僕たちの乗ったサンドモービルは
砂漠の上を滑るように走っていった。

これで砂っぽい風がなかったら最高なんだけど。



それにしても、どこを見ても砂ばかり。
本当にポイズンニードルが見つかるのかなぁ。

――って、ポイズンニードルのこと、
よく知らないんだった。
 
 

トーヤ

ライカさん、ポイズンニードルって
どんなモンスターなんですか?

カレン

私も情報が知りたいです。

ライカ

簡単に外見を説明しますと、
動く巨大なトゲトゲですね。
高さは2メートルほどです。

セーラ

弱点や注意点はありますかぁ?

ライカ

生態はよく分かっていません。
生息数が少ないということ、
危険なモンスターということで
研究が進んでいないんです。

ライカ

でも植物型モンスターですから、
炎には弱いのではないでしょうか?

トーヤ

植物型ですか……。

 
 
生態が植物に近いなら炎は有効かもしれない。
あとは塩分とか。

それとこういう水に乏しい地域に
生息している場合だと、
水が弱点ということもあり得る。



でも植物と植物型モンスターは
似て非なるものだからなぁ。
弱点が同じとは限らない気もする……。



そしてなにより気になる点は――
 
 

トーヤ

ポイズンニードルには
毒があるんですよね?
目的はそれの
採取でもありますけど。

ライカ

はい、それが一番の注意点です。
ポイズンニードルは猛毒のトゲを
放出して攻撃してきます。
もし刺さったら即死です。

セーラ

ひぇえええぇ~っ。

カレン

毒の無効化アイテムは
通用しないんですか?

ライカ

効果はあります。
でも即死を免れる程度ですね。
体は毒によって
少しずつ冒されていきます。

セーラ

あっ、毒の無効化アイテムなら
全員分持ってきてますぅ。
あとでお配りしますねぇ。

 
 
さすがセーラさんだ。準備がいい。

道具関係は彼女に任せておけば安心。
相変わらず心強いなぁ。
 
 

トーヤ

でもなるべく当たらないように
注意しないといけませんね。

ライカ

えぇ、それはもちろんです。

トーヤ

毒の採取ですけど、
放出されたトゲから
絞り出せばいいんですか?

ライカ

それでは量が足りないと思います。
トゲがポイズンニードルの体に
付いたままの状態から
採取しなければならないでしょう。

トーヤ

いぃっ!?

 
 
やっぱりそれなりに危険を伴うよね。
簡単にいくわけがないとは思っていたけど……。


大丈夫かなぁ? 不安だなぁ……。
 
 

トーヤ

危険すぎませんか?
それにどうやって近寄れば……。

ライカ

ご安心ください。
私が魔法で動きを封じますので。

ライカ

でもそのためには
事前に攻撃を加えて
弱らせる必要があります。

セーラ

それは私たちに
任せてほしいのですぅ。

トーヤ

接近戦は避けた方がいいですね。
僕のフォーチュンや
攻撃魔法を主体にしましょう。

セーラ

それがいいのですぅ。

トーヤ

頼りにしてるからね、カレン。

カレン

うんっ♪ 任せておいてっ!

クロード

そういうことでしたら、
私も微力ながら
協力させていただきます。

トーヤ

クロードさん?

 
 
運転席で運転をしているクロードさんが
不意に声をかけてきた。

でも運転中だから視線は前に向けたままだ。
 
 

クロード

バジリスクとの戦いでは
謎の光線によって
不意を衝かれてしまいました。
でも基本的に戦闘は得意です。

トーヤ

では、カレンとクロードさんに
前衛をお願いします。

カレン

分かったわっ!

クロード

承知いたしました。

トーヤ

後衛は僕とセーラさん。
ライカさんはポイズンニードルの
動きを止めてください。

セーラ

ガッテン承知なのですぅ!

ライカ

はいっ!

 
 
こうして戦闘時の大まかな役割が決まった。

相手が分かっていると
準備とか心構えができていいなぁ。



実際の戦闘が大変だってことには
変わりないんだろうけど……。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
それから数時間、
サンドモービルは走り続けた。

そしてライカさんが目的地としていた
地域へ入り、適当な場所で止まる。



周りを見回してみても
やっぱり砂漠が続いているだけだ。
動くものの姿は見当たらない。
 
 

トーヤ

見当たりませんね……。

ライカ

今から探索魔法を使ってみます。

トーヤ

探索魔法?

セーラ

探し物を見つける魔法なのですぅ。

 
 
ライカさんは砂漠に降り立つと、
大きく深呼吸をした。

そのあと、
意識を手に集中させて魔法力を高めていく。
するとその手は淡い光を放ち始める。
 
 

 
 

カレン

カードは使わないのね……。

トーヤ

カード?

カレン

一般的な探索魔法は
カードを使って位置を導き出すの。
場合によっては関連する未来が
見えることもあるらしいけど。

 
 
するとその会話を聞いていたのか、
ライカさんが視線をこちらに向けて小さく笑う。
 
 

ライカ

私の探索魔法は
一般的な探索魔法よりも
上位のものなんです。

ライカ

祖母が占い師でして、
その血の影響か
運命に関する魔法は得意なのです。

トーヤ

へぇ~っ!

ライカ

では、始めます。

 
 

 
 
ライカさんは表情を引き締めると、
指で空中に魔方陣を描いた。

光が軌跡となって
魔方陣を浮かび上がらせている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 

ライカ

運命の光よ、
我が前に道を指し示せ。
偉大なる魔族の神に、
我の魔法力を捧げん……。

 
 

 
 
ライカさんの足下に魔方陣が浮かび上がり、
白い光が彼女を包み込んだ。

下から舞い上がる風が、髪を大きく揺らしている。


でも砂漠の砂はなぜか舞い上がっていない。
魔方陣の中と地面には魔法力の壁みたいな
隔たりがあるのかもしれない。



しばらくして光が収まった。
するとライカさんは大きく息をつく。
 
 

ライカ

……ここから南。
比較的近くにいます。
サンドモービルで移動すれば
すぐに見つけられるはずです。

ライカ

ただし、危険な暗示が出ています。
なぜ危険なのかは不明ですが、
決して油断はしないでください。

トーヤ

クロードさん、
南へお願いします。

クロード

承知です。

 
 
ライカさんがサンドモービルに乗ると、
クロードさんはすぐに発進させた。


近くにいるということなら、
戦闘が始まるのももうすぐということだ。

僕はフォーチュンを握り、気を引き締めた。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第62幕 戦闘前の役割分担

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