むかぁし、むかし、







これは

「太郎」と「カメ」のお話――。















亀の恩返し

1.むかしむかし。
























太郎さんは浜の漁師だった。
年老いた母とふたり暮らしなのだと
そう、聞いた。



太郎さんは
私が子供たちに
棒で叩かれているところを
助けてくれた。






怪我はないかい? カメよ

はい。ありがとうございました

そりゃあよかった

加減を知らぬ子供のこと、
私も恨むつもりはなかった。

ただ、
助けてくれた太郎さんへの感謝は
言葉にはできないほどだった。



気をつけて帰るんだよ。

そして、もう来ちゃいけない。また叩かれてしまうからね

はい





















そうして私は海に帰った。







帰ってからも想うのは
優しかった太郎さんのこと。









でも、別れ際の

もう来ちゃいけない


と言った太郎さんの言葉を思えば
再び浜に足を向けることは
できなかった。

……






もしも私が鶴なら
美しい娘になって
太郎さんのために機を織っただろう。


桃から生まれた童子なら
太郎さんのために
鬼を退治しに行っただろう。


笠をもらった地蔵なら
荷車に餅や小判を山のように積んで
太郎さんの元へ届けただろう。









でも私はカメ。

機を織ることも
鬼を退治することも
荷車を運ぶこともできない。








……


太郎さんだって
カメに慕われるなんて御免だろう。






でも
遠くから見るくらいなら……













A.浜へ行く。

B.乙姫に相談する。

1.むかしむかし。

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