亀の恩返し

4.島があらわれた。
























嵐のような雨はいつの間にか止み
私たちは
とある島に打ち上げられていた。

……どこだい? ここは

さあ……

つぅ……っ!

カメ!?


流されるうちに何処かの岩にでも
当たったのだろうか。

私の前ヒレには
大きな切り傷があった。



これでは……泳ぐことができない。

すみません、すみません。
竜宮城にお連れするつもりがこんなところに

気にしなさんな。あの雨はカメのせいじゃないさ


太郎さんは自身の着物を裂くと
それを包帯のように
前ヒレに巻いてくれた。

怪我が治ったら竜宮城へ行こう。それまではここでのんびりするさ

こういう時、漁師だと便利だな。ちぃっと魚取って来るわ

太郎さん……









太郎さんは立ち上がると
森のほうに入っていった。

釣竿を作るための枝でも
取りに行ったのだろう。





























見上げれば
青い空と白い雲。

暑くもなく寒くもない気候。
棒で叩いて来る子供もいない。

……


このまま怪我が治らなかったら
この島で太郎さんと一緒に
暮らせるのだろうか。



……なんて

夢のようなことをぼんやりと思う。








































































……

夜になっても太郎さんは帰って来ない。




どうしたのだろう。
森でなにか凶悪な動物にでも
遭ったのだろうか。

動けない身では、ただ、ただ
不安が広がっていくばかり。


太郎さん……


こんなことなら
魚など取りに行かせなければよかった。



岩の隙間を探せば
カニくらいいる。

打ち寄せられた波が
ちぎれたワカメも運んでくる。






それで……良かったのに。




太郎さん……

呼んだかい?

太郎さん!

すまんなぁ。ちょっと寄り道してたら遅くなっちまって


そう言う太郎さんの後ろには
荷車を押す動物の姿。







犬と



猿と



キジ。





そして荷車には金銀財宝。







あの……それは

ああ。なんか鬼退治につき合ってくれってそいつらが言うからさぁ

釣りに行ったのでは
なかったのだろうか。

そう思っていると犬が口を挟んだ。

なにを仰るんです

鬼を滅ぼし、立身出世!
天晴れ、天下の太郎さんです!!

なんかよくわかんねぇけど、これでおっ母ぁも楽させてやれるし。
あ、カメにも分けてやるからな

……


それは太郎違いではないだろうか
と思いつつも

楽しそうな太郎さんを見ていると
訂正する気にもなれなかった。





もしかすると
竜宮城に行くよりも
身体を動かして
誰かのためになっているほうが

太郎さんらしいのかもしれない。






そう思っていると……

太郎どん。おらと相撲を取る約束、忘れてねぇだろうな


……熊が現れた。

おいおい。
相撲はもう勘弁してくれって言っただろう?


突然現れた熊にも太郎さんは動じない。
そればかりか古くからの友人のように
親しげに話をしている。

……



やはり太郎さん違いだとは思ったが


太郎さんが楽しそうなら
これはこれでいいのかもしれない。


















こうして鬼を退治した太郎さんは
お宝を持って帰ったのだった。












- おわり -

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