僕は誰も信用しない
兄上も、家族も
そもそも血すら繋がっていない奴らなんだから
文字どおり、僕は小さいころ突然養子としてこの屋敷に引き取られた
だから本当の家の場所なんて覚えてないし、無論両親の顔さえ思い浮かべようとしてもうっすらぼやけて思い出せない
当時はやはり、僕も幼かったから両親が恋しくてこの家を何度も脱走しようとした
そのたびにつかまってはお説教
どれくらい繰り返しただろうか
おそらく数十回を超えた頃から、諦めが現れはじめて、僕は両親に会いたいという感情を封じるため、一切の感情が消え、心が空っぽになってしまった
その頃の記憶はあいまいだが、兄上の優しい笑顔だけは今でも思い出せる
そんな抜け殻だった僕に、幾度も話しかけ、笑わせようとしてくれた
兄上に僕が心を開くのは、それほど時間がかからなかったんだ