シンディさんはどうしてこんなに
驚いているんだろう?
それに元・下民だと施療院の中では
平気ではいられないってどういうことなの?
さっぱり分からない。
シンディさんはどうしてこんなに
驚いているんだろう?
それに元・下民だと施療院の中では
平気ではいられないってどういうことなの?
さっぱり分からない。
トーヤ、本当に元・下民なの?
え……あ……。
私は身分で差別するとか、
そんな意味で
聞いているんじゃないの!
あなたの体を心配して聞いてるの!
えっ?
僕を真っ直ぐに見つめてくるシンディさん。
その目には迫力と意志の力を感じる。
本気で心配してくれているんだなって分かる。
そうだよね……。
シンディさんは自分の病気のことは
誰にも言わず、
ほかの患者さんのために
治療や研究を続けてきたんだから。
シンディさんはそういう強くて優しい人だ。
どうなのっ?
はい、僕は元・下民です。
でも体は本当に
なんともありません。
気分が悪いということもないし。
嘘はついてないわね?
我慢はしていないわね?
もちろんです。
どういうことなのかしら……。
シンディさん、
何が気になっているんです?
施療院の中には
エンネツカの侵入を防ぐ殺虫剤が
噴霧してあるって話をしたわよね?
はい。
あれって強い殺虫効果がある分、
元・下民レベルの魔族には
毒になってしまうのよ。
原料の魔力液が影響してね。
そうなんですかっ!?
えぇ、建物に入った瞬間に
目まいくらいはするはずよ。
もし10分も中にいれば
気分が悪くなって倒れてしまうわ。
だから建物の入口に貼り紙を貼って
元・下民の人は入らないように
注意を促していたんだけどね。
でもっ、
僕はなんともありませんよ?
施療院に初めて入った時だって、
体調におかしなことは起きなかった。
もちろん、今だってなんともない。
もし本当に毒性があって
元・下民がそれに耐えられないなら
なにか理由があるはずだ。
殺虫剤の成分に変化があった、
エンネツカの生態に変化があった、
あるいは僕自身に何かがあるのか……。
僕が考え込んでいると、
シンディさんは静かに口を開く。
……トーヤ、能力検査は
受けたことある?
それって身分制度がある時に
実施されていたヤツですよね?
身分を上げたい人が受ける
検査でしたっけ?
僕は生まれてからずっと
隠れ里で暮らしていたので……。
王都へ出たのも身分制度が
なくなってからですし。
つまり受けたことがないのね?
はい……。
トーヤは下民以上の
能力を持っているはずよ。
今回の件が解決したら、
検査しましょう。
もしかしたら
トーヤ自身が気付いていない
大きな力を
秘めているかもしれない。
そ、そうでしょうか?
実感がないんですが……。
もっと自分に自信を持ちなさい。
例え特殊な能力がなかったとしても
あなたは薬草師としての
高い技術を持っているんだから。
は、はいっ!
シンディさんの言葉には勇気づけられる。
でもそれとは関係なく、
僕は病気や怪我で苦しむ人のために
薬草師としての力を発揮するだけです。
僕とシンディさんは
カレンたちのいる病室へ移動した。
病室に入るなり、
カレンは心配そうな顔をして声をかけてくる。
どうだった?
バッチリ! 合格だったよ。
さすがトーヤ!
トーヤくんは
本番に強いですからねぇ。
初めての戦闘の時もそうでしたし。
飲み込みも早い方だしね。
そうかなぁ?
僕自身は夢中でやっているだけで、
本番に強いとか飲み込みが早いなんて
思ったことはない。
不器用だから
一生懸命にやっているだけなんだ。
それじゃ、
準備ができたら出発しましょう。
ソラノさん、マールちゃん。
ミーシャさんのこと、
お願いします。
うんっ! 任せておいてっ!
気をつけていくんだよ。
無理はしなくていいからね。
ライカ、トーヤたちを
案内してあげてもらえる?
そして調薬の時はサポートを。
承知しました。お任せください。
では、メンバーは
ライカさんを含めて
4人ということですね?
でもでもぉ、砂漠を歩いていくのは
大変なのですぅ。
マイルさんに相談してみましょ~。
実はマイルさんの会社の前で
いいものを見かけたんですよぉ!
うふふふふっ……。
…………。
セーラさん、また何か企んでいるみたい。
あまりマイルさんに迷惑をかけるのも
悪いような気がするんだけどなぁ……。
次回へ続く!