もう今さら遅いかもしれないけど僕たちの肩書というかプロフィールというか、自己紹介ならぬ自己確認を行うとしよう。

僕は某大学に通う一年生、都大樹(みやこ たいき)であって、9月生まれの18歳だ。大学名を伏せる理由は特にないけれど、そこはまあ個人情報だから、とでも言っておこう。

都 大樹

おいおいそれ以上はプライバシーの侵害だぞ。しょうがないからK大とでも記しておいてあげるよ

僕の人柄についてだが、結構人からは笑顔が素敵だねとか人当たりが良いよねとか優しいよねとか顔が幼いとか女みたいとか話しかけやすいとか愛想がいいとか色々な意見を言われている。

都 大樹

てかこら、4人目と5人目誰だ! それ直球で悪口じゃないか!!

後半はもうそれ僕を馬鹿にしているのだろうとしか思えないものもあるが、それも含めてこういった言葉を並べる相手を僕は全く信用していない。

だってそれは、誰にでも言えるような薄っぺらい表面上のものでしかないと、少なくとも僕はそう考えているからだ。

はっきり言わせてもらえば、僕はそんな僕を演じているのだ。誰からも悪く思われたくないという願望を振りかざし、仮面をかぶり、誰からも自分を知られないという代償を得ている。

そんな風に、小学校中学校高等学校と通してうわべだけの関係を築いてきた僕に、大学での入学式の日、青葉はつまらなさそうな顔で言ってのけたのだ。

青葉 桐斗

偽物だな……お前

都 大樹

……

この言葉に怒りを覚えるのも忘れ、僕は心の奥に侵入を許してしまったかのように動揺した。

それと同時に、こいつの隣にいたいと思ったのも、悔しいけれど事実である。

こんな感じで青葉と出会い、行動を共にし始めて3ヶ月も経った7月初旬。親友といえる友達は(というか友達と呼べる人間は)未だ青葉だけのはずだ。

もちろん。僕の記憶が正しければの話しではあるが。

そんな僕の友達こと青葉桐斗(あおば きりと)は、自他ともに認める超が付くほどの真面目くんである。

……おしまい。

青葉 桐斗

随分と扱いが雑じゃないか。こういうのはきちんとするものだぞ

都 大樹

そういうところが真面目だって言ってるんだよな……

それでは軽く付け加えておこう。

彼は2月生まれの18歳で、僕と同じ文学部に通っている。文学部といっても僕はそんなに本を読む方ではなくもないけれど(少なからず平均よりは読む方だと思っている)、青葉は文学部というものを体現したようなやつだ。

実際に読書している姿を見ることは少ないが、聞けば1ヶ月でおよそ100冊は読んでいるらしい。

都 大樹

一体いつ読んでるんだよ……

青葉 桐斗

それはお前に聞きたいよ

まあそんな感じで実は人付き合いもそつなくこなす青葉は、噂では友達が100人いるそうだ。

都 大樹

そんな……馬鹿な!?

青葉 桐斗

安心しろ。お前が一番の親友だ

こういう台詞をさらっと言えるのも、こいつの真面目さがあってこそなのだろうか。

都 大樹

ってか、友達100人の方は否定しないのね

まあ。
総じて。

僕たちは、不器用くんと真面目くんの2人組なのである。

自己確認、終わり。

だから。そんな僕に。

青葉が知らない所で友達なんかできるわけないのだ。

青葉 桐斗

なあおい、隠してないで教えろよ。一体どこで友達なんかできたんだ?

だから僕は、その質問に答えることができない。

青葉 桐斗

お前の友達だろ? だったら俺にも紹介してもいいんじゃないか?

だけど僕は、その提案に応えることができない

青葉 桐斗

なあおい、そもそも……

そんな僕を見て、青葉は実に青葉らしい言葉をさらりと放った。

青葉 桐斗

お前は本当にあいつを知ってるのか?

都 大樹

……青葉。僕は今からとんでもない事を言ってしまうけれど、それでも真面目に聞いてくれるか?

青葉 桐斗

当たり前だ

僕の質問に、彼は即答した。こんな質問、青葉には愚問であり時間の無駄だっただろう。

だけど僕は、どうしても聞いておきたかったんだ。そうして、青葉に見捨てられてしまえば多分僕は平常心ではいられなくなってしまうから。

だってそれは、声にしようと思っている僕自身が信じられないことなのだから。

都 大樹

今の僕は正真正銘本物の、お前の親友の都大樹なのだろうか?

青葉 桐斗

安心しろ

やはり青葉は即答だった。
どこまでも真面目で、どこまでも嘘偽りのない彼の言葉が、僕を落ち着かせる。

青葉は笑ってこう続けた。

青葉 桐斗

あの時のお前は偽物だったが、少なくとも俺の目の前にいるこの都大樹は

そして、僕は聞いた。

紛れもなく偽物ですよ

背筋が凍りつくような、冷たい女性の声を。

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