辺りはすっかり薄暗くなり、酒を飲み始めるのに丁度いい時間帯となっていた。
私はコンビニでワンカップとつまみを一通り購入し、自分の住処が存在する公園を目指した。
コンビニで支払ったのは言うまでもなく他人様のお金である。
公園のベンチに座り、隣にコンビニ袋を置くと、肩の力が一気に抜けて深いため息が漏れた。
コンビニのレジでお金を支払う時にも、やはり罪悪感が心を突き刺した。
財布を交番へ届けるのを躊躇して以来、私の中で開き直ろうとする気持ちの影に隠れて、いかんともしがたい不安がずっとつきまとっていた。
横に置かれたコンビニ袋から、裂きイカとチーズとビーフジャーキーを取り出し、ベンチに広げると、再び口からため息が漏れる。
私はいったい何をやっているのだろう。
すぐに交番へ届けるはずだった人様のお金に手を出して、これから一人で酒を飲もうなんて。
いや、今更だ。
久しぶりに酒が飲めるのだから、大いに楽しもう。
くよくよするくらいなら、最初からお金を使わなければ良かったのだ。
それに私は財布の中身を全て自分のものにしてやろうということは一切考えていない。
とにかく今は財布のことは考えずに、目の前の酒を楽しむべきだ。
財布のことはその後に考えればいいではないか。
もはや正当化しようとしている理論そのものが滅茶苦茶なのは自分でもわかっていたが、気付かないふりをした。
無理やりに納得させた自分の心に勢いをつけようと、コンビニの袋からワンカップを取り出して、躊躇する暇を与えずに蓋をひん剥いた。
蓋が外れたワンカップを上から覗き込むと、自然と笑みがこぼれた。
それは決して心から楽しくなるような笑いではなく、ずる休みの有給を前触れもなく当日にブチ込む時を想像するような、ちょっとだけ悪いことをしてやった時の不敵な笑いだ。
私はサラリーマンの頃、そのような理由で休む度胸はなかった。