シンディさんがギーマ老師の
直弟子だったなんて思いもよらなかった。
つまりラジーさんは孫弟子になるわけか……。
ラジーさんの腕を考えると、
シンディさんやギーマ老師の腕って
想像もつかないほど高いんだろうなぁ。
シンディさんがギーマ老師の
直弟子だったなんて思いもよらなかった。
つまりラジーさんは孫弟子になるわけか……。
ラジーさんの腕を考えると、
シンディさんやギーマ老師の腕って
想像もつかないほど高いんだろうなぁ。
先生は滅多に弟子をとらない。
あなたたちはその先生の
お眼鏡にかなった。
それって凄いことなのよ?
そうなんですか……。
それって自分の自慢みたいに
聞こえますねぇ。
セーラさんだって
よく自分の自慢を
しているじゃないですか……。
それもそうですねぇ。
もっとも、今のあなたたちは
単なる弟子候補に過ぎないわ。
本当に弟子になれるかどうかは
今後の努力次第ってところね。
あのっ!
魔力熱の薬の開発は
どれくらい進んでいるんですか?
完成しているわ。理論上ではね。
えっ!?
僕は耳を疑った。
カレンやセーラさんも目を丸くしている。
でもそれは当然だ。
だって魔力熱の薬が完成しているなら、
それを使って治療すればいいんだから。
――いや、シンディさんだって、
それができるならやっているはず。
つまり何か事情があるんだろうな……。
ただし、それが出来ない
理由がふたつ。
ひとつは調薬にかなり高いレベルの
技術が要求されるということ。
もうひとつは材料が
手に入らないということ。
…………。
それに例え調薬に成功したとしても
本当に効果が認められるのか、
臨床試験が必要という
問題もあるわ。
シンディさんであっても
調薬が難しいということですか?
私には調薬を成功させる
自信がある。問題は材料よ。
特殊なものが必要なんですね?
えぇ、ポイズンニードルの毒素。
ポイズンニードル?
この砂漠地帯に生息する
サボテン型モンスターです。
個体数が少ないので
出会うことさえ難しいです。
しかも好戦的で、
トゲに猛毒を持っているの。
刺されたらほぼ即死。
でもその毒こそが必要になる。
ある程度の戦闘力がないと
近付くことさえ危険ですね。
シンディさんは静かに頷いた。
でもそれなら傭兵さんや戦いのプロを雇えば
その問題は解決するんじゃないだろうか?
そんな疑問を持っていると、
シンディさんは僕の考えを察したかのように
説明を付け加える。
その毒、採取して5分以内でないと
必要な成分が分解してしまうの。
つまりその場に調薬できる者が
居合わせなければならない。
それなら誰かを雇って
シンディさんも一緒に行けば
いいんじゃないですか?
そうですよ。
もし私たちで良かったら
同行しますよ?
そこそこ戦えますし。
マイルさんたちにも
協力をお願いしてみましょ~!
……無理よ。
私、そこへ行けないもの。
シンディさんは悔しそうに奥歯を噛みしめ、
瞳を潤ませながら呟いた。
体も小刻みに震えている。
そっか、患者さんを
放っておくわけには
いかないですよね。
そういうことじゃないの。
私も……
魔力熱にかかっているのよ……。
なっ!?
調薬技術は確立しているのに
それが発揮できない。
悔しいわ……。
そういうことだったのか……。
まさかシンディさん自身が
魔力熱にかかっているとは思わなかった。
それなら薬を作りたくても作れない理由に
納得がいく。
――でも策はあるっ!
僕に薬の製法を教えてください!
それで僕が現地で調薬をしますっ!
簡単に言わないで!
トーヤにそれだけの調薬技術が
あるっていうのっ?
この町の医師や薬草師は
誰もそのレベルに
達していなかった。
それくらい難しいのよ?
シンディさん、
トーヤの腕を見てあげてください。
私、彼ほどレベルの高い薬草師、
見たことないです。
カレン……。
それから判断しても
遅くはないんじゃないですか?
最初からダメだなんて
諦めないでください。
…………。
シンディさんは真剣な眼差しで
カレンと僕の顔を交互に見やった。
僕も決意を表すようにジッと見つめ返す。
それから少しの沈黙が流れたあと、
シンディさんはフッと頬を緩めた。
……トーヤ、あとで調薬室へ来て。
私の指示する薬を作ってもらうわ。
それが成功したら
魔力熱の薬の製法を教える。
は、はいっ!
いいんですかぁ?
そんな重要なことを
教えちゃってぇ?
作り方を知っていても
その技術がなければ意味がない。
それが簡単でないことは
誰よりも分かっているわ。
なるほどぉっ!
こうして僕はシンディさんの指示する薬を
調薬することになった。
シンディさんやミーシャさんをはじめ、
魔力熱で苦しむみんなのためにも
絶対に成功させなくちゃ!
次回へ続く!