでの苦労が全て水の泡になる。
 
 

トーヤ

あっ!

 
 
しばらく毒を加えているうちに
瓶の中身の色が薄まり始めた。

――ここからが勝負だ!



一滴加えては慎重に混ぜ、色を見極める。

それを何回か繰り返しているうちに
液体は完全に無色透明となる。
これで完成のはず……。



でも念のため、少量を別の瓶に分け入れて
そこに毒を一滴。
すると色が少し白色に濁った。

つまりこれ以上は
毒を加えてはいけないという証だ。
 
 

トーヤ

よしっ!

 
 
僕は手早く荷物を片付けていった。
作った薬の入った瓶は布で包んで
割れないよう大事に仕舞う。



これでシンディさんやミーシャさんたちを
救うことができる。
みんなに笑顔を取り戻せる!


片付けを終えた僕はソリのヒモを引き、
その場から急いで離れ――
 
 

クロード

トーヤ様っ、危ないっ!

トーヤ

えっ?

 
 
クロードさんが真っ青な顔をしながら
悲鳴のような声をあげた。


振り向いてみると、
ポイズンニードルが放った大きなトゲが
こちらに迫ってきている。
 
 

 
 
 
 
 

トーヤ

あ……。

 
 
 
 
 

 
 
きっとバインドの効果が切れたんだ。

僕は咄嗟に体を翻そうとするけど、
意識とは裏腹に体が付いてこない……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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