容疑者B

きゃー!!!!
漣様ーーー!!!!!

・・・・。

容疑者B

馨様、本日もご機嫌麗しゅうございます。

どうも。

パーティーはこれだから嫌いなんだ
とにかくうるさい


僕が養子にもらわれた天王寺家はいわゆる大金持ちで、義父は大企業を経営している社長だった

だからパーティーに出席すると汚い私欲に満ちた大人どもは我こそはと金目当てに自分たちの娘を僕たちに近づけさせる

残念ながら僕はこの家の血筋じゃないし、義父はそもそも僕に好意を持っていない
だからもし義父がなくなったとしても遺産なんて一銭も僕に入ってくるはずないのにバカみたいだ

正直、不躾な態度をして義父に恥をかかせてやりたい気持ちもあるが、あまりに子供っぽいので僕のプライドがそれを許さなかった


容疑者B

漣様とパーティーで会えるなんて、わたくしとても幸せですわ。

・・・ありがとうございます。
今回は体調が良かったので出席することにしたんです。
僕は病弱だからいつも兄上や皆様にご迷惑ばかりをおかけして申し訳なく思っております。

僕はわざとしおらしい表情を作る

容疑者B

まぁまぁ!
お気になさらずに!
体調が優れず出席できなくとも、出席しようとする漣様の心持ちだけでも十分ですわ!

本当は毎回体調なんて崩していないし、毎日ゲームセンターに通っている僕が病弱なわけない

いつもはパーティーは面倒だし、出席させようとして派遣されてきた使用人たちも無視してゲームに明け暮れていた

義父も、普段僕がパーティーに出席する気がないので、連れ戻すことを半ばあきらめて出席しない理由を【病弱だから】で通しているらしい

ありがとうございます。
それと、本日は僕も皆様にお会いできてうれしく思っております。

ひきつらないように精一杯の笑顔を向けて、僕は女性たちの包囲を潜り抜ける

それにしても、今日のパーティーは何が重要なんだろう。

兄上がわざわざ僕を迎えに来たくらいだから、きっとすごく重要に違いない

僕が考え事をしながら外を見ていると、高らかな楽器音がホールに響き渡った

料理長

西園寺家第一子女、西園寺 菖蒲<アヤメ>様のご入場です!!!

マイクを通してホール全体に響いた声とともに、きらびやかな衣装に身を包んだ女性が階段から降りてくる

菖蒲

皆様、本日は西園寺家主催のパーティーにいらしてくださり、まことにありがとうございます。

しとやかにお辞儀をして、ふわりと花が綻ぶような笑みを浮かべた菖蒲と呼ばれる女性は挨拶をした



そしてそれからは宴が幕を開け、ホールで踊るもの、食べ物に手を付けるもの、世間話に花をさかせるものとそれぞれが自由に時間を過ごし始めた

・・・特に重要なことなんてなかったな。

僕はどうでもいいパーティーに出席してしまったことにため息をつき、後悔する


僕がぶつぶつと文句を言っていると、横に人影が現れたので自然とそちらに目をやった

菖蒲

漣様、ダンスを一曲お願いできて?

美しい唇でそうささやいたのは、西園寺家の菖蒲様だった

・・・僕は病弱なので激しい運動はちょっと・・・。

突然横に現れたことに驚きながらも、面倒ごとに巻き込まれまいと僕は丁重に菖蒲様のダンスの申し入れを断った


しかし



菖蒲

あら、ご冗談はほどほどにですわ。
漣様はいつから病弱でいらして?

は・・・・?

艶めいた笑みを浮かべた唇が次々に言葉を紡ぐ

菖蒲

私が知らないと思いまして?
漣様・・・・、いいえ、


justiceさん?

・・・!?

justice・・・それは僕のゲーム内での名前だ




・・・さて、何のことでしょう?

僕は一瞬ギクッとしたが、わざと何も悟られまいと笑みを浮かべた

菖蒲

そう・・・・、はぐらかす気でいらっしゃるのですね。
いいですわ、今回は見逃してあげましょう。

そういうと菖蒲様は僕に対抗するかのように満面の笑みを浮かべた

菖蒲

では、またいずれあちらの世界でお会いしましょう。
くれぐれも・・・、【占い師】には気を付けて。






【占い師】





気にかかる言葉を残して菖蒲様はパーティーの人ごみの中に消えていく

それに・・・【あちらの世界】・・・?



菖蒲様の消えていった方向を見つめていると、突然背中に刺さるような視線を感じて振り向く


当然後ろはバルコニーだし、誰もいない


僕は不思議に感じながらも、感じた視線とともに痛み出した目を押さえて、まぎれるように人ごみの中に入っていった・・・




つづく

悪夢のゲーム開始につき1

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