僕たちの乗ったサンドモービルは
砂漠の上を滑るように走っていった。
これで砂っぽい風がなかったら最高なんだけど。
それにしても、どこを見ても砂ばかり。
本当にポイズンニードルが見つかるのかなぁ。
――って、ポイズンニードルのこと、
よく知らないんだった。
僕たちの乗ったサンドモービルは
砂漠の上を滑るように走っていった。
これで砂っぽい風がなかったら最高なんだけど。
それにしても、どこを見ても砂ばかり。
本当にポイズンニードルが見つかるのかなぁ。
――って、ポイズンニードルのこと、
よく知らないんだった。
ライカさん、ポイズンニードルって
どんなモンスターなんですか?
私も情報が知りたいです。
簡単に外見を説明しますと、
動く巨大なトゲトゲですね。
高さは2メートルほどです。
弱点や注意点はありますかぁ?
生態はよく分かっていません。
生息数が少ないということ、
危険なモンスターということで
研究が進んでいないんです。
でも植物型モンスターですから、
炎には弱いのではないでしょうか?
植物型ですか……。
生態が植物に近いなら炎は有効かもしれない。
あとは塩分とか。
それとこういう水に乏しい地域に
生息している場合だと、
水が弱点ということもあり得る。
でも植物と植物型モンスターは
似て非なるものだからなぁ。
弱点が同じとは限らない気もする……。
そしてなにより気になる点は――
ポイズンニードルには
毒があるんですよね?
目的はそれの
採取でもありますけど。
はい、それが一番の注意点です。
ポイズンニードルは猛毒のトゲを
放出して攻撃してきます。
もし刺さったら即死です。
ひぇえええぇ~っ。
毒の無効化アイテムは
通用しないんですか?
効果はあります。
でも即死を免れる程度ですね。
体は毒によって
少しずつ冒されていきます。
あっ、毒の無効化アイテムなら
全員分持ってきてますぅ。
あとでお配りしますねぇ。
さすがセーラさんだ。準備がいい。
道具関係は彼女に任せておけば安心。
相変わらず心強いなぁ。
でもなるべく当たらないように
注意しないといけませんね。
えぇ、それはもちろんです。
毒の採取ですけど、
放出されたトゲから
絞り出せばいいんですか?
それでは量が足りないと思います。
トゲがポイズンニードルの体に
付いたままの状態から
採取しなければならないでしょう。
いぃっ!?
やっぱりそれなりに危険を伴うよね。
簡単にいくわけがないとは思っていたけど……。
大丈夫かなぁ? 不安だなぁ……。
危険すぎませんか?
それにどうやって近寄れば……。
ご安心ください。
私が魔法で動きを封じますので。
でもそのためには
事前に攻撃を加えて
弱らせる必要があります。
それは私たちに
任せてほしいのですぅ。
接近戦は避けた方がいいですね。
僕のフォーチュンや
攻撃魔法を主体にしましょう。
それがいいのですぅ。
頼りにしてるからね、カレン。
うんっ♪ 任せておいてっ!
そういうことでしたら、
私も微力ながら
協力させていただきます。
クロードさん?
運転席で運転をしているクロードさんが
不意に声をかけてきた。
でも運転中だから視線は前に向けたままだ。
バジリスクとの戦いでは
謎の光線によって
不意を衝かれてしまいました。
でも基本的に戦闘は得意です。
では、カレンとクロードさんに
前衛をお願いします。
分かったわっ!
承知いたしました。
後衛は僕とセーラさん。
ライカさんはポイズンニードルの
動きを止めてください。
ガッテン承知なのですぅ!
はいっ!
こうして戦闘時の大まかな役割が決まった。
相手が分かっていると
準備とか心構えができていいなぁ。
実際の戦闘が大変だってことには
変わりないんだろうけど……。
それから数時間、
サンドモービルは走り続けた。
そしてライカさんが目的地としていた
地域へ入り、適当な場所で止まる。
周りを見回してみても
やっぱり砂漠が続いているだけだ。
動くものの姿は見当たらない。
見当たりませんね……。
今から探索魔法を使ってみます。
探索魔法?
探し物を見つける魔法なのですぅ。
ライカさんは砂漠に降り立つと、
大きく深呼吸をした。
そのあと、
意識を手に集中させて魔法力を高めていく。
するとその手は淡い光を放ち始める。
カードは使わないのね……。
カード?
一般的な探索魔法は
カードを使って位置を導き出すの。
場合によっては関連する未来が
見えることもあるらしいけど。
するとその会話を聞いていたのか、
ライカさんが視線をこちらに向けて小さく笑う。
私の探索魔法は
一般的な探索魔法よりも
上位のものなんです。
祖母が占い師でして、
その血の影響か
運命に関する魔法は得意なのです。
へぇ~っ!
では、始めます。
ライカさんは表情を引き締めると、
指で空中に魔方陣を描いた。
光が軌跡となって
魔方陣を浮かび上がらせている。
運命の光よ、
我が前に道を指し示せ。
偉大なる魔族の神に、
我の魔法力を捧げん……。
ライカさんの足下に魔方陣が浮かび上がり、
白い光が彼女を包み込んだ。
下から舞い上がる風が、髪を大きく揺らしている。
でも砂漠の砂はなぜか舞い上がっていない。
魔方陣の中と地面には魔法力の壁みたいな
隔たりがあるのかもしれない。
しばらくして光が収まった。
するとライカさんは大きく息をつく。
……ここから南。
比較的近くにいます。
サンドモービルで移動すれば
すぐに見つけられるはずです。
ただし、危険な暗示が出ています。
なぜ危険なのかは不明ですが、
決して油断はしないでください。
クロードさん、
南へお願いします。
承知です。
ライカさんがサンドモービルに乗ると、
クロードさんはすぐに発進させた。
近くにいるということなら、
戦闘が始まるのももうすぐということだ。
僕はフォーチュンを握り、気を引き締めた。
次回へ続く!