亀の恩返し

16.魔女の薬を使わない。
























……聞こえる。

太郎さんの声が聞こえる。

















「……カメ」

……


「カメ」

ああ……誰かが私を呼んでいる……


「カメ、しっかりしろ、カメ」

太郎さん……

ああ、そうだ
棒で打たれて気を失っていた私を太郎さんが呼んでくれていた……


「カメ!」












































カメ! 大丈夫か!?

……太郎……さん?


目を開けると
太郎さんが心配そうな顔で
覗き込んでいた。


私の身体には
太郎さんの着物なのだろう、
細く裂かれた布が巻かれていた。

太郎さん……最後に……会えてよかった……


布は赤く染まっている。
見る間に深い色へと変わっていく。

最後に、とか意味わかんねぇこと言うんじゃねぇ!!

こういうのは駄目だと思ったら駄目になるんだよ!
大丈夫だ、って、まだ生きたいって、そう、

ほら、あれがあったじゃねぇか。魚が持ってきた薬!
あれで、怪我が治るようにって、


そんなものもあった。
でも、

……太郎さん

地上に……浜に帰りましょう……

ここにいては……ずっと楽しく暮らしていられる……かも、しれないけど……

行こう! 帰ろう!!
その怪我が治ったら!!

いえ……今すぐ、に……





私は身体を起こした。
甲羅が鉛になってしまったかのように重い。


わかっている。


もう手遅れだと言うことを。

もしあの薬に治癒を願ったところで
全快するにはどれだけかかるだろう。




私に残された手は
乙姫様に気づかれないうちに
太郎さんを連れて行くことだけ。




この薬は
そのために……




A.カメの願いを叶える。

B.太郎の願いを叶える。

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