えっ? えぇっ!?
目の前にあったサンドモービルが
跡形もなく消え去ってしまった!
こんな砂漠のど真ん中に
僕だけが取り残されてしまうなんてっ!!!
えっ? えぇっ!?
目の前にあったサンドモービルが
跡形もなく消え去ってしまった!
こんな砂漠のど真ん中に
僕だけが取り残されてしまうなんてっ!!!
トーヤ、どこへ行ったの~っ!?
っ!?
すぐ近くからカレンの焦ったような声がした。
でも姿は見えない。
僕は慌ててその声がした方へ近付いてみた。
すると今まで何もなかった場所に、
サンドモービルとカレンたちの姿が現れる。
みんなとはぐれてなくて良かったぁ……。
ホッとしたら全身から力が抜けて、
へたり込んじゃったよぉ……。
トーヤ! 今、姿が見えなくなって
心配したんだからぁ!
僕もみんなの姿が
見えなくなってたよ……。
驚かせてゴメンなさい。
ライカさん……。
これは魔法をかけた対象から
一定の距離が開くと、
見えなくなる効果があるんです。
ライカさんが苦笑を浮かべながら言った。
そうか、これは魔法の影響だったのか……。
距離によって
見えたり見えなかったりするなんて、
面白い魔法だなぁ。
これって幻覚魔法ですか?
似ていますが、
性質は全然違います。
幻覚魔法は相手や自分の感覚に
影響を与えるものですよね?
つまり幻覚魔法は
認識を惑わせているわけですね。
はい。でもこちらは光を操って
物理的に見えなくするんです。
光系の魔法のひとつです。
珍しいですね。
魔族で光系の魔法の使い手って
滅多にいないですから。
その代わり、攻撃系や防御系、
回復系などの魔法は苦手なんです。
扱えるのは補助系魔法ばかりなので
戦いではお役に立てないです。
そんなこと、ありませんよ!
魔法が使えるってだけで
すごいと思うし、役に立ちますよ!
トーヤさん……。
役に立たないなんて、思ってほしくない。
だって僕なんて魔法を使いたくても、
使えないんだから。
どんな技術だって使い方によって
思いも寄らない素敵な効果を得られたり、
逆に酷い目に遭ってしまうこともある。
そういう意味では道具と同じ。
術者の心がけ次第なんだと思う。
これならトーヤくんや
カレンちゃんが
遠隔攻撃できる位置まで
気付かれずに済みそうですねぇ。
でも注意してください。
姿は見えなくても
聴覚や嗅覚までは誤魔化せません。
はい、油断せず行きましょう。
じゃ、僕とカレンが
先制攻撃を加えるね。
そのあと、
セーラさんとクロードさんが前へ。
承知なのですぅ。
お任せをっ!
僕たちが攻撃をしている間に
ライカさんはポイズンニードルの
動きを封じてください。
はいっ!
トーヤさんは調薬の準備も
お忘れなく!
あ……。
そうでしたね……。
僕は慌てて調薬のための準備をした。
指摘されるまですっかり忘れてたよぉ……。
それが終わったあと、
僕たちは風下からゆっくりと静かに、
ポイズンニードルへ接近することにした。
徐々にポイズンニードルの姿が
鮮明に見えるようになってくる。
もともと大きいというのもあるんだろうけど
こうして見てみると迫力があるなぁ。
禍々しい感じもするし。
トゲの先端はナイフみたいに鋭い。
身体の質感は植物というよりも
ケンタウロスの筋肉みたいな躍動感がある。
すごく強そうだけど、
本当に大丈夫なのかなぁ……。
デビルペッカーと戦った時より緊張する。
では、私は魔法の準備に入ります。
詠唱に入ると間もなく、
相手に気付かれてしまうでしょう。
皆さん、時間稼ぎをお願いします。
ただ、決して無理は
しないでください。
はいっ!
トーヤ!
私が攻撃魔法を放つと同時に、
フォーチュンで攻撃を!
分かった!
タイミングを合わせるね!
では、そのあとに私とセーラ様が
間合いを詰めて攻撃を仕掛けます。
みんな、がんばりましょ~っ!
…………。
…………。
…………。
ライカさんとカレンが魔法の詠唱を始めた。
それに続いてなぜかクロードさんも
剣を構えたまま何かを呟いている。
クロードさんも魔法を使うみたいだけど、
攻撃力でも上げるつもりなのかな?
トーヤくんも弾をセットして
構えてくださいぃ!
あっ、そうですね。
すみません。
セーラさんに注意されてしまった。
――いけない、僕は僕で戦いに集中しないと。
ここには使えそうな石が落ちていないので、
あらかじめ持ってきていた金属塊を
フォーチュンにセットした。
大きさはコインと同じくらいで、
きれいな球形をしている。
もしこれが命中すれば、
大きなダメージを与えられるはずだ。
外さないよう、しっかり狙わないと。
――トーヤ、準備はいいっ?
もちろんだよ!
いくわよぉ~っ!!!!
カレンは両手を掲げた。
するとその上に巨大な炎の塊が浮かび上がる。
こっちまでその猛烈な熱が伝わってくる。
本来、カレンは攻撃魔法の中では
氷系や水系の方が得意だけど、
ここでは使えないもんね。
トーヤ!
カレン!
いっけぇ~っ!!!
僕とカレンはタイミングを合わせ、
攻撃を放った。
緩やかな放物線を描いて飛んでいく金属塊。
真っ直ぐ進む巨大な炎。
軌道の異なるふたつの塊が
ポイズンニードルへ迫っていく。
幸いなことに、ポイズンニードルは
まだこちらの攻撃に気付いていない。
――よーし、このまま当たれぇ~っ!
次回へ続く!