ゆっくりと口を開いたエリアはこちらを見る
あの日、というのは恐らく僕の魔力測定の時だろう
あの日までお父様はいつもわたしたちに優しくしてくれてたわ
ゆっくりと口を開いたエリアはこちらを見る
あの日、というのは恐らく僕の魔力測定の時だろう
きっと私の息子だ、属性は何であれ優秀なはずだ
お父様はそういって意気込んでいました
・・・
確かに、父はプライド・・・自尊心の高い人だったことは今でも覚えている
でも、あなたが例の、その・・・属性無しと分かったときには人が変わったようでした
そんなはずは無い私の息子なんだ!
何かの間違いに決まっているとずっと悩んでいたわ
でも、とエリアは続ける
結果はどうあがいても変わらなかった
あなたが属性が無く将来性がまるで無いと悟った父はあなたをあの牢へと閉じ込めた
疑っては・・・くれたんだ
何であれ僕のことを考えてくれていた時期は合ったんだな・・・
ええ、最初は、ね
でもそこからの父は早かったわ
早い?
”コクリ”うなずいたエリアの上げたその表情はとても悲痛な顔だった
父は跡継ぎであったあなたをいなかったことにした
それこそ、あなたの存在を知っていた人には病気や事故や嘘を付いて
徹底的にあなたの存在を消した
私や母様、それに従者たちにはあなたのことを良く扱うなと、要するに親しくするなと言い回った
そんな・・・
始めは私たちも抵抗をしていたわ
でも、私や母様はともかく従者は何らかの形で罰せられた
何人か突然見なくなった人がいたんじゃない?
そういえば・・・僕が牢に閉じ込められる前に親しくしてくれた人たちは僕が牢に入れられてから急に見なくなった
あの人たちは・・・
あの人たちはどうしたの?
良くて解雇、領地への進入禁止
悪くて・・・死罪
その一言に僕は顔を青くする
父様はとにかくあなたの情報が外に出るのを嫌った
そして、跡継ぎには私がなることになった
なるほど、と思う一方で申し訳ない気持ちになる
私は、今までの自由の一切を切り捨てられたわ
とにかく跡継ぎとして相応しいように
交友関係も全て切られた
あなたと接触するのは魔法の練習のときだけと言われた
・・・
私だって驚いたわ
魔法の試し撃ちをしたい?ならいい的があるじゃないかと言われてあなたのところに案内された時は
そこまでして父は僕を・・・
私はそれに逆らうと暴力を振られた
父はむしろあいつに撃てと怒鳴ってきたわ
母はなんと隠れてこっそり会っていたようだけど、私にはそんなこと出来なかった
だって・・・とエリアは声を一瞬潜め
暴力なんて振られたくなかった!
大好きだった父様に本気で殴られた!
だから、私はあなたを罵り魔法の実験台にした!
どこで監視されているのかも分からないからそれこそ何処でもあなたの事を悪く言ったわ・・・
本当は・・・本当はそんなことはしたくなかったのに!
エリア・・・
でも!とエリアは僕を見る
そんな生活が続いて、あなたが父に完全に見限られ、転移魔法で遠くに飛ばされた母様から聞いて私はあなたが羨ましかった!
あなたは、危険かもしれないけど自由を手に入れた!
結果としてあなたはここで私と出会った
僕は・・・
そして、私はその間に飛び級をさせられるほどの勉強や魔法の練習を強いられた
お前は私のように上に行くんだと
暴力を振られるのも怖くて私は従うしかなかった
そんなことを・・・
私はまだ魔法学校へ通う年ではなかった
でも母様は私を逃がすためにここへ通わせたわ
飛び級でね
あなたと会ったときは本当に驚いたわ
うん、僕も驚いたよ
私はその時に一気にあなたが憎くなったけどね
な、なんで・・・
だって、あなたは笑っていた
数人の人と共に笑っていた
私はあなたが居なくなってから笑うことすら許されなかったのに!
あなたはとても幸せそうにしていた!
だから、授業のときにあんな態度を取ったのよ
正直、私が勝ったときの要求は適当だったわ
過去はそういうものが多かったらしいからとっさにそれが出たの
・・・そう
エリアはどうあれ僕のことを考えていてくれた
それだけでもとてもうれしかった
今まで完全に嫌われていたと思っていたからね
負けたのはかなり予想外だったけどね
あなた、何の魔法を使ったの?
あの魔法は私の自慢の一つだったのに
僕は身体強化しかしていないよ
というか、ほかに使える魔法は1つしかないよ
やっぱり・・・魔法を使ったのね
でも、無属性でどうやって?
捨てられた僕をこれまで育ててくれた人が居てね
その人と一緒に作ったんだよ
それこそいろんな魔法を研究してね
そう・・・とエリアは微笑む
あの後、あなたの情報は一切無かったから正直死んだと思っていたわ
でも、こうやって生きて出会えた
私から話せるのはこれ位かしら?
母さんは?
無事よ
あなたの無事をずっと願っているわ
手紙を出すにしても父様に先に読まれるのが分かっているからまだ知らせることは出来ていないわ
よかった・・・!
本当に・・・本当に良かった!
さ、これで今度こそ話せることはもう無いわ
煮るなり焼くなり好きにして頂戴
そしてエリアはベッドに再び体を寝かせた
何をされるのも覚悟の上と言った感じだ
・・・?
別に何もしないよ?
なにもしないって・・・あなた、私が憎くないの?
あんなに酷いことをやった私を憎まないの?
憎む?なんでさ?
なんでって・・・私は、あなたに・・・
僕は君に何があったのか教えてくれといったんだよ
そこに憎悪は無いんだ、それに君は何があったのか打ち明けてくれた
僕はエリアを憎んでいないし嫌っていないよ
だって、私にはもうあなたを兄と呼ぶ資格が・・・
泣きそうな顔、いや、泣き顔でエリアがこっちを見る
それにしっかりと目を合わせて
また、やり直せないかな?
あの頃みたいに
仲良く遊んでいた・・・兄妹としてのあの日々に
・・・少し、考えさせて
うん
その言葉を最後に僕はベッドを囲っていたカーテンを開けて出る
今はそっとしておこう
クロウさ・・・
シー
指の前で人差し指を立てる
あまり人が居たことを知られたくは無いだろうし
”コクリ”
意図を汲んでくれたリーダさんが一足先に部屋を出る
もういいの?
ええ、ありがとうございました
いいのよ
いいのを見れたしね
うふふと笑う
失礼します
僕は医務室のドアを閉めた
エリアのすすり泣くは、今は聞かなかったことにしておこう
もう、僕とエリアは戻れたと思うから
もしかしてだけど、父様はいい人なんじゃ・・・・・・?
無属性がいることがバレたら今のような生活が出来なくなると思って家族の為に・・・・・とか。ないかな?w