かくもしかじか、彼らは西の獣人の国の屋根に寝そべり空を見上げていた。
変なふよふよ丸は、ミツナリに連れ去られており、ここにはいない。
こんな月が美しい日にこそ、吼えたくなる…などとユキムラは思う。
いや、あんた猫だから。
あ、うん?そうだった。
ところで、ノーラ。そういうお前はにゃーにゃー言わなくなったな。キャラ設定放棄か。
にゃー?
白々しいわっ!!!
そういうアンタも、ちょっとゲシュジンコウ度がまだまだ低いわよ?なんてことを言うノーラをよそに月を眺めた。
にゃーーー!
ちょ、うるさい!何時だと思ってんの!
ちょっと何…なんだか騒がしく……。
突如風が吹き、辺りの木の葉を揺らした。その騒ぎに何事かと辺りを見回せば、隣の屋根の上に音の正体は咆哮を上げて虎視眈々とこちらを見ている。
あ、お隣さんですか?今日からこちらの屋根でお世話になる……
バカ!魔物よ!!!!
ええええええええ。
魔物の咆哮により、屋根の下が騒がしい。どうやら目を覚ました獣人が何人か、こちらを覗きに来たらしい。
でかした、下に逃げよう!
私、引っ掻いてみる。
え?
だって…ひっかくの威力、知りたくない?
あ、いや止めた方がいいって。だってアレどう考えてもスライムとかじゃないもん、絶対やばいって。
ヘタレねー。じゃあ、先に逃げてなさいよ。
ノーラ!!!
止めようとするも、彼女は既にお隣さんの屋根に移動しており、まったくこちらの話を聞く気がないようだった。
さ、記念すべき魔物討伐デビュー!
HP39
ノーラ /レベル3 /猫人
攻撃 笑顔 ひっかく←
防御 上目遣い 逃げる
うわ、変なコマンド!!!
くらいなさい!!!
ノーラのひっかく!
謎の獣に11のダメージ!!
あんま効いてねーよ!!
う……思った以上に火力がないわ。
もういい、戻って来い!
謎の獣の攻撃!
ノーラ!!早く!!
そ、そんなこと言われても…!
ノーラ!!!!
間に合わないわよ…!!
く……っ。
ノーラへの攻撃を庇った!
謎の狼に381のダメージ!!
え…ちょっと…あなた誰?
…………。
………鬼火。
それは幼馴染の危機に瞬く間のこと。
いつ現れたのか大きな獣がノーラを庇い、不思議な煙を纏った男が青い焔を繰り出していた。
その大火に謎の獣は身を焦がし、瞬く間に塵と化している。
なにが起きたのか、危機に停止していた脳は状況を理解させてはくれなかった。
良かった……間に合いましたね。
ミツナリ……?
状況を理解できずに呆けていると、いつの間にかミツナリが背後に立っていた。
まったく!きみ達が挑むような魔物じゃないでしょう!!!
え…あ…スミマセン。
心配したんですからね…。何故、君のような人が…こういうときに限って逃げないんですか!
もう……気が気じゃなく…。
えっと…俺は逃げようと…。
むしろ戦う勇気なんて持っていないのだと伝えようにも、彼は聞く耳を持っていない。
目の前で泣き出すミツナリにあたふたしていると、背後で音がした。
ミツナリ、その辺に。
長老様……。
振り返れば、ミツナリが長老様と呼ぶ人物がこちらの屋根まで来ていた。
長老様…?
初めまして。ミツナリから話を聞いている。
もっとヨボヨボのくそジジィかと思ってた。
それは君のところの王ではないか?
げ、心読めんの?
一国を担う身であれば、大抵の者が読めるだろうさ。それよりも…怪我はないかい?
大丈夫…だけど、さっきあっちの獣が……ノーラを庇った獣が攻撃を…
それならば心配はない。彼にはミツナリが向かってくれるだろう。
ミツナリ、頼めるね?
は、はい…!!
長老様の命に、ミツナリは慌てて隣の屋根へ飛び移る。その動きは、よく屋根を移動出来たなと思うほどに慌ただしい。
さて、君は…彼女を庇った獣をよく見ておくといい。私はこれで失礼するよ。
え?
意味を問う間もなく、そこにいたはずの人物は煙となってしまったかのように、その場には煙しか残っていない。
まるで、うつつの存在のかのようにすらユキムラには見えた。
あー…あっちの獣を見とけ…だっけ?
自分は持たぬ不思議な力を持つ者は、この世に沢山存在している。
だからこそ気にしても仕方ないのだろうと、ユキムラは諦めて獣の方をみた。
もう大丈夫だと思います。元の姿へ戻って大丈夫ですよ。
そうか。
どうやら丁度、治癒の方が終わったみたいでミツナリは獣の頭を撫でくり撫でくりしている。
まったく一時はどうなるかと…。
ふ、ふよふよ丸!?
ふよぽち丸!?
目の前にいたはずの立派な獣は大きな光を放ち、姿を消したかと思えば、そこには代わりにちんちくりんな浮遊する生物がいた。
まったく…ちんちくりんとは失礼な。
え…ちょっとアンタどうしたのよ。
それはですね…。
実は彼、僕達と同じ獣人なんですが……どうやら人化の仕方を間違えていたみたいで…。
進化ではなく、退化してたみたいですね。
…………………。
どんな間抜けだよ。
ガーン
しかしそれにしても…まさかこんな真夜中に叫び、魔物を引き寄せてしまうバカが居るとは思いませんでした。
君はダメ人間どころかカスなのでは?
げ。
んー?ミツナリさーん?
もう中に入れてやるから、さっさと寝やがれ!!!!!!!!
え……えぇぇぇぇ!!
珍しく大人しいと思ってたのに…。
長い付き合いだけど、こいつ本当にどこまでが天然で腹グロなのかわかんねぇ……。
あ?
あ、今入ります。
にゃ…はははは…
…………。
お初にお目に掛かります。吟鴉です!
この度は小生のイラストをご使用頂きありがとうございます( ^ω^ )
ちなみにいつも拝見しておりました(/ω・\)チラッ
挿絵の黒背景があると微妙かな?
と、思い透過verの挿絵を御用意致しました!
どうぞお使い下さいませ♪( ´▽`)