ライカさんが探索魔法を使ったあと、
砂漠を移動し始めてから約1時間が経過した。


ポイズンニードルのいる場所へ
かなり近付いているとのことなので、
サンドモービルは
徒歩と同じくらいの速さで進んでいる。

そしてみんながそれぞれ
周囲を警戒していた時のことだった。



不意にサンドモービルが止まり、
クロードさんが僕たちの方を振り向く。
 
 
 
 
 

クロード

前方に何かがいます!

 
 
 
 
 

トーヤ

えっ!?

 
 
よく目を凝らして見てみると、
数百メートルくらい前方に
何かがいるのが分かった。

ただ、この位置だと豆粒大にしか見えなくて、
それが何なのかは確認できない。


――クロードさん、よく気がついたなぁ。
 
 

セーラ

確かにトゲトゲのモンスターが
いるみたいですねぇ。
よく見えますぅ。

トーヤ

双眼鏡かぁ!

 
 
セーラさんは双眼鏡を覗きこんでいた。

相変わらずセーラさんは便利な道具を
たくさん用意してるなぁ。


僕も少しは持ち物に工夫した方がいいのかな?
でも調薬の道具や作った薬で
荷物袋は一杯なんだよね……。



容量をそんなに使わずに
たくさんの道具が持ち運べる
魔法の袋みたいなものがほしいなぁ。
 
 

セーラ

ライカさん、
あれがポイズンニードルかどうか
確認をお願いしたいのですぅ。

ライカ

承知しました。

 
 
ライカさんはセーラさんから
双眼鏡を受け取った。

そしてそれを前方に向けて、中を覗きこむ。
 
 

ライカ

うわっ! すごい!
こんなにハッキリ見えるなんて!

セーラ

これは魔眼鏡(まがんきょう)
という魔法道具なのですぅ。
使用者の魔法力が高いほど
遠くまで鮮明に見えるのですぅ。

クロード

さすがセーラ様は
便利なものをお持ちですね。
それはオリジナルの品ですね?

セーラ

はいぃ、私が作りましたぁ!
ご要望があれば
卸して差し上げるのですぅ。

クロード

では、マイルにその話を
伝えておきます。

カレン

セーラさんったら、
ちゃっかり商売しちゃって。

トーヤ

セーラさんらしくて
いいじゃない。

カレン

そうだけどね。

カレン

――で、ライカさん。
いかがですか?

ライカ

はい、間違いなくあれは
ポイズンニードルです。
でも――

 
 
魔眼鏡を目から離したライカさんは
表情を強張らせながら息を呑んだ。
そのあと、視線を落として唇を震わせている。


なんかすごく動揺しているみたい。
 
 

トーヤ

どうしたんですか?

ライカ

大きすぎるんです。
私、こんなに大きいの、
見たことありません。
少し怖いです……。

トーヤ

そんなに大きいんですか?

ライカ

私が見たことがある個体と比べて
2倍以上はあると思います。

トーヤ

2倍以上……。

 
 
僕は思わず唾をゴクリと飲み込んだ。

つまりそれだけ体力や攻撃力なんかが
普通のヤツより強いということなんだよね……。
 
 

トーヤ

別の個体にしますか?

ライカ

いえ、あの大きさなら
なんとかなるでしょう。
新たに見つける方が大変です。

ライカ

ただ、より警戒して
戦いに臨みましょう。

トーヤ

分かりました。

 
 
これはもう、巡り合わせだから仕方ない。
戦うと決めたなら、全力を尽くすだけだ。



――それはさておき、ちょっと気になる。

ポードゲートからサンドパークへ
移動している時に遭遇したバジリスク。
ヤツも普通より巨大だったんだよね……。
 
 

トーヤ

クロードさん。

クロード

はい、なんでしょうか?

トーヤ

サンドパークへ向かう途中に
遭遇したバジリスクも
普通より大きな
個体だったんですよね?

クロード

えぇ、その通りです。

トーヤ

何か関連があるのかもね……。

クロード

サンドパークへ戻ったら
マイルに報告しておきます。

セーラ

ではではぁ、
戦闘準備をしましょ~!
まずは毒を防ぐアミュレットを
皆さんにお渡ししますぅ。

 
 
セーラさんは荷物袋の中から魔法玉の付いた
ペンダントを全員に配った。
早速、僕たちはそれを身につける。

――これである程度は毒の影響を防げるはず。



でも攻撃を受けないようにするのが
一番大切なんだけどね……。
 
 

セーラ

サンドモービルは
ここに置いていきますかぁ?
大きいから目立ちますよねぇ?

カレン

稼働音は静かなんですけどね。

ライカ

私にお任せください。
皆さんも少しの間、
このまま席に座っていてください。

 
 
ライカさんはサンドモービルから降りると、
少し離れた場所に立って深呼吸をした。

そのあと目を瞑り、
掲げた両手に意識を集中している。


何かの魔法を使おうとしているみたいだね。
 
 
 
 
 

ライカ

熱よ、光よ、空気の揺らめきよ。
我が声に耳を傾け、
力を与えたまえ……。

 
 
 
 
 
 
 
 
僕たちの周りは強い光に包まれた。

あまりの眩しさに思わず目を瞑り、
腕で顔を覆ってしまう。



 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
でもその光はすぐに収まり、
さっきと変わらない景色が広がっている。

今の光はなんだったんだろう?
 
 

ライカ

――ふぅっ。
これで大丈夫です。

トーヤ

何かの魔法を
使ったみたいですけど?

ライカ

うふふっ、トーヤさん。
サンドモービルからゆっくり
離れていってみてください。

トーヤ

は、はい……。

 
 
言われた通り、
僕はサンドモービルから降りて
ゆっくりと後ずさりをしていった。



一歩、また一歩――。


今のところ、何も変化は起きない。



でもそれから何歩か離れたところで
不意に目の前にあったサンドモービルが
跡形もなく消え去ってしまった。
 
 

トーヤ

えぇっ!?

 
 
これはいったい、何なのっ!?
 
みんなはどこへ行っちゃったんだっ?
  
 

 
 
 
次回へ続く!
 

pagetop